取締役に選任する旨の株主総会の決議が不存在である場合に、その者を構成員の一員とする取締役会で選任された代表取締役が、その取締役会の招集決定に基づき招集した株主総会において取締役を選任する旨の決議がされたときは、右決議は、いわゆる全員出席総会においてされたなど特段の事情がない限り、不存在である。
取締役を選任する旨の株主総会決議が不存在である場合とその後の取締役を選任する旨の株主総会決議の効力
商法231条,商法254条1項,商法258条1項,商法(昭和56年法律第74号による改正前のもの)252条
判旨
取締役選任決議が存在しない場合、当該取締らで構成される取締役会による招集決定に基づき、代表取締役が招集した株主総会での選任決議も、特段の事情がない限り不存在となる。また、この場合であっても、任期満了した旧取締役は、後任が就職するまで取締役としての権利義務を有する。
問題の所在(論点)
虚偽の選任決議に基づく「登記上の取締役」が招集した株主総会により選任された後任取締役の地位、および任期満了した旧取締役の権利義務(会社法346条1項)の有無が問題となる。
規範
1. 取締役選任決議が不存在である場合、当該取締役らで構成される取締役会は正当なものとはいえず、その取締役会で選任された代表取締役も招集権限を有しない。したがって、かかる代表取締役が招集した株主総会における後任取締役選任決議も、全員出席総会等の特段の事情がない限り、法律上不存在となる。この瑕疵が継続する限り、以後の株主総会における取締役選任も効力を有しない。 2. 取締役が任期満了した場合であっても、法律に定める員数を欠くことになるときは、新たに選任された取締役が就職するまで、引き続き取締役としての権利義務を有する(会社法346条1項)。
重要事実
上告人の取締役であった被上告人、D、E、Fの4名は昭和49年に任期満了したが、後任選任のための同年7月1日付株主総会および取締役会決議は不存在であった。しかし、登記上は後任Gらが取締役に就任した旨の虚偽の記載がなされた。その後、昭和59年にもGらが再選された旨の登記がなされた。昭和60年、DおよびFは、前述の決議不存在に備え、旧取締役らによる取締役会を招集し、被上告人を代表取締役から解任してDを選任する決議を行った。
あてはめ
1. 昭和49年の選任決議が不存在である以上、その後の取締役会および代表取締役による招集決定は正当な権限を欠く。したがって、昭和59年の株主総会決議も「全員出席総会」等の特段の事情がない限り不存在であり、登記上の取締役Gらは正当な取締役ではない。 2. 法律上の員数を欠く状態が継続しているため、旧取締役である被上告人、D、E、Fの4名は、依然として会社法346条1項(旧商法258条1項)に基づき取締役としての権利義務を有する。 3. 正当な権利義務を有する取締役らによって昭和60年に開催された取締役会において、被上告人を代表取締役から解任する決議がなされたのであれば、被上告人の代表取締役としての権利義務は消滅する。
結論
被上告人は取締役としての権利義務を有するが、昭和60年の取締役会決議が有効であれば代表取締役としての地位は失う。原審は登記のみを理由に旧取締役による決議を否定しており、審理不尽であるため、本件を差し戻す。
実務上の射程
不存在の決議から生じた「表見上の取締役」が関与した後の決議の連鎖的不存在を認めた重要判例。答案では、会社法346条1項の「権利義務取締役」の認定と、招集権限を欠く総会決議の効力(不存在)を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和27(オ)4 / 裁判年月日: 昭和29年10月7日 / 結論: 破棄自判
【結論(判旨の要点)】役員選任決議の無効および役員の地位不存在の確認を求める訴えにおいて、対象となる役員が既に退任し、その後の役員でないことが明白である場合には、確認の利益を欠く。 第1 事案の概要:上告人は、被上告会議所が昭和25年6月28日の議員総会で行った役員選任決議が無効であること、および特定の個人が副会頭の地…
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個人タクシー事業者を組合員とするD組合において,組合員に対する除名決議のされた総代会までに被除名者たる組合員に対する除名事由が具体的に明らかにされることなく,理事長において当該組合員の関与しない事実を含む一連の事実経過をもって当該組合員を含む複数の組合員を包括的に除名すべきものと主張していたにすぎないなど判示の事実関係…
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財団法人の寄付行為に評議員の解任に関する規定はないが、その選任については専ら会長の職権とされていること、選任された評議員については任期の定めがされていないことなどの事情に徴すれば、会長に評議員の解任権があるものと解するのが相当である。