私傷病による病気休暇として,郵便の業務を担当する無期契約労働者に対して有給休暇を与えるものとする一方で,郵便の業務を担当する時給制契約社員である有期契約労働者に対して無給の休暇のみを与えるものとするという労働条件の相違は,両者の間に職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があることを考慮しても,次の(1),(2)など判示の事情の下においては,労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たる。 (1) 上記無期契約労働者に対して上記病気休暇が与えられているのは,当該無期契約労働者の生活保障を図り,私傷病の療養に専念させることを通じて,その継続的な雇用を確保するという目的によるものである。 (2) 上記有期契約労働者は,契約期間が6か月以内とされており,有期労働契約の更新を繰り返して勤務する者が存するなど,相応に継続的な勤務が見込まれている。
私傷病による病気休暇として無期契約労働者に対して有給休暇を与えるものとする一方で有期契約労働者に対して無給の休暇のみを与えるものとするという労働条件の相違が労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当たるとされた事例
労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条
判旨
郵便事業に従事する有期契約社員に対し、正社員に支給される年末年始勤務手当、有給の病気休暇、および夏期冬期休暇を与えないことは、それぞれの趣旨に照らし、旧労働契約法20条にいう不合理な相違に該当する。
問題の所在(論点)
職務内容や配置変更の範囲に相違がある場合に、年末年始勤務手当、病気休暇、夏期冬期休暇を正社員にのみ認めることが、旧労働契約法20条の「不合理な労働条件の相違」に該当するか。
規範
労働条件の相違が旧労働契約法20条の「不合理」に当たるかは、賃金総額の比較のみならず、当該労働条件が定められた趣旨を個別に考慮すべきである。特に、諸手当や休暇等の趣旨が有期契約社員にも妥当し、かつ当該労働者の継続的勤務が見込まれる場合には、職務内容や変更範囲の相違を考慮しても、これを与えないことは不合理と評価される。
重要事実
日本郵便の時給制契約社員(原告ら)が、正社員にのみ認められている年末年始勤務手当、有給の病気休暇、夏期冬期休暇等の不付与について、不法行為に基づく損害賠償を請求した。原告らは契約更新を繰り返し、正社員と同様の郵便業務に従事していたが、正社員と異なり広範な配転や昇任の予定はないという実態があった。
あてはめ
(1)年末年始勤務手当:最繁忙期の勤務の特殊性に対する対価であり、勤務時期と時間で一律に決まるため、趣旨は有期社員にも妥当する。(2)病気休暇:継続雇用確保のための生活保障が趣旨であり、契約更新を重ねて継続勤務が見込まれる有期社員にもその趣旨は妥当する。(3)夏期冬期休暇:心身の回復を目的とするものであり、有期社員にも妥当する。いずれも、職務内容や変更範囲の相違を考慮しても、これらを全く認めないことは不合理である。
結論
年末年始勤務手当、病気休暇(有給)、夏期冬期休暇の不付与は、いずれも旧労働契約法20条に違反し不合理である。また、休暇不付与の損害は、本来不必要であった勤務をせざるを得なかったことによる財産的損害として認められる。
実務上の射程
同一労働同一賃金の議論において、手当や休暇ごとに「趣旨」を特定し、その趣旨が有期社員にも及ぶかを検討する手法を確立した。特に休暇に関しては、現実の取得の有無にかかわらず、付与されなかったこと自体を財産的損害と捉える実務上の指針を示している。
事件番号: 令和1(受)1055 / 裁判年月日: 令和2年10月13日 / 結論: その他
私立大学の教室事務を担当する無期契約労働者に対して賞与を支給する一方で,同事務を担当する時給制のアルバイト職員である有期契約労働者に対してこれを支給しないという労働条件の相違は,次の(1)~(5)など判示の事情の下においては,労働契約法(平成30年法律第71号による改正前のもの)20条にいう不合理と認められるものに当た…
事件番号: 平成30(受)1519 / 裁判年月日: 令和2年10月15日 / 結論: 棄却
郵便の業務を担当する無期契約労働者に対して有給休暇である夏期休暇及び冬期休暇を与える一方で,郵便の業務を担当する時給制契約社員である有期契約労働者に対してこれを与えないという労働条件の相違は,両者の間に職務の内容や当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情につき相応の相違があることを考慮しても,次の(1)~(3)な…