有限会社の持分が数人の共有に属する場合、有限会社法二二条、商法二〇三条二項にいう社員の権利を行使すべき者は、その共有持分の価格に従い過半数をもって定める。
有限会社法二二条、商法二〇三条二項にいう社員の権利を行使すべき者の指定方法
有限会社法22条,商法203条2項,民法252条,民法264条
判旨
持分を相続により準共有する者が社員総会決議不存在確認の訴えを提起するには、原則として権利行使者の指定・通知を要し、その指定は持分の価格に従いその過半数で決することができる。
問題の所在(論点)
1. 株式(持分)の準共有者が社員総会決議の無効・不存在確認等の訴えを提起する際、会社法106条(旧商法203条2項)に基づく権利行使者の指定・通知が必要か。 2. 権利行使者の指定は、準共有者の全員一致を要するか、あるいは持分の過半数で足りるか。
規範
1. 株式(持分)を準共有する者が株主(社員)としての地位に基づき訴えを提起するには、会社法106条(旧商法203条2項等)に基づき、権利行使者を指定し、会社に通知することを要する。これを行わない限り、特段の事情がない限り、原告適格を有しない。 2. 準共有者間における権利行使者の指定は、民法252条本文の規定に準じ、持分の価格に従いその過半数で決することができる。全員一致を要するとすれば、一人の反対で権利行使が不可能となり、会社運営に支障を来すからである。
重要事実
亡Dの持分を、妻A1(相続分1/2)、子A2・A3(各1/5)、非嫡出子E(1/10)が相続により準共有した。Aらは、Eの法定代理人Bが指定協議に応じないため、権利行使者の指定・通知を欠いたまま、社員総会決議不存在確認の訴えを提起した。Aらは合計で9/10の相続分を有していたが、適正な手続を経ていないことを理由に原告適格が否定されたため、これを不服として上告した。
事件番号: 平成1(オ)573 / 裁判年月日: 平成2年12月4日 / 結論: 棄却
一 株式を相続により準共有するに至った共同相続人は、商法二〇三条二項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」の指定及びその旨の会社に対する通知を欠く場合には、特段の事情がない限り、株主総会決議不存在確認の訴えにつき原告適格を有しない。 二 株式を準共有する共同相続人間において商法二〇三条二項にいう「株主ノ権利ヲ行使スベキ者」…
あてはめ
1. Aらは会社に対し権利行使者の指定・通知を行っておらず、形式的な要件を欠いている。Bが協議に応じないという事情があっても、Aらだけで持分の過半数(9/10)を占めている以上、自ら権利行使者を指定して通知することは可能であった。したがって、権利行使者を指定できない客観的事情は認められない。 2. 仮に会社が通知の受理を拒絶したとしても、適法に通知がなされれば会社に対する権利行使は妨げられない。本件ではそもそも指定・通知の手続自体を履践していないため、特段の事情は認められず、原告適格を認める余地はない。
結論
準共有者が権利行使者の指定・通知を欠くときは、持分の過半数で指定可能である等の事情に鑑み、特段の事情がない限り原告適格を欠く。本件訴えは却下されるべきである。
実務上の射程
会社法106条の「権利の行使」には、議決権行使のみならず、総会決議取消・無効・不存在確認の訴えといった監督是正権的権利の行使も含まれる点に注意が必要。答案上は、まず106条適用の有無を論じ、次に指定手続が「管理行為」(民法252条)に当たることを示して過半数決定の可否を論じる構成となる。
事件番号: 平成16(受)1939 / 裁判年月日: 平成17年11月8日 / 結論: その他
1 宗教法人Yの檀信徒であるXが提起した丙をYの責任役員及び代表役員に選定する檀信徒総会決議の不存在確認の訴えは,Yの規則により檀信徒総会に責任役員及び代表役員を選定する権限が与えられていること,XとYとの間には丙がYの責任役員及び代表役員であることについて上記決議に対する疑義から派生した争いがあることなど判示の事情の…
事件番号: 昭和31(オ)396 / 裁判年月日: 昭和33年10月3日 / 結論: 棄却
株主九名、株式総数五、〇〇〇株の株式会社において、株主の一名である代表取締役が、単に、自己の実子である二名の株主に口頭で株主総会招集の通知をしただけで、他の六名の株主(その持株二、一〇〇株)には招集の通知を全然なさず、右親子三名だけが株式総会としての決議をしても、これにより株主総会が成立しその決議があつたものということ…
事件番号: 平成6(オ)7 / 裁判年月日: 平成9年3月27日 / 結論: 棄却
有限会社の社員がその持分を社員でない者に対して譲渡した場合において、右譲渡人以外の社員全員がこれを承認していたときは、右譲渡は、社員総会の承認がなくても、譲渡当事者以外の者に対する関係においても有効である。