宗教法人の代議制意思決定機関がした決議の不存在確認の訴えは、当該法人の人的構成要素であり、かつ、右機関の議員の選挙及び被選挙資格を有する者によつてされた場合であつても、そのことの故に直ちに確認の利益があるものとはいえない。
宗教法人の代議制意思決定機関がした決議の不存在確認の訴えの利益の有無
民訴法225条,商法252条,宗教法人法12条1項6号
判旨
宗教法人の意思決定機関の決議について、明文の規定がない場合でも、決議から派生した法律関係に紛争が存在し、決議の存否・効力を確認することが紛争の抜本的解決に適切かつ必要であれば、確認の訴えは許容される。ただし、単なる構成員であるというだけでは足りず、当該決議が個別の具体的な権利又は法律関係に及ぼす影響を考慮して確認の利益を判断すべきである。
問題の所在(論点)
宗教法人の内部機関による決議の不存在確認を求める訴えにおいて、単なる法人構成員(または元議員)に確認の利益が認められるか。また、具体的な納付義務を伴う賦課金決議の場合に、決議自体の確認を求める必要があるか。
規範
1. 実定法上に明文の規定がない法人の意思決定機関の決議であっても、(1)決議から派生した各種の法律関係につき現在紛争が存在し、(2)決議自体の存否・効力を確認することが紛争の直接かつ抜本的な解決のために適切かつ必要と認められるときは、決議不存在・無効確認の訴えを提起できる。 2. 紛争解決の適切性・必要性は、単に法人の構成員であることのみから直ちに認められるのではなく、当該決議が原告の具体的な権利又は法律関係に及ぼす影響を個別具体的に判断すべきである。 3. 他に直接的な紛争解決手段(例:義務の不存在確認訴訟等)がある場合には、特段の事情がない限り、決議自体の不存在確認を求める必要性(確認の利益)は否定される。
重要事実
事件番号: 昭和44(オ)719 / 裁判年月日: 昭和47年11月9日 / 結論: 棄却
学校法人の理事会または評議員会の決議が無効であることの確認を求める訴は、現に存する法律上の紛争の直接かつ抜本的な解決のため適切かつ必要と認められる場合には、許容されるものと解すべきである。
上告人は、宗教法人である被上告人(本願寺派)に包括される寺院の住職であり、被上告人の構成員(教師)である。被上告人の議決機関である宗議会において、予算や規則改正、賦課金の増額等の決議(本件決議)がなされた。上告人は、招集権のない者による招集等の瑕疵を理由に、本件決議の不存在確認を求めて提訴した。上告人は本件決議当時、宗議会議員であったが、後に除名され、訴訟時点では議員の地位にはなかった。また、賦課金増額決議については、不払による制裁が主に宗教的なものにとどまっていた。
あてはめ
1. 上告人は被上告人の人的構成要素ではあるが、代議制が採用されている被上告人の組織上、意思決定に直接参加できる立場にはない。また、決議当時議員であったとしても、本件決議が上告人の具体的な権利・法律関係に及ぼす影響について具体的な主張立証がないため、構成員という資格のみで確認の利益を認めることはできない。 2. 賦課金増額決議については、上告人の利害に直接関わるものの、不履行時の不利益は主として宗教的なものである。また、金銭的負担に関する紛争であれば、増額された賦課金納付義務の不存在確認を求めれば足り、その前提となる決議自体の不存在確認を求める必要性(方法の相当性)は認められない。
結論
本件各決議の不存在確認を求める訴えは、いずれも確認の利益を欠き不適法である。上告を棄却する。
実務上の射程
会社法上の決議取消・無効等の訴え(対世効あり)とは異なり、明文のない宗教法人等の決議確認訴訟は、民訴法上の「確認の訴え」の一般原則(確認の利益)に服することを明らかにした。答案上は、①対象の適格性(紛争解決に有効か)と②原告適格的要素(具体的利益の侵害)を分けて論じる際の指標となる。特に「直接の義務不存在確認で足りる場合は決議確認は不可」という点は、訴訟選択の適否に関する論述で有用である。
事件番号: 平成16(受)1939 / 裁判年月日: 平成17年11月8日 / 結論: その他
1 宗教法人Yの檀信徒であるXが提起した丙をYの責任役員及び代表役員に選定する檀信徒総会決議の不存在確認の訴えは,Yの規則により檀信徒総会に責任役員及び代表役員を選定する権限が与えられていること,XとYとの間には丙がYの責任役員及び代表役員であることについて上記決議に対する疑義から派生した争いがあることなど判示の事情の…
事件番号: 昭和35(オ)769 / 裁判年月日: 昭和38年10月24日 / 結論: 棄却
確認の訴が許されるためには、被告に対する関係において原告の地位に法律上の危険ないし不安が存するのみでなく、それを除去するにつき当該確認判決を得ることが適切な手段であることを要するのであつて、別件訴訟の前提問題として判断されるべき事項につき、改めて別に確認の判決を求める利益はないといわねばならない(昭和三一年(オ)第二六…
事件番号: 昭和27(オ)4 / 裁判年月日: 昭和29年10月7日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】役員選任決議の無効および役員の地位不存在の確認を求める訴えにおいて、対象となる役員が既に退任し、その後の役員でないことが明白である場合には、確認の利益を欠く。 第1 事案の概要:上告人は、被上告会議所が昭和25年6月28日の議員総会で行った役員選任決議が無効であること、および特定の個人が副会頭の地…