判旨
法人の役員選任行為が会長の専権事項である場合、その行使が解散を強行して私腹を肥やすための手段であるといった事情が証拠により認められない限り、権限の濫用には当たらない。
問題の所在(論点)
法人の寄附行為に基づき会長の専権事項とされる役員選任行為が、特定の目的を達するための「権限の濫用」として無効となり得るか。また、その事実認定においてどのような事情を参酌すべきか。
規範
法人の基本規定(寄附行為等)により、理事・評議員の選任が特定の者の専権事項とされている場合、その選任行為が「権限の濫用」として無効となるためには、当該選任が不当な目的(例:法人の解散を強行して私腹を肥やす等)を達成するための手段として行われたことが、客観的な証拠に基づいて認められなければならない。
重要事実
財団法人である本件団体において、会長であるBらが新たな理事および評議員を選任した。これに対し、反対派(上告人ら)は、当該選任が通謀虚偽表示であること、および会長らが法人の解散を強行し私腹を肥やすための手段として行われた権限の濫用であると主張して、その効力を争った。
あてはめ
本件財団法人の寄附行為によれば、理事および評議員の選任は会長の専権事項であると認められる。上告人らは、この選任が解散を強行し私腹を肥やすための手段であると主張するが、原審においてこれを認めるに足りる証拠はないと判断されている。専権事項として認められた権限行使である以上、その目的が不当であることを裏付ける具体的な事実が認められない限り、権限の濫用と評価することはできない。
結論
本件役員選任行為を権限の濫用とした上告人らの主張は認められず、選任は有効である。
実務上の射程
事件番号: 昭和34(オ)1058 / 裁判年月日: 昭和35年11月24日 / 結論: 棄却
一、財団法人A1会の理事評議員の解任が会長の専権事項であつても、原判示のような事実関係のもとにおいて、理事会議、評議会に諮り、十分論議をつくした上でなさるべきであるに拘わらず、特に解任しなければならないような事情もないのに、会長が軽々になした解任は権利濫用と断定できないわけではない。 二、財団法人の理事評議員の解任決議…
法人の内部自治に基づく役員選任の有効性を争う際、「権限の濫用」の法理を用いるための立証のハードルを示している。寄附行為等に根拠がある形式的に適法な権限行使を否定するには、私腹を肥やす等の著しく不当な目的を具体的証拠で示す必要がある。民法上の代理権濫用(旧民法93条但書類推適用、現行民法107条)や、会社法上の新株発行における不当目的法理などと並び、私法上の権限行使の限界を画する際の一資料となる。
事件番号: 昭和33(オ)600 / 裁判年月日: 昭和34年4月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】財団法人の理事長等の職務権限の不存在確認を求める訴えにおいて、仮に当該役員の選任規定が無効であっても、原告が当然に後任の役員に選任される地位にない限り、確認の利益を認めることはできない。 第1 事案の概要:財団法人D文庫の寄附行為(定款)には、理事長は「設立者累代の家督相続人」が就任する旨の規定が…
事件番号: 昭和44(オ)719 / 裁判年月日: 昭和47年11月9日 / 結論: 棄却
学校法人の理事会または評議員会の決議が無効であることの確認を求める訴は、現に存する法律上の紛争の直接かつ抜本的な解決のため適切かつ必要と認められる場合には、許容されるものと解すべきである。
事件番号: 昭和42(オ)379 / 裁判年月日: 昭和42年9月19日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】招集権限のない者によって招集された評議員会及び理事会は法律上不存在であり、そこでなされた役員選任等の決議も効力を有しない。そのため、当該決議に基づき選任された代表者自称者による訴訟行為は、代表権を欠く不適法なものとして却下される。 第1 事案の概要:上告人法人の寄附行為では、理事長が理事会及び評議…
事件番号: 昭和31(オ)267 / 裁判年月日: 昭和33年7月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】確認の訴えが許されるためには、原告の地位にある法律上の不安を除去するために当該確認判決を得ることが即時確定の利益を有し、かつ適切な手段であることを要する。建物明渡訴訟を提起されている被告が、当該訴訟の前提問題にすぎない原告法人の設立の効力を別訴で争うことは、即時確定の利益を欠き許されない。 第1 …