判旨
財団法人の理事長等の職務権限の不存在確認を求める訴えにおいて、仮に当該役員の選任規定が無効であっても、原告が当然に後任の役員に選任される地位にない限り、確認の利益を認めることはできない。
問題の所在(論点)
財団法人の役員選任規定の無効を主張して現役員の地位不存在確認を求める場合において、原告が当然に次期役員に就任する地位にないとき、確認の訴えの利益(法律上の利害関係)が認められるか。
規範
確認の利益が認められるためには、対象となる法律関係の存否を確認することが、原告の法的地位に対する不安や危険を除去するために必要かつ適切でなければならない。特に、第三者の地位の不存在を求める訴えにおいては、その不存在が確定することによって、原告自身の法的権利や地位が直接的に回復・確立される関係にあることが必要である。
重要事実
財団法人D文庫の寄附行為(定款)には、理事長は「設立者累代の家督相続人」が就任する旨の規定があった。上告人(原告)らは、前理事長Eの相続人であることを理由に、現理事長B1(家督相続人として就任)およびその任命に係る理事らの地位は、右規定が憲法や民法に違反し無効であるため存在しないと主張して、その確認を求めた。しかし、上告人らは「規定が変更された場合に、相続人の中から民主的に選定されるべき立場」にあると主張するにとどまっていた。
あてはめ
仮に寄附行為の役員選任規定が公序良俗等に反して無効であり、被上告人(被告)らが理事長等の権限を有しないとしても、上告人らは、定款変更が行われた場合に相続人の一人として選任される可能性があるという抽象的な期待を有するに過ぎない。上告人らが「当然に本財団の理事長又は理事に選任される」という関係にない以上、被上告人らの権限を否定したとしても上告人らの法的地位が直接的に定まるわけではない。したがって、上告人らが確認判決を求めることについて、法律上の直接の利害関係があるとは認められない。
結論
確認の利益を欠くため、請求は棄却(または却下)されるべきである。上告人らに法律上の直接の利害関係がない以上、実体法上の有効・無効を判断するまでもなく、訴えは不適法となる。
事件番号: 昭和41(オ)1171 / 裁判年月日: 昭和43年6月27日 / 結論: 棄却
財団法人の寄付行為に評議員の解任に関する規定はないが、その選任については専ら会長の職権とされていること、選任された評議員については任期の定めがされていないことなどの事情に徴すれば、会長に評議員の解任権があるものと解するのが相当である。
実務上の射程
役員の地位確認訴訟において、原告側の「選任されるべき法的資格」の有無を確認の利益の判断要素とした。単に「選任される可能性がある」という事実上の期待では足りず、原告自身が正当な役員であると主張する場合や、原告の権利行使が現在の役員によって直接妨げられているといった事情がない限り、確認の利益は否定される傾向にある。
事件番号: 昭和34(オ)1059 / 裁判年月日: 昭和35年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人の役員選任行為が会長の専権事項である場合、その行使が解散を強行して私腹を肥やすための手段であるといった事情が証拠により認められない限り、権限の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:財団法人である本件団体において、会長であるBらが新たな理事および評議員を選任した。これに対し、反対派(上告人ら)…
事件番号: 昭和34(オ)1058 / 裁判年月日: 昭和35年11月24日 / 結論: 棄却
一、財団法人A1会の理事評議員の解任が会長の専権事項であつても、原判示のような事実関係のもとにおいて、理事会議、評議会に諮り、十分論議をつくした上でなさるべきであるに拘わらず、特に解任しなければならないような事情もないのに、会長が軽々になした解任は権利濫用と断定できないわけではない。 二、財団法人の理事評議員の解任決議…
事件番号: 昭和42(オ)379 / 裁判年月日: 昭和42年9月19日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】招集権限のない者によって招集された評議員会及び理事会は法律上不存在であり、そこでなされた役員選任等の決議も効力を有しない。そのため、当該決議に基づき選任された代表者自称者による訴訟行為は、代表権を欠く不適法なものとして却下される。 第1 事案の概要:上告人法人の寄附行為では、理事長が理事会及び評議…
事件番号: 昭和61(オ)1300 / 裁判年月日: 昭和62年5月29日 / 結論: 破棄自判
宗教法人の代表役員に就任したと称している者に対し、自己が代表役員であることの確認又は右の者が代表役員でないことの確認を求める訴えは、右法人に対し自己が代表役員であることの確認を求める訴えとともに提起しても、確認の利益を欠く。