一、財団法人A1会の理事評議員の解任が会長の専権事項であつても、原判示のような事実関係のもとにおいて、理事会議、評議会に諮り、十分論議をつくした上でなさるべきであるに拘わらず、特に解任しなければならないような事情もないのに、会長が軽々になした解任は権利濫用と断定できないわけではない。 二、財団法人の理事評議員の解任決議は権限の濫用である旨主張して、同人らが右法人の理事評議員の職務を行うものなることの確認を求める訴訟において、同法人の会長の権限の濫用の主張はない場合に、理事評議員の解任について専権を有する会長が(後記判示のように)なした解任は権利の濫用であると判断しても申し立てない事項について判断したことにはならない。
一、財団法人の理事評議員の解任が権利濫用であるとされた事例 二、当事者の申し立てない事項について裁判したことにあたらないとされた事例
判旨
役員の解任権が会長の専権事項とされている場合であっても、民主的運営の要請から理事会等での十分な議論を経るべきであり、解任の必要性がないのに軽々に解任することは権利の濫用に当たる。
問題の所在(論点)
団体の規約に基づき会長の専権事項とされている役員の解任権行使について、権利の濫用が成立するか。また、その判断において民主的な運営手続の履践や解任の必要性が考慮されるか。
規範
役員の解任権が特定の者の専権事項と定められている場合であっても、団体の民主的運営を確保すべき要請がある。そのため、解任に際して理事会や評議員会等のしかるべき機関において十分な論議を尽くすべき手続的要請に反し、かつ、客観的に解任の必要性が認められない場合には、当該解任権の行使は権利の濫用(民法1条3項)として無効となる。
重要事実
上告人(団体)の会長A2は、規約上、被上告人ら(役員)を解任する専権を有していた。しかし、会長は、被上告人らを特に解任しなければならないような客観的事情がないにもかかわらず、理事会や評議員会に諮って十分な論議を尽くすという民主的な運営手続を経ることなく、軽々に被上告人らを解任した。これに対し、被上告人らが解任の無効を訴えた事案である。
事件番号: 昭和34(オ)1059 / 裁判年月日: 昭和35年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人の役員選任行為が会長の専権事項である場合、その行使が解散を強行して私腹を肥やすための手段であるといった事情が証拠により認められない限り、権限の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:財団法人である本件団体において、会長であるBらが新たな理事および評議員を選任した。これに対し、反対派(上告人ら)…
あてはめ
本件において、規約上は会長の専権事項とされていたものの、団体の性質上、民主的運営のために理事会や評議員会での議論が期待されていた。それにもかかわらず、原判決の認定によれば、被上告人らを解任すべき特段の事情は存在しなかった。このような状況下で、十分な論議を尽くさずに解任権を行使したことは、専権事項であることを踏まえてもなお相当性を欠く。したがって、当該解任は権利の濫用にあたると評価される。
結論
被上告人らに対する解任は権利の濫用であり無効である。よって、上告は棄却される。
実務上の射程
社団法人や財団法人の役員解任において、形式的に解任権限が認められる場合でも、手続の相当性や実体的正当性が欠ける場合には権利濫用が認められ得ることを示した。法人の自治を尊重しつつも、専断的な人事権行使を抑制する法理として活用できる。民法上の一般原則である権利濫用の法理が、団体内部の意思決定にも適用されることを確認した点に意義がある。
事件番号: 昭和33(オ)600 / 裁判年月日: 昭和34年4月2日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】財団法人の理事長等の職務権限の不存在確認を求める訴えにおいて、仮に当該役員の選任規定が無効であっても、原告が当然に後任の役員に選任される地位にない限り、確認の利益を認めることはできない。 第1 事案の概要:財団法人D文庫の寄附行為(定款)には、理事長は「設立者累代の家督相続人」が就任する旨の規定が…
事件番号: 平成14(受)973 / 裁判年月日: 平成16年10月26日 / 結論: その他
信用金庫の理事を信用金庫法38条所定の手続によることなく解任することはできない。
事件番号: 昭和44(オ)719 / 裁判年月日: 昭和47年11月9日 / 結論: 棄却
学校法人の理事会または評議員会の決議が無効であることの確認を求める訴は、現に存する法律上の紛争の直接かつ抜本的な解決のため適切かつ必要と認められる場合には、許容されるものと解すべきである。
事件番号: 昭和38(オ)940 / 裁判年月日: 昭和41年1月28日 / 結論: 破棄自判
一 中小企業等協同組合が、中小企業等協同組合法第四一条所定の改選手続によることなく、総会または総代会の決議をもつて理事を解任することは、許されない。 二 中小企業等協同組合の理事の罷免については、民法第六五一条は準用されない。