1 株式会社の新設分割において,会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成17年法律第87号による改正前のもの)3条によれば分割をする会社との労働契約が分割によって設立される会社に承継されるものとされている労働者と,当該分割をする会社との間で,商法等の一部を改正する法律(平成12年法律第90号。平成17年法律第87号による改正前のもの)附則5条1項に基づく労働契約の承継に関する協議が全く行われなかった場合,又は,上記協議が行われたものの,その際の当該会社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため法が上記協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には,当該労働者は当該承継の効力を争うことができる。 2 株式会社の新設分割において,会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成17年法律第87号による改正前のもの)3条によれば分割をする会社との労働契約が分割によって設立される会社に承継されるものとされている労働者と,当該分割をする会社との間で行われた,商法等の一部を改正する法律(平成12年法律第90号。平成17年法律第87号による改正前のもの)附則5条1項に基づく労働契約の承継に関する協議は,次の(1)〜(3)など判示の事情の下では,上記協議の際の当該会社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため法が上記協議を求めた趣旨に反することが明らかであるとはいえず,当該労働者につき当該承継の効力が生じないということはできない。 (1)当該分割をする会社は,労働者の代表者への説明に用いた資料等を使って労働者への説明や承継に納得しない労働者に対しての最低3回の協議を行った。 (2)当該分割をする会社は,当該労働者を代理する労働組合との間で,7回にわたる協議を行うとともに書面のやり取りも行うなどし,分割後に当該労働者が勤務する会社の概要や当該労働者が承継される営業に主として従事する者に該当することを説明したものであり,その説明が不十分であったがために当該労働者が適切に意向等を述べることができなかったような事情もうかがわれない。 (3)当該分割をする会社が,分割によって設立される会社の経営見通しなどにつき当該労働者が求めた形での回答に応じなかったのは,上記会社の将来の経営判断に係る事情等であるからであり,在籍出向等の要求に応じなかったのは,合弁事業実施の一環として行われた当該分割の分割計画ではこの目的を前提に従業員の労働契約を上記会社に承継させることとされていたからであって,いずれも相応の理由があった。
1 株式会社の新設分割において,会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成17年法律第87号による改正前のもの)3条によれば分割をする会社との労働契約が分割によって設立される会社に承継されるものとされている労働者が,当該承継の効力を争うことができる場合 2 株式会社の新設分割において,会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平成17年法律第87号による改正前のもの)3条によれば分割をする会社との労働契約が分割によって設立される会社に承継されるものとされている労働者につき,当該承継の効力が生じないとはいえないとされた事例
(1,2につき)会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平17年法律第87号による改正前のもの)2条1項,会社分割に伴う労働契約の承継等に関する法律(平17年法律第87号による改正前のもの)3条,商法等の一部を改正する法律(平成12年法律第90号。平成17年法律第87号による改正前のもの)附則5条1項,分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針(平成12年労働省告示第127号。平成18年厚生労働省告示第343号による改正前のもの)
判旨
会社分割に伴う労働契約の承継において、商法等改正法附則5条1項の協議(5条協議)が全く行われなかったか、その内容が著しく不十分で法の趣旨に反することが明らかな場合には、労働者は労働契約承継の効力を争うことができる。
問題の所在(論点)
会社分割における労働者との個別の協議(5条協議)に不備がある場合、労働契約承継の効力を争うことができるか。また、その判断基準はいかなるものか。
規範
会社分割に伴う労働契約の承継について、分割会社は労働者と協議を行う義務を負う(商法等改正法附則5条1項)。この趣旨は、地位に重大な変更をもたらし得る労働者の保護にある。したがって、①特定の労働者に対し協議が全く行われなかった場合、または②説明・協議内容が著しく不十分で法の趣旨に反することが明らかな場合には、当該労働者は承継法3条による労働契約承継の効力を争うことができる。なお、承継法7条の「理解と協力を得る努力義務」違反は、直ちに承継の効力を左右しないが、5条協議の実質を欠く等の特段の事情がある場合には協議義務違反を判断する一事情となる。
重要事実
Y社はハードディスク事業(HDD事業)を新設分割によりC社に承継させ、当該部門に従事する従業員の労働契約も承継させる計画を立てた。Y社は従業員代表者への説明やイントラネットでの情報共有(7条措置)を実施した。HDD事業に主として従事していたXらに対し、Y社は労働組合支部を介して7回の協議(5条協議)を行い、C社の概要や承継の判断基準を説明したが、Xらが求めた詳細な経営見通し数値の開示や、在籍出向への変更要求には応じなかった。Xらは、協議が不誠実で不十分であるとして、労働契約承継の無効を主張した。
あてはめ
Y社は指針に沿って分割の目的、承継の判断基準、C社の処遇等を説明しており、7条措置は十分に行われていた。5条協議においても、C社の概要やXらが承継対象者に該当する旨を伝えており、Xらが意向を述べる機会は確保されていた。経営見通しの詳細数値を回答しなかった点は機密保持等の観点から、在籍出向の要求に応じなかった点は分割の目的(合弁事業化)から見て、それぞれ相応の理由がある。したがって、協議の内容が著しく不十分で法の趣旨に反することが明らかであるとはいえない。
結論
本件における5条協議に義務違反は認められず、Xらの労働契約がC社に承継される効力は妨げられない。よって、地位確認等の請求は棄却される。
実務上の射程
会社分割における労働契約承継の有効性を争う際のリーディングケースである。答案上は、まず7条措置の履行状況を確認し、その上で5条協議が「全く行われていない」か「著しく不十分(指針逸脱等)」かを検討する枠組みで使用する。誠実交渉義務に近いが、あくまで「法の趣旨に反することが明らか」という高いハードルが設定されている点に注意を要する。
事件番号: 平成20(受)1240 / 裁判年月日: 平成21年12月18日 / 結論: その他
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事件番号: 平成11(受)722 / 裁判年月日: 平成13年4月26日 / 結論: 破棄自判
個人タクシー事業者を組合員とするD組合において,組合員に対する除名決議のされた総代会までに被除名者たる組合員に対する除名事由が具体的に明らかにされることなく,理事長において当該組合員の関与しない事実を含む一連の事実経過をもって当該組合員を含む複数の組合員を包括的に除名すべきものと主張していたにすぎないなど判示の事実関係…