一、宗教法人の代表役員および責任役員の地位にあることの確認を求める訴は、当該宗教法人を相手方としないかぎり、確認の利益がない。 二、控訴判決に対して適法な上告があつた場合においては、当初不服申立の範囲を控訴判決の一部に限定したときでも、上告人は、上告理由書提出期間内においては、右不服申立の範囲を拡張することができる。
一、宗教法人の代表役員および責任役員の地位にあることの確認を求める訴と確認の利益 二、上告審における不服申立の範囲の拡張
民訴法225条,民訴法398条1項,民訴法402条,民訴規則50条,宗教法人法18条
判旨
法人の理事者の地位を争う確認の訴えにおいて、法人そのものを被告としない訴えは即時確定の利益を欠き、また、法律上の権利義務を包含しない単なる宗教上の地位の確認を求める訴えは裁判所の審判権が及ばない。
問題の所在(論点)
1.法人の理事者たる地位の確認請求において、当該法人以外を被告とする訴えに確認の利益が認められるか。2.法律上の権利義務を伴わない、単なる宗教上の地位(住職)の確認を求める訴えは「法律上の争訟」として許容されるか。
規範
1.法人の理事者たる地位の確認を求める訴えにおいて、法人を被告とせず個人や包括団体を被告とするものは、判決の効力が法人に及ばず紛争の根本的解決にならないため、即時確定の利益を欠き不適法である。2.特定の地位が儀式の執行や教義の宣布等、専ら宗教的な活動を主宰するものである場合、その地位自体の確認を求めることは法律上の権利関係の確認にあたらず、訴えの利益を欠く。
重要事実
被上告人(原告)は、上告人(被告)らに対し、宗教法人D寺を被告に含めることなく、自らがD寺の代表役員および責任役員であることの確認、ならびにその前提となるD寺住職の地位にあることの確認を求めた。D寺の規則では、住職が代表役員等を兼ねる旨が定められていた。原審は代表役員等の地位を肯定したが、住職の地位の確認については不適法として却下したため、双方が上告した。
事件番号: 平成7(オ)823 / 裁判年月日: 平成8年6月24日 / 結論: 破棄自判
宗教法人である寺院の前住職の長男であるにすぎない甲は、右法人においては、宗教上の地位である住職の地位にある者を代表役員及び責任役員に充てることになっているが、長男の権利放棄が長男以外の者を住職に任命するための要件にはなっておらず、その他に甲が右法人の代表役員等の地位について何らかの法律上の利害関係を有する地位にあること…
あてはめ
1.被上告人はD寺を被告としておらず、包括団体である臨済宗A1派等を被告としているが、D寺は別個の法人であり、判決の効力がD寺に及ばない以上、紛争の有効適切な解決手段とはいえず確認の利益を欠く。2.住職の地位は、本来、宗教的活動の主宰者たる地位であって、それ自体は管理機関としての法律上の地位ではない。法律上の権利義務(報酬請求権等)を包含する趣旨での確認請求でない限り、単なる宗教上の地位の確認請求は不適法である。
結論
代表役員等の地位確認請求については、法人を被告としていないため確認の利益を欠き却下。住職の地位確認請求については、単なる宗教上の地位の確認にすぎず不適法として却下(原判決の結論を維持)。
実務上の射程
確認の利益における「被告適格(有効適切な解決)」の論点と、宗教団体の内部紛争における「法律上の争訟」の限界を示す重要判例である。答案上は、組織法上の地位確認では法人そのものを被告とすべきこと、また宗教上の地位は付随する権利義務が特定されない限り訴えの対象外となることを論述する際に用いる。
事件番号: 平成2(オ)821 / 裁判年月日: 平成2年10月29日 / 結論: 棄却
寺院の住職の選任権又は右住職となる資格を有することを主張するにすぎない者は、右住職が宗教法人の代表役員に就任するものとされている場合であっても、右代表役員の地位の不存在の確認を求める法律上の利益を有しない。
事件番号: 昭和61(オ)531 / 裁判年月日: 平成5年9月7日 / 結論: 棄却
特定の者が宗教団体の宗教活動上の地位にあることに基づいて宗教法人である当該宗教団体の代表役員の地位にあることが争われている訴訟において、その者の宗教活動上の地位の存否を審理、判断するにつき、当該宗教団体の教義ないし信仰の内容に立ち入って審理、判断することが必要不可欠である場合には、右の者の代表役員の地位の存否の確認を求…
事件番号: 平成8(オ)754 / 裁判年月日: 平成11年9月28日 / 結論: 棄却
宗教法人の代表役員及び責任役員の地位にあることの確認を求める訴えにおいて、紛争の経緯及び当事者双方の主張に照らせば、請求の当否を決する前提問題である住職罷免処分の効力の有無については宗教団体内部における教義及び信仰の内容が本質的な争点となるものであり、これを判断するには、裁判所が宗教上の教義及び信仰の内容について一定の…
事件番号: 昭和52(オ)177 / 裁判年月日: 昭和55年4月10日 / 結論: 棄却
宗教法人における特定人の住職たる地位の存否が同人の当該宗教法人における代表役員、責任役員たる地位の存否の確認を求める請求の当否を判断する前提問題となつている場合には、裁判所は、当該宗教法人の教義等に照らして同人が住職として活動するのにふさわしい適格を備えているかどうかなどその宗教団体内部で自治的に決定せらるべき事項につ…