学校法人の理事会または評議員会の決議が無効であることの確認を求める訴は、現に存する法律上の紛争の直接かつ抜本的な解決のため適切かつ必要と認められる場合には、許容されるものと解すべきである。
学校法人の理事会等の決議無効確認の訴の許否
民訴法225条,商法252条,私立学校法36条,私立学校法41条
判旨
学校法人の理事会等による決議の無効確認の訴えは、紛争の抜本的解決のため適切かつ必要と認められる場合には、確認の利益が認められ、商法(当時)252条の類推適用により許容される。
問題の所在(論点)
学校法人の理事会・評議員会決議の無効確認を求める訴えについて、明文の規定がない場合でも確認の利益が認められ、適法な訴えとして許容されるか。
規範
確認の訴えにおける確認の利益は、法律関係の存否を確定することが、紛争を解決し法律上の地位の不安・危険を除去するために必要かつ適切である場合に認められる。通常、過去の法律関係の確認は利益を欠くが、基本的な法律関係を確定することが紛争の抜本的解決のために最も適切かつ必要と認められる場合には、過去の法律関係であっても確認の利益が認められる。法人の会議体決議は諸般の法律関係の基礎をなすため、商法252条(現行会社法830条2項等)の類推適用により、明文規定のない法人においても決議無効確認の訴えを提起し得る。
重要事実
学校法人において、旧理事らの選任・解任や新理事長の互選等を含む一連の理事会・評議員会決議がなされた。上告人ら(元理事ら)は、これらの各決議が無効であることの確認を求めて出訴した。原審は、学校法人の決議無効確認の訴えは明文の規定がないため不適法であり、かつ過去の法律関係の確認にすぎないとして却下したため、上告人が上告した。
事件番号: 昭和42(オ)379 / 裁判年月日: 昭和42年9月19日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】招集権限のない者によって招集された評議員会及び理事会は法律上不存在であり、そこでなされた役員選任等の決議も効力を有しない。そのため、当該決議に基づき選任された代表者自称者による訴訟行為は、代表権を欠く不適法なものとして却下される。 第1 事案の概要:上告人法人の寄附行為では、理事長が理事会及び評議…
あてはめ
学校法人の役員選任等を内容とする決議の効力に疑義がある場合、その後の理事会の成立や業務執行の効力等に連鎖的な紛争が生じ得る。このような場合、基本となる決議自体の効力を確定することが紛争の抜本的解決に資するため、確認の利益を肯定すべきである。本件では、上告人らの理事としての地位喪失に直接関わる決議(本件決議8)およびその前提となる決議(同5〜7)については、地位存否を争う上で確認の利益がある。もっとも、既に後の有効な決議によって法律関係が上書きされ、現状に影響を及ぼさない過去の決議(同1〜4)や、退任後に承継的関係のない中でなされた決議(同9、10)については、確認の利益を欠く。
結論
学校法人の決議無効確認の訴えは、紛争解決に適切・必要な範囲で認められる。本件では一部の決議に確認の利益が認められるものの、実体的には各決議は有効であり、請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
会社法上の決議取消・無効・不存在の訴えの規定がない一般法人(学校法人、医療法人、一般社団法人等)における、決議の効力を争う訴訟の適法性を基礎づける際に用いる。過去の決議であっても、現在の法律関係の前提として抜本的解決に資する場合には、確認の利益が認められる点に射程がある。
事件番号: 昭和34(オ)1059 / 裁判年月日: 昭和35年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人の役員選任行為が会長の専権事項である場合、その行使が解散を強行して私腹を肥やすための手段であるといった事情が証拠により認められない限り、権限の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:財団法人である本件団体において、会長であるBらが新たな理事および評議員を選任した。これに対し、反対派(上告人ら)…
事件番号: 昭和57(オ)1229 / 裁判年月日: 昭和62年3月12日 / 結論: 棄却
宗教法人の代議制意思決定機関がした決議の不存在確認の訴えは、当該法人の人的構成要素であり、かつ、右機関の議員の選挙及び被選挙資格を有する者によつてされた場合であつても、そのことの故に直ちに確認の利益があるものとはいえない。
事件番号: 昭和27(オ)4 / 裁判年月日: 昭和29年10月7日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】役員選任決議の無効および役員の地位不存在の確認を求める訴えにおいて、対象となる役員が既に退任し、その後の役員でないことが明白である場合には、確認の利益を欠く。 第1 事案の概要:上告人は、被上告会議所が昭和25年6月28日の議員総会で行った役員選任決議が無効であること、および特定の個人が副会頭の地…
事件番号: 昭和34(オ)1058 / 裁判年月日: 昭和35年11月24日 / 結論: 棄却
一、財団法人A1会の理事評議員の解任が会長の専権事項であつても、原判示のような事実関係のもとにおいて、理事会議、評議会に諮り、十分論議をつくした上でなさるべきであるに拘わらず、特に解任しなければならないような事情もないのに、会長が軽々になした解任は権利濫用と断定できないわけではない。 二、財団法人の理事評議員の解任決議…