信用金庫の理事を信用金庫法38条所定の手続によることなく解任することはできない。
信用金庫の理事を信用金庫法38条所定の手続によることなく解任することの可否
信用金庫法38条,商法257条
判旨
信用金庫の理事の解任は、信用金庫法38条所定の手続(会員による解任請求)によらなければならず、これによらない理事会発議による解任決議は法令違反として無効である。
問題の所在(論点)
信用金庫の理事の解任手続について、法38条所定の会員の解任請求による手続以外の方法(理事会発議等)による解任が可能か、法38条が解任手続を限定する強制規定であるかが問題となる。
規範
信用金庫法(以下「法」)38条は、協同組織の非営利法人としての特色に鑑み、役員の地位の安定等に配慮した特別の手続(会員による解任請求、弁明の機会の付与等)を定めている。法39条が株式会社の取締役解任に関する規定(商法257条)を準用していないのは、この38条の手続を唯一の解任手段とする趣旨である。したがって、信用金庫の理事の解任は、法38条の規定によらなければならない。
重要事実
信用金庫である被上告人の理事会は、理事である上告人の解任及び新役員選任を議題とする臨時総代会の開催を決議した。同総代会において、理事会が提出した議案に基づき、上告人を解任する旨の決議(本件決議1)がなされた。しかし、この決議は法38条所定の「総会員の5分の1以上の連署による解任請求」という手続を経ておらず、理事会発議によるものであった。
事件番号: 昭和38(オ)940 / 裁判年月日: 昭和41年1月28日 / 結論: 破棄自判
一 中小企業等協同組合が、中小企業等協同組合法第四一条所定の改選手続によることなく、総会または総代会の決議をもつて理事を解任することは、許されない。 二 中小企業等協同組合の理事の罷免については、民法第六五一条は準用されない。
あてはめ
法38条は役員解任に際し、理由の書面通知や弁明の機会の付与を要求しており、役員の地位を保護している。本件決議1は理事会が提出した議案に基づくものであり、法38条が定める厳格な手続要件を全く満たしていない。株式会社等と異なり、委任関係に基づく解任の自由を制限してまで38条の手続を設けた法の趣旨に照らせば、本件決議1は「およそ理事解任の決議の対象とはなり得ない議案」についてなされたものといえる。
結論
本件決議1は、法38条によらずになされたものであり、その内容は法令に違反するため無効である。これに伴い、後続の新理事選任決議(本件決議2)も定款所定の定数に違反する可能性があり、取消事由となり得る。
実務上の射程
信用金庫の役員解任における「手続の専属性」を明示した重要判例である。答案上は、株式会社の取締役解任(会社法339条1項)との違いとして、協同組織性の有無や準用条文の欠如を根拠に、解任の自由が否定される場面として論証に用いる。
事件番号: 昭和34(オ)1058 / 裁判年月日: 昭和35年11月24日 / 結論: 棄却
一、財団法人A1会の理事評議員の解任が会長の専権事項であつても、原判示のような事実関係のもとにおいて、理事会議、評議会に諮り、十分論議をつくした上でなさるべきであるに拘わらず、特に解任しなければならないような事情もないのに、会長が軽々になした解任は権利濫用と断定できないわけではない。 二、財団法人の理事評議員の解任決議…
事件番号: 昭和34(オ)1059 / 裁判年月日: 昭和35年11月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法人の役員選任行為が会長の専権事項である場合、その行使が解散を強行して私腹を肥やすための手段であるといった事情が証拠により認められない限り、権限の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:財団法人である本件団体において、会長であるBらが新たな理事および評議員を選任した。これに対し、反対派(上告人ら)…
事件番号: 平成29(受)84 / 裁判年月日: 平成29年12月18日 / 結論: 破棄差戻
理事長を建物の区分所有等に関する法律に定める管理者とし,役員である理事に理事長を含むものとした上,役員の選任及び解任について総会の決議を経なければならないとする一方で,理事を組合員のうちから総会で選任し,理事の互選により理事長を選任する旨の定めがある規約を有するマンション管理組合においては,理事の互選により選任された理…
事件番号: 昭和47(オ)17 / 裁判年月日: 昭和47年3月30日 / 結論: 棄却
水産業協同組合法による協同組合の総会の議決が当然に無効である場合においては、同法一二五条所定の行政庁に対する取消の手続を経ることなしに、各組合員は、直接裁判所に対し、その無効を前提として権利関係の確認を求めうるものと解すべきである。