1 宗教法人Yの檀信徒であるXが提起した丙をYの責任役員及び代表役員に選定する檀信徒総会決議の不存在確認の訴えは,Yの規則により檀信徒総会に責任役員及び代表役員を選定する権限が与えられていること,XとYとの間には丙がYの責任役員及び代表役員であることについて上記決議に対する疑義から派生した争いがあることなど判示の事情の下では,確認の利益が認められる。 2 代表役員及び責任役員を欠き,檀信徒総会においてこれを選定しなければならない状態にあった宗教法人Yにおいて,ただ1人責任役員として檀信徒総会を招集することのできた丁が責任役員としての事務を執行することを期待できない状態にあったこと,檀信徒である戊,Dが責任役員又は責任役員代務者と称してYの運営にかかわってきたことなど判示の事情の下では,戊及びDは,丁が責任役員としての権利義務を行使しないことを表明していなくても,責任役員及び代表役員を選定するための檀信徒総会を招集することが許される。
1 宗教法人の責任役員及び代表役員を選定する檀信徒総会決議の不存在確認の訴えにつき確認の利益があるとされた事例 2 責任役員又は責任役員代務者と称して宗教法人の運営にかかわってきた檀信徒が責任役員及び代表役員を選定するための檀信徒総会を招集することが許されるとされた事例
(1,2につき)宗教法人法18条 (1につき)民訴法134条,宗教法人法12条 (2につき)宗教法人法19条,宗教法人法20条
判旨
代表役員や責任役員が欠け、唯一の責任役員も事務執行が期待できない宗教法人において、規則に定めがない場合でも、運営に関与してきた檀信徒による役員選定のための総会招集は許容される。また、役員でない者に対する解任決議の不存在確認は、確認の利益を欠き不適法である。
問題の所在(論点)
1. 代表役員等の地位に一度も就いたことのない者に対する解任決議の不存在確認に、確認の利益があるか。 2. 規則に招集権者の定めがなく、正当な権限を有する役員が事務執行を放棄している場合、檀信徒による総会招集は有効か。
規範
1. 確認の利益は、判決による法律関係の確定が紛争解決に必要かつ適切である場合に認められる。役員の地位にない者に対する解任決議は、その者の法的地位を害さず、確認の利益を欠く。一方、構成員が後任役員の選定決議を争うことは、適正な役員選定を求める法的利益があるため、確認の利益が認められる。 2. 宗教法人の必要的な機関(法18条1項)が欠けた場合、規則に招集権者の定めがなくても、法人の運営実態や規則の趣旨(檀信徒の意思反映)に照らし、現に運営に携わる檀信徒による総会招集は、例外的に許容される。
事件番号: 平成5(オ)1939 / 裁判年月日: 平成9年1月28日 / 結論: 棄却
有限会社の持分が数人の共有に属する場合、有限会社法二二条、商法二〇三条二項にいう社員の権利を行使すべき者は、その共有持分の価格に従い過半数をもって定める。
重要事実
宗教法人Xの規則では、責任役員・代表役員を檀信徒総会で選定するとされていたが、招集権者の規定はなかった。代表役員Eの死亡後、Xは役員不在の状態となり、登記上の代表役員となっていた被上告人(非檀信徒)と、運営を担う檀信徒Iらが対立した。Iらは責任役員等を自称し、本件総会を招集して被上告人を解任し、Dを後任に選定する決議を行った。被上告人は、Iらに招集権限がないこと等を理由に、解任および選定決議の不存在確認を求めて提訴した。なお、存命の責任役員Fは長年事務を放置し、運営への不関与を表明していた。
あてはめ
1. 被上告人は一度も総会で選定されておらず、当初から役員の地位にない。かかる者に対する解任決議は、何ら被上告人の法的地位を害するものではないから、解任決議の不存在確認を求める訴えは確認の利益を欠く(却下)。一方、Dの選定決議については、檀信徒である被上告人が適正な役員選定を求める利益を有するため、確認の利益がある。 2. 本件当時、Xは役員が欠員状態で、唯一の責任役員Fも事務執行を期待できない放置状態にあった。法が役員を必要的機関とし、規則が檀信徒の意思反映を重視している趣旨に鑑みれば、運営に携わってきた檀信徒Iらによる役員選定のための招集は、手続上の瑕疵として決議を不存在とするほど重大なものとはいえない。
結論
解任決議および責任役員会決議の不存在確認については、確認の利益を欠くため訴え却下。Dの選定決議については、招集手続の瑕疵のみをもって不存在とはいえず、他の瑕疵(招集通知の到達等)の有無を審理させるため差し戻す。
実務上の射程
宗教法人の内部紛争における決議の効力を争う際、原告の地位(役員か檀信徒か)に応じた確認の利益の有無を峻別する基準として用いる。また、規則の不備や役員不在というデッドロック状態において、実態上の運営者による自救的な総会招集の有効性を肯定する際の根拠となる。
事件番号: 昭和57(オ)1229 / 裁判年月日: 昭和62年3月12日 / 結論: 棄却
宗教法人の代議制意思決定機関がした決議の不存在確認の訴えは、当該法人の人的構成要素であり、かつ、右機関の議員の選挙及び被選挙資格を有する者によつてされた場合であつても、そのことの故に直ちに確認の利益があるものとはいえない。
事件番号: 昭和42(オ)379 / 裁判年月日: 昭和42年9月19日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】招集権限のない者によって招集された評議員会及び理事会は法律上不存在であり、そこでなされた役員選任等の決議も効力を有しない。そのため、当該決議に基づき選任された代表者自称者による訴訟行為は、代表権を欠く不適法なものとして却下される。 第1 事案の概要:上告人法人の寄附行為では、理事長が理事会及び評議…
事件番号: 昭和34(オ)413 / 裁判年月日: 昭和36年1月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】住職が任意退職するに際し、檀信徒総代の議決を必須とする特段の規定がない限り、当該議決は退職の有効要件ではない。また、檀信徒の意思が既に本山に明瞭となっている状況下では、総代の議決を得ていないことをもって退職の効力を否定することはできない。 第1 事案の概要:上告人(住職)が退職請願書を提出し任意退…