一 中小企業等協同組合が、中小企業等協同組合法第四一条所定の改選手続によることなく、総会または総代会の決議をもつて理事を解任することは、許されない。 二 中小企業等協同組合の理事の罷免については、民法第六五一条は準用されない。
一 中小企業等協同組合は総会または総代会の決議をもつて理事を解任できるか 二 中小企業等協同組合の理事の罷免と民法第六五一条の準用の有無
中小企業等協同組合法35条,中小企業等協同組合法41条,中小企業等協同組合法42条,中小企業等協同組合法55条,商法254条,民法651条
判旨
中小企業等協同組合法の理事が「選挙」により選任される場合、その解任には同法41条所定の改選手続を要し、民法651条1項に基づく一方的な解任(罷免)や総会の決議による解任は認められない。
問題の所在(論点)
中小企業等協同組合法上の理事を、同法41条の改選手続によらず、民法651条1項(委任の解除)の準用や総会(総代会)の決議によって一方的に解任することができるか。民法651条1項の準用の成否が問題となる。
規範
中小企業等協同組合法に基づき設立された法人の理事と法人との関係は、商法・民法の規定により原則として委任に関する規定に従う。しかし、同法41条が改選手続(5分の1以上の連署、総会での弁明機会の付与等)を厳格に定めていることや、旧法での解任規定が廃止された経緯に鑑みれば、同法は理事の地位を保護する趣旨と解される。したがって、任期中の理事をその意に反して罷免するには同法41条所定の手続によることを要し、民法651条1項の規定はこの点において準用されない。
重要事実
被上告人(連合会)は、中小企業等協同組合法により設立された法人であり、上告人はその理事であった。被上告人は、理事会の発議に基づき総代会を開催し、同法41条の改選手続(組合員による改選請求)を経ることなく、総代会の決議のみによって上告人を理事から解任した。上告人は、当該解任決議が無効であるとして確認を求めた。
事件番号: 平成14(受)973 / 裁判年月日: 平成16年10月26日 / 結論: その他
信用金庫の理事を信用金庫法38条所定の手続によることなく解任することはできない。
あてはめ
本件における理事の解任は、理事会の発議に基づく総代会の決議により行われている。しかし、同法41条によれば、特定の理事を解任するには法令・定款違反等の理由が必要であり、かつ被解任者に弁明の機会を確保すべき手続が法定されている。これに対し、民法651条1項や一般の総会決議による解任を認めると、これら法的保障が潜脱され、理事の地位が著しく不安定になる。したがって、法定の改選手続によらない本件解任決議は、法が許容しない事項を目的とするものであり、無効と解される。
結論
本件解任決議は無効である。同法41条の改選手続によらず、理事会の発議と総代会決議のみで理事を解任することはできない。
実務上の射程
特別法における役員解任手続が民法の委任解除規定を排除するかという「特別法と一般法の関係」の事案で活用できる。株式会社の取締役解任(会社法339条1項)が「いつでも」可能とされている点との対比に注意が必要。
事件番号: 昭和34(オ)1058 / 裁判年月日: 昭和35年11月24日 / 結論: 棄却
一、財団法人A1会の理事評議員の解任が会長の専権事項であつても、原判示のような事実関係のもとにおいて、理事会議、評議会に諮り、十分論議をつくした上でなさるべきであるに拘わらず、特に解任しなければならないような事情もないのに、会長が軽々になした解任は権利濫用と断定できないわけではない。 二、財団法人の理事評議員の解任決議…
事件番号: 昭和41(オ)522 / 裁判年月日: 昭和42年4月20日 / 結論: 棄却
中小企業等協同組合法における組合員たる理事が組合を脱退しても、当然に理事資格を喪失するとはかぎらない。
事件番号: 昭和43(オ)550 / 裁判年月日: 昭和43年10月8日 / 結論: 棄却
一、理事の選挙を指名推選の方法によつて行なうことにつき、当初は反対意見があつても、結局その意見が維持されず、出席者中に異議がなく可決されたときは、中小企業等協同組合法第三五条第九項の「出席者中に異議がないとき」にあたる。 二、当初被指名人一人について反対意見があつても、その後撤回され、結局出席者全員の同意があつたときは…
事件番号: 昭和26(オ)128 / 裁判年月日: 昭和28年12月4日 / 結論: 棄却
一 労働組合規約に、組合員総会に諮るべき事項として、組合規約等の外委員会において必要と認むる事項と、また委員会に諮るべき事項として組合運営に関する事項等の外総会に諮るべき事項と定めている場合においても、緊急な特別の事情がある場合には、委員会に図ることなく、組合員より直接総会に議案を提出することを得るものと解すべきである…