宗教法人である寺院の前住職の長男であるにすぎない甲は、右法人においては、宗教上の地位である住職の地位にある者を代表役員及び責任役員に充てることになっているが、長男の権利放棄が長男以外の者を住職に任命するための要件にはなっておらず、その他に甲が右法人の代表役員等の地位について何らかの法律上の利害関係を有する地位にあることを肯認するに足りる事情が認められないときは、前住職の五男が右法人の代表役員及び責任役員の地位にないことの確認を求める訴えについて原告適格を有しない。
宗教法人である寺院の前住職の長男であるにすぎない者は前住職の五男が右法人の代表役員及び責任役員の地位にないことの確認を求める訴えについて原告適格を有しないとされた事例
民訴法45条,民訴法225条,宗教法人法18条
判旨
宗教法人の代表役員等の地位の不存在確認の訴えにおいて、前住職の長男であるという事実のみでは、当該地位を争うにつき法律上の利害関係を有するとはいえず、原告適格を欠く。
問題の所在(論点)
前住職の長男という身分を有する者が、宗教法人の代表役員の地位の不存在を争うにつき、民事訴訟法上の原告適格(確認の利益)を有するか。
規範
確認の訴えにおける原告適格が認められるためには、当該権利又は法的地位の存否を確定することが、自己の現在の権利又は法的地位に対する不安・危険を除去するために必要かつ適切であるという「法律上の利害関係」を有していることを要する。
重要事実
宗教法人である被上告人では、住職の地位にある者が代表役員(責任役員を兼ねる)に充てられることとなっていた。前住職Eの長男である上告人は、自己の同意がないまま五男Dが住職に任命されたことは無効であると主張して、Dが代表役員等の地位にないことの確認を求めた。上告人は、長男の権利放棄が他の者を住職に任命するための要件であると主張したが、裁判所はこれを事実として認めなかった。
あてはめ
被上告人の代表役員等は住職が務める建付けであるが、長男の同意や権利放棄が他者の住職任命の要件である事実は認められない。したがって、上告人は「前住職の長男」という親族上の地位にあるにすぎず、Dの代表役員就任によって自己の法的権利が侵害されたり、直ちに法的地位が脅かされたりする関係にはない。その他、上告人が代表役員等の地位について独自の法律上の利害関係を有することを肯定すべき事情も存在しない。
結論
上告人は本件訴えについて原告適格を有しない。したがって、本件訴えは不適法として却下されるべきである。
実務上の射程
宗教法人の役員の地位を争う場合、単なる檀信徒や親族という立場だけでは足りず、自己が次期住職候補者である等の具体的な法的地位の対立関係が必要であることを示唆している。答案上は、確認の利益(原告適格)の判断において、対象となる地位が自己の法的利益にどう波及するかを厳格に検討する際に引用すべき判例である。
事件番号: 平成3(オ)1503 / 裁判年月日: 平成7年2月21日 / 結論: その他
一 宗教法人である神社の代表役員たる地位の存否の確認を求める訴えについて第三者の原告適格を肯定するには、組織上、その代表役員の任免に関与するなど代表役員の地位に影響を及ぼすべき立場にあるか、又は自らが代表役員によって任免される立場にあるなど代表役員の地位について法律上の利害関係を有していることを要する。 二 宗教法人で…
事件番号: 昭和61(オ)531 / 裁判年月日: 平成5年9月7日 / 結論: 棄却
特定の者が宗教団体の宗教活動上の地位にあることに基づいて宗教法人である当該宗教団体の代表役員の地位にあることが争われている訴訟において、その者の宗教活動上の地位の存否を審理、判断するにつき、当該宗教団体の教義ないし信仰の内容に立ち入って審理、判断することが必要不可欠である場合には、右の者の代表役員の地位の存否の確認を求…
事件番号: 昭和33(オ)600 / 裁判年月日: 昭和34年4月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】財団法人の理事長等の職務権限の不存在確認を求める訴えにおいて、仮に当該役員の選任規定が無効であっても、原告が当然に後任の役員に選任される地位にない限り、確認の利益を認めることはできない。 第1 事案の概要:財団法人D文庫の寄附行為(定款)には、理事長は「設立者累代の家督相続人」が就任する旨の規定が…