個人タクシー事業者を組合員とするD組合において,組合員に対する除名決議のされた総代会までに被除名者たる組合員に対する除名事由が具体的に明らかにされることなく,理事長において当該組合員の関与しない事実を含む一連の事実経過をもって当該組合員を含む複数の組合員を包括的に除名すべきものと主張していたにすぎないなど判示の事実関係の下においては,当該組合員に対する除名決議は,除名事由の特定明示を欠き,無効である。
D組合における組合員に対する除名決議が除名事由の特定明示を欠くとして無効とされた事例
中小企業等協同組合法19条
判旨
中小企業等協同組合における組合員の除名処分は、遅くとも除名決議に係る総会等までに、対象者及び議決権者に対し、除名事由とされる事実を特定して明らかにしなければならない。対象者が関与しない事実を含む一連の経過を包括的に提示するのみでは、除名事由が特定されたとはいえず、当該除名決議は無効である。
問題の所在(論点)
中小企業等協同組合法に基づく組合員の除名において、除名事由となる事実の特定はどの程度必要か。また、複数の対象者の一連の行動を一括して除名事由とすることは許されるか。
規範
1. 協同組合は経済目的の団体であり、内部規律に関する裁量の余地は少ない。除名処分は組合の目的に反する等の明確な事実がある場合にのみ許容される。 2. 除名手続において弁明の機会が保障されている趣旨(法19条2項等)から、遅くとも決議までに、対象者及び議決権者に対して「除名事由とされる事実を特定して明らかにする」ことが必要である。 3. この特定を欠く場合、対象者が弁明すべき事実や議決権者が判断すべき事実が不明確となり、手続上重要な瑕疵として決議を無効とする。
重要事実
個人タクシー事業者で構成されるD組合において、理事長側と対立する組合員5名(上告人を含む)の除名が決議された。上告人は、懲戒解雇反対、法的な職務執行停止仮処分の申立て、組合正常化を求めるビラ配布等に関与したが、他の被除名者の粗暴な言動等には関与しておらず、首謀者でもなかった。組合側は除名に際し、具体的な除名事由(どの行為がどの定款事由に該当するか)を特定せず、被除名者5名の一連の行動経過を包括的に説明したのみで、上告人が関与しない事実も混然一体となったまま決議が行われた。
あてはめ
1. 本件では、除名通知や総代会においても具体的な事実の指摘がなく、上告人は弁明すべき事実を特定できなかった。これは弁明の機会を保障した法の趣旨を損なうものである。 2. 原審は「一連の事実経過」として包括的に認識されていたから足りるとしたが、上告人が関与しない事実(粗暴な言動等)を含む経過をもって除名事由とすることは、上告人個別の除名事由が特定されたとは評価できない。 3. 仮処分申立て等の上告人の行為自体も、法律知識の不足から敵対行為と誤認された側面があり、正当な除名事由たる客観的事実に基づいたものとはいえない。
結論
除名事由となる事実を特定して明らかにせずにされた本件除名決議は、手続上重要な瑕疵があり無効である。よって、上告人が組合員たる地位を有しないことの確認請求は棄却される。
実務上の射程
社団法人や協同組合における除名処分の有効性を争う際の「手続的適正」の判断基準となる。特に複数の者が関与する騒動を理由とする場合でも、個々の対象者ごとに具体的な事由を特定して通知・提示しなければならないという厳格な特定義務を課した点に意義がある。
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