事業協同組合の定款に「専務理事は理事長が欠員のときはその職務を行う」旨の定めがあるが、同組合の定款によれば、理事長及び専務理事を含む役員の全員につき同時に任期が満了する旨及び任期満了によつて退任した役員は後任の役員が就任するまで役員の職務を行う旨の定めがあるなど判示の事実関係の下においては、右の定款にいう欠員には、理事長が任期満了によつて退任した場合は含まないと解すべきである。
事業協同組合の「専務理事は理事長が欠員のときはその職務を行う」旨の定款にいう欠員には理事長が任期満了によつて退任した場合は含まないと解された事例
中小企業等協同組合法36条1項,中小企業等協同組合法42条,商法258条1項,商法261条3項
判旨
代表理事が任期満了により退任した場合、後任理事が選出されるまでは退任理事が権利義務を有する(中企等協法42条、商法258条1項準用)ため、職務代行規定による他の理事の職務代行は原則として認められない。権限のない者によって招集された総会決議は法律上不存在であり、その不存在の連鎖により、後の総会での除名決議も無効となる。
問題の所在(論点)
代表理事が任期満了し後任未選任の状態で、専務理事が定款の代行規定に基づき総会を招集できるか。また、権限なき招集による決議の効力が、その後の総会決議にどう影響するか。
規範
1. 中小企業等協同組合法42条(商法258条1項準用)に基づき、任期満了により退任した理事は、後任理事が就任するまで理事(代表理事)としての権利義務を有する。 2. 定款に「理事長が欠員のときは専務理事がその職務を代行する」旨の代行規定がある場合でも、右の「欠員」には単なる任期満了による退任は含まれない。退任理事が死亡その他の事由により職務を行い得ない「特段の事情」がある場合に限り、代行規定に基づく職務代行が認められる。 3. 招集権限のない者によって招集された総会決議は、法律上不存在である。
重要事実
事件番号: 昭和44(オ)276 / 裁判年月日: 昭和45年8月20日 / 結論: 破棄自判
取締役会の決議を経ることなく、代表取締役以外の取締役によつて招集された株主総会は法律上の意義における株主総会とはいえず、そこで決議がなされたとしても、株主総会の決議があつたものと解することはできない。
事業協同組合の代表理事Dが昭和48年に任期満了したが、後任が選出されないまま放置されていた。専務理事Eは、定款の代行規定に基づき、昭和58年に甲総会を招集した。甲総会で選出されたGが乙総会を招集し、乙総会で選出されたHが丙総会を招集して組合員(上告人)を除名した。上告人は、甲・乙各総会の役員選出決議の不存在確認を求めて提訴した。
あてはめ
1. 被上告人の理事・代表理事は全員同時に任期満了する体制であり、Dの任期満了時に専務理事Eも任期満了していた。法42条・商法258条1項により、Dは後任就任まで代表理事としての権利義務を有する。 2. Dが死亡等の職務遂行不能な「特段の事情」はないため、Eに代行規定を適用する余地はなく、Eは代表理事の職務を代行できない。ゆえに、Eには甲総会の招集権限がない。 3. 招集権限のないEが招集した甲総会決議は不存在である。その不存在の決議に基づき選任されたGおよびHによる乙・丙総会の招集権限も否定されるため、各決議はいずれも法律上存在しない。
結論
招集権限のない者による甲総会・乙総会の役員選任決議は不存在である。また、その連鎖により丙総会の除名決議も効力を生じないため、上告人は組合員たる地位を失わず、当事者適格を有する。
実務上の射程
会社法下での「招集権限なき者による招集」の瑕疵の程度(原則として決議取消事由だが、著しく合理性を欠く場合は不存在・無効)を検討する際のリーディングケースとなる。特に権利義務承継取締役が存在する場合の代行規定の適用範囲を厳格に画定したものとして重要である。
事件番号: 昭和42(オ)379 / 裁判年月日: 昭和42年9月19日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】招集権限のない者によって招集された評議員会及び理事会は法律上不存在であり、そこでなされた役員選任等の決議も効力を有しない。そのため、当該決議に基づき選任された代表者自称者による訴訟行為は、代表権を欠く不適法なものとして却下される。 第1 事案の概要:上告人法人の寄附行為では、理事長が理事会及び評議…
事件番号: 平成1(オ)573 / 裁判年月日: 平成2年12月4日 / 結論: 棄却
一 株式を相続により準共有するに至った共同相続人は、商法二〇三条二項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」の指定及びその旨の会社に対する通知を欠く場合には、特段の事情がない限り、株主総会決議不存在確認の訴えにつき原告適格を有しない。 二 株式を準共有する共同相続人間において商法二〇三条二項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」…
事件番号: 昭和41(オ)522 / 裁判年月日: 昭和42年4月20日 / 結論: 棄却
中小企業等協同組合法における組合員たる理事が組合を脱退しても、当然に理事資格を喪失するとはかぎらない。