判旨
住職が任意退職するに際し、檀信徒総代の議決を必須とする特段の規定がない限り、当該議決は退職の有効要件ではない。また、檀信徒の意思が既に本山に明瞭となっている状況下では、総代の議決を得ていないことをもって退職の効力を否定することはできない。
問題の所在(論点)
住職の任意退職において、檀信徒総代の議決が必須の有効要件となるか。また、議決を経ない退職の承認が権利の濫用等に該当し無効となるか。
規範
宗教団体の代表者(住職)の退職の効力について、団体内部の規定に檀信徒総代の議決を必須条件とする旨の定めがない場合には、原則として当該議決は法的効力発生の要件とはならない。また、手続の適正性が争われる場面においても、既に檀信徒側の意思動向が把握されており、議決を経ることが相当でない特段の事情がある場合には、手続の欠缺は効力を左右しない。
重要事実
上告人(住職)が退職請願書を提出し任意退職しようとした際、檀信徒総代の議決を経ていなかった。妙心寺派本山の首脳者は、当時の総代各人の意思動向を既に明確に把握していた。上告人は、退職請願書への捺印に要素の錯誤があったことや、議決欠缺による退職の無効、および権利の濫用を主張して争った。
あてはめ
まず、本件宗教団体の規定上、住職の任意退職に際して檀信徒総代の議決を必須とする明文は存在しない。次に、檀信徒の総意を反映させる観点からは議決を経ることが望ましいものの、本件では本山側が総代らの意思を既に熟知しており、改めて議決を求める必要性が乏しい情勢下にあったといえる。したがって、議決を経ていないことは手続上の瑕疵とはならず、要素の錯誤や権利の濫用との主張も、認定された事実経過に照らせば理由がない。
結論
住職の任意退職は有効であり、檀信徒総代の議決がないことを理由にその効力を否定することはできない。
事件番号: 昭和27(オ)145 / 裁判年月日: 昭和33年1月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】宗派の管長が、住職から提出された誓約書に基づき、宗制上の一般懲戒規定によらずに退職処分を行うことは、宗制が管長に任免権を付与し、かつ処分事由が客観的に認められる限りにおいて有効である。 第1 事案の概要:浄土真宗本願寺派(B寺派)の末寺住職に就任した上告人は、就任に際し、部内の和合を破る等の条項に…
実務上の射程
宗教法人の内部紛争において、手続の履践が必須か否かは第一に規則の定めに従うべきことを示している。規則にない手続(本件では総代の議決)は、特段の事情がない限り有効要件とはならない。事実認定において「意思動向が既知であること」を考慮しており、手続の趣旨が実質的に没却されていないかを判断の要素としている点が重要である。
事件番号: 昭和26(オ)85 / 裁判年月日: 昭和35年6月2日 / 結論: 棄却
一 原審認定のような内容の寺法(原判決理由参照)は公益に反するとはいえない。 二 檀徒総代の同意なくして制定された寺院規則は無効である。 三 宗教団体法第三二条の地方長官の認可は、寺院規則の効力を完成させるためのものであつて、独立の創設的効力を有しない。
事件番号: 平成16(受)1939 / 裁判年月日: 平成17年11月8日 / 結論: その他
1 宗教法人Yの檀信徒であるXが提起した丙をYの責任役員及び代表役員に選定する檀信徒総会決議の不存在確認の訴えは,Yの規則により檀信徒総会に責任役員及び代表役員を選定する権限が与えられていること,XとYとの間には丙がYの責任役員及び代表役員であることについて上記決議に対する疑義から派生した争いがあることなど判示の事情の…
事件番号: 平成7(オ)823 / 裁判年月日: 平成8年6月24日 / 結論: 破棄自判
宗教法人である寺院の前住職の長男であるにすぎない甲は、右法人においては、宗教上の地位である住職の地位にある者を代表役員及び責任役員に充てることになっているが、長男の権利放棄が長男以外の者を住職に任命するための要件にはなっておらず、その他に甲が右法人の代表役員等の地位について何らかの法律上の利害関係を有する地位にあること…
事件番号: 昭和57(オ)1229 / 裁判年月日: 昭和62年3月12日 / 結論: 棄却
宗教法人の代議制意思決定機関がした決議の不存在確認の訴えは、当該法人の人的構成要素であり、かつ、右機関の議員の選挙及び被選挙資格を有する者によつてされた場合であつても、そのことの故に直ちに確認の利益があるものとはいえない。