宗教法人において檀信徒名簿が備え付けられていて檀徒であることが右法人の代表役員を補佐する機関である総代に選任されるための要件とされ、予算編成、不動産の処分等の右法人の維持経営に係る諸般の事項の決定につき、総代による意見の表明を通じて檀徒の意見が反映される体制となっており、檀徒による右法人の維持経営の妨害行為が除名処分事由とされているという判示の事実関係の下においては、右法人における檀徒の地位は、具体的な権利義務ないし法律関係を含む法律上の地位ということができる。
宗教法人における檀徒の地位が法律上の地位に当たるとされた事例
裁判所法3条,民訴法225条
判旨
宗教法人の檀徒の地位が法律上の争訟に当たるかは、当該法人の規則等の定めに照らし、当該地位が具体的な権利義務ないし法律関係を含む法律上の地位といえるかによって決すべきである。
問題の所在(論点)
宗教法人の檀徒の地位の確認を求める訴えが、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」にあたるか(具体的には、檀徒の地位が具体的な権利義務ないし法律関係を含む法律上の地位といえるか)。
規範
宗教法人の信者(檀徒)の地位は、宗教法人法に直接の規定がないため、当該法人の規則等において信者がどのように位置付けられているかを検討して決すべきである。具体的には、信者の地位にあることが法人の管理運営に関する機関(総代等)の選任要件とされ、その機関を通じて法人の維持経営に係る意思決定に意見を反映し得る体制が整っている場合には、単なる宗教上の地位を超え、具体的な権利義務ないし法律関係を含む「法律上の地位」に該当する。
重要事実
宗教法人から檀徒の地位を剥奪された者が、その地位の確認を求めた事案。被上告人(寺院)の規則等によれば、①檀徒名簿が備え置かれ、②檀徒であることが法人組織上の機関である「総代」の選任要件であり、③総代が責任役員の選任要件となっていた。また、④予算編成や不動産処分等の重要事項の決定につき総代の意見を聴くことが義務付けられており、⑤「維持経営を妨害する者」が除名事由とされていた。
あてはめ
被上告人の規則等において、檀徒であることが代表役員を補佐する総代の選任要件とされており、さらに総代が責任役員の選任に関与し得るなど、檀徒の地位は法人の機関構成と密接に関連している。また、予算や財産処分等の維持経営に係る諸事項につき、総代による意見表明を通じて檀徒の意見が反映される体制が構築されている。加えて、維持経営の妨害が除名事由とされている点は、単なる信仰の次元を超えた実務的な関わりを示唆する。これら事実に照らせば、本件の檀徒の地位は、法人の維持経営に参画し得る具体的な法律上の地位を包含するものと評価できる。
結論
本件における檀徒の地位は法律上の地位ということができ、本件訴えは法律上の争訟に該当する。したがって、訴えを却下した原判決は破棄されるべきである。
実務上の射程
宗教上の地位の確認が法律上の争訟性を認められるためのハードルは一般に高いが、本判決は、規則の内容次第で『法人の管理運営権限への関与』を媒介に法律上の地位となり得ることを示した。答案上は、まず部分社会の法理等を踏まえつつ、規則上の権利(総代選任権等)を具体的に摘示し、それが法人運営という『世俗的・法律的側面』に結びついていることを論証する際に活用すべきである。
事件番号: 平成7(オ)823 / 裁判年月日: 平成8年6月24日 / 結論: 破棄自判
宗教法人である寺院の前住職の長男であるにすぎない甲は、右法人においては、宗教上の地位である住職の地位にある者を代表役員及び責任役員に充てることになっているが、長男の権利放棄が長男以外の者を住職に任命するための要件にはなっておらず、その他に甲が右法人の代表役員等の地位について何らかの法律上の利害関係を有する地位にあること…
事件番号: 昭和52(オ)177 / 裁判年月日: 昭和55年4月10日 / 結論: 棄却
宗教法人における特定人の住職たる地位の存否が同人の当該宗教法人における代表役員、責任役員たる地位の存否の確認を求める請求の当否を判断する前提問題となつている場合には、裁判所は、当該宗教法人の教義等に照らして同人が住職として活動するのにふさわしい適格を備えているかどうかなどその宗教団体内部で自治的に決定せらるべき事項につ…
事件番号: 平成8(オ)754 / 裁判年月日: 平成11年9月28日 / 結論: 棄却
宗教法人の代表役員及び責任役員の地位にあることの確認を求める訴えにおいて、紛争の経緯及び当事者双方の主張に照らせば、請求の当否を決する前提問題である住職罷免処分の効力の有無については宗教団体内部における教義及び信仰の内容が本質的な争点となるものであり、これを判断するには、裁判所が宗教上の教義及び信仰の内容について一定の…
事件番号: 昭和61(オ)531 / 裁判年月日: 平成5年9月7日 / 結論: 棄却
特定の者が宗教団体の宗教活動上の地位にあることに基づいて宗教法人である当該宗教団体の代表役員の地位にあることが争われている訴訟において、その者の宗教活動上の地位の存否を審理、判断するにつき、当該宗教団体の教義ないし信仰の内容に立ち入って審理、判断することが必要不可欠である場合には、右の者の代表役員の地位の存否の確認を求…