寺院の住職の選任権又は右住職となる資格を有することを主張するにすぎない者は、右住職が宗教法人の代表役員に就任するものとされている場合であっても、右代表役員の地位の不存在の確認を求める法律上の利益を有しない。
宗教法人の代表役員の地位の不存在確認の訴えについて確認の利益が認められないとされた事例
民訴法225条,宗教法人法18条
判旨
宗教法人の代表役員の地位不在の確認を求める訴えにおいて、その確認が原告の主張する住職選任権等の宗教上の地位に係る紛争を解決する関係にない場合は、確認の利益が認められない。
問題の所在(論点)
宗教法人の代表役員の地位不在確認の訴えにおいて、原告が主張する「住職選任権」等の宗教上の権利の侵害を理由として、確認の利益が認められるか。
規範
確認の訴えにおける確認の利益は、判決によって法律関係の存否を確定することが、当該法律関係に関する紛争を解決し、当事者の法律上の地位の不安・危険を除去するために必要かつ適切である場合に認められる。宗教上の地位(住職等)と法律上の地位(宗教法人の代表役員等)は別個の地位であり、後者の存否の確定が当然に前者の権利関係の解決に結びつくわけではない。
重要事実
寺院の寺族である上告人は、住職の選任に関与する権限等を有すると主張し、宗教法人の代表役員は住職が就任する定めであることから、自身に代表役員の選任権等があると主張した。上告人は、被上告人Bが兼務住職の任期満了後も代表役員を僭称しているとして、Bが代表役員の地位にないことの確認を求めて提訴した。
事件番号: 平成7(オ)823 / 裁判年月日: 平成8年6月24日 / 結論: 破棄自判
宗教法人である寺院の前住職の長男であるにすぎない甲は、右法人においては、宗教上の地位である住職の地位にある者を代表役員及び責任役員に充てることになっているが、長男の権利放棄が長男以外の者を住職に任命するための要件にはなっておらず、その他に甲が右法人の代表役員等の地位について何らかの法律上の利害関係を有する地位にあること…
あてはめ
宗教上の地位である住職と法律上の地位である宗教法人の代表役員は異なる地位である。代表役員に住職が就任する定めがあるとしても、代表役員の地位の存否を確認することで住職としての地位の存否が確定されるものではない。したがって、被上告人Bが代表役員でないことを確認したとしても、上告人が主張する住職選任権や住職となる権利等の存否は確定されず、これらの権利に基づくと主張される代表役員選任権等の紛争が解決される関係にはない。ゆえに、本件訴えは、当事者の法律上の地位の不安を除去するために適切とはいえない。
結論
本件確認の訴えは、紛争解決のために必要かつ適切であるとはいえず、確認の利益を欠くため却下されるべきである。
実務上の射程
宗教団体内の紛争について、法律上の地位(代表役員等)の確認を求める形式をとっても、その実質が宗教上の地位(住職等)の争いであり、かつ法律上の地位の確定が直接的に宗教上の紛争解決に寄与しない場合には、確認の利益が否定されることを示した。民事訴訟法上の「確認の利益」における紛争解決の有効性を論じる際の素材となる。
事件番号: 昭和61(オ)531 / 裁判年月日: 平成5年9月7日 / 結論: 棄却
特定の者が宗教団体の宗教活動上の地位にあることに基づいて宗教法人である当該宗教団体の代表役員の地位にあることが争われている訴訟において、その者の宗教活動上の地位の存否を審理、判断するにつき、当該宗教団体の教義ないし信仰の内容に立ち入って審理、判断することが必要不可欠である場合には、右の者の代表役員の地位の存否の確認を求…
事件番号: 昭和61(オ)1300 / 裁判年月日: 昭和62年5月29日 / 結論: 破棄自判
宗教法人の代表役員に就任したと称している者に対し、自己が代表役員であることの確認又は右の者が代表役員でないことの確認を求める訴えは、右法人に対し自己が代表役員であることの確認を求める訴えとともに提起しても、確認の利益を欠く。