一 原審認定のような内容の寺法(原判決理由参照)は公益に反するとはいえない。 二 檀徒総代の同意なくして制定された寺院規則は無効である。 三 宗教団体法第三二条の地方長官の認可は、寺院規則の効力を完成させるためのものであつて、独立の創設的効力を有しない。
一 寺法が公益に反しないとされた事例 二 檀徒総代の同意なくして制定された寺院規則の効力 三 宗教団体法第三二条の地方長官の認可の性質。
民法90条,宗教団体法32条
判旨
寺院規則の制定に檀徒総代の同意を欠く場合、たとえ主務官庁の認可等があっても当該規則は有効に成立せず、依然として不文の寺法(従前の例)が規則としての効力を有する。
問題の所在(論点)
寺院規則の制定において檀徒総代の同意を欠く場合、行政庁の認可によってその瑕疵は治癒され、規則は有効に成立するか。また、適法な規則が制定されない場合の組織運営の準拠はどうなるか。
規範
宗教団体法の下における寺院規則の制定は、寺院の最重要の構成分子である檀徒総代の同意を不可欠の要件とする。主務官庁による認可は規則の効力を完成させる行為(補充行為)であって、独立の創設的効力を有しないため、同意を欠く無効な規則が認可によって有効になることはない。有効な規則が制定されない限り、不文の慣例としての寺法(従前の例)が引き続き組織運営を規律する根本原則となる。
重要事実
寺院Aの住職は、不文の寺法に基づき檀徒総代であった被上告人らに対し、新たな寺院規則案への同意を求めたが拒絶された。そこで住職は、被上告人らを解任し、檀徒資格のない者を新たに総代に選任した上で、その新総代の同意を得て主務官庁の認可を受け、新たな寺院規則を定めた。被上告人らは、自身らが依然として総代であり、新規則は無効であると主張して争った。
事件番号: 昭和34(オ)413 / 裁判年月日: 昭和36年1月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】住職が任意退職するに際し、檀信徒総代の議決を必須とする特段の規定がない限り、当該議決は退職の有効要件ではない。また、檀信徒の意思が既に本山に明瞭となっている状況下では、総代の議決を得ていないことをもって退職の効力を否定することはできない。 第1 事案の概要:上告人(住職)が退職請願書を提出し任意退…
あてはめ
本件寺院には、檀徒総代の資格を創設者一門に限定する不文の寺法(慣例)が存在した。住職による被上告人らの解任および一門外の者の総代選任は、この不文の寺法に反し無効である。したがって、真の総代である被上告人らの同意を得ずに作成された新規則は、制定要件を欠く。行政庁による認可は創設的な効力を持たないため、この同意欠如の瑕疵は治癒されない。その結果、新規則は無効であり、依然として「従前の例」である不文の寺法が有効な規則として存続する。
結論
被上告人らが現に檀徒総代であり、同意なく制定された新寺院規則は無効である。不文の寺法に基づき、被上告人らの地位は維持される。
実務上の射程
宗教法人の規則制定手続における「同意」等の内部手続の重要性を強調する。行政庁の認可があっても私法上の有効性は別個に判断されるという、認可の性質(補充行為)に関する一般原則を示すものとして、宗教法人法下の事案でも参照し得る。
事件番号: 昭和27(オ)145 / 裁判年月日: 昭和33年1月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】宗派の管長が、住職から提出された誓約書に基づき、宗制上の一般懲戒規定によらずに退職処分を行うことは、宗制が管長に任免権を付与し、かつ処分事由が客観的に認められる限りにおいて有効である。 第1 事案の概要:浄土真宗本願寺派(B寺派)の末寺住職に就任した上告人は、就任に際し、部内の和合を破る等の条項に…
事件番号: 平成16(受)1939 / 裁判年月日: 平成17年11月8日 / 結論: その他
1 宗教法人Yの檀信徒であるXが提起した丙をYの責任役員及び代表役員に選定する檀信徒総会決議の不存在確認の訴えは,Yの規則により檀信徒総会に責任役員及び代表役員を選定する権限が与えられていること,XとYとの間には丙がYの責任役員及び代表役員であることについて上記決議に対する疑義から派生した争いがあることなど判示の事情の…
事件番号: 昭和57(オ)1229 / 裁判年月日: 昭和62年3月12日 / 結論: 棄却
宗教法人の代議制意思決定機関がした決議の不存在確認の訴えは、当該法人の人的構成要素であり、かつ、右機関の議員の選挙及び被選挙資格を有する者によつてされた場合であつても、そのことの故に直ちに確認の利益があるものとはいえない。