一 宗教法人である神社の代表役員たる地位の存否の確認を求める訴えについて第三者の原告適格を肯定するには、組織上、その代表役員の任免に関与するなど代表役員の地位に影響を及ぼすべき立場にあるか、又は自らが代表役員によって任免される立場にあるなど代表役員の地位について法律上の利害関係を有していることを要する。 二 宗教法人である神社の代表役員たる地位の存否の確認を求める訴えについて、右法人の規則に、機関として代表役員及び責任役員等のほか氏子総代及びこれによって組織される総代会を置くこと、代表役員は責任役員である宮司をもって充て、宮司の進退については責任役員の具申により神社本庁統理が行うこと、代表役員以外の責任役員は氏子総代が選考することなどが定められているが、氏子については責任役員又は氏子総代に選任されることがある旨の定めがあるほかその権利義務について特段の定めがないなど判示の事実関係の下においては、責任役員及び氏子総代は右訴えの原告適格を有するが、氏子はこれを有しない。
一 宗教法人である神社の代表役員たる地位の存否の確認を求める訴えの原告適格 二 宗教法人である神社の責任役員及び氏子総代は右法人の代表役員たる地位の存否の確認を求める訴えの原告適格を有するが氏子はこれを有しないとされた事例
民訴法45条,民訴法225条,宗教法人法18条
判旨
宗教法人の代表役員の地位の存否等の確認を求める訴えにおいて、単なる氏子には原告適格が認められないが、代表役員の任免に直接関与する責任役員や、その選考に関与する氏子総代には原告適格が認められる。
問題の所在(論点)
宗教法人の代表役員の地位の存否を争う訴訟において、同法人の「氏子」であることは、原告適格を基礎づける「法律上の利害関係」を有する者に当たるか。
規範
自らの権利関係の確認ではない訴訟において原告適格が認められるためには、組織上、代表役員の任免に関与するなど代表役員の地位に影響を及ぼすべき立場にあるか、又は自らが代表役員によって任免される立場にあるなど、代表役員の地位について法律上の利害関係を有することを要する。
事件番号: 平成7(オ)823 / 裁判年月日: 平成8年6月24日 / 結論: 破棄自判
宗教法人である寺院の前住職の長男であるにすぎない甲は、右法人においては、宗教上の地位である住職の地位にある者を代表役員及び責任役員に充てることになっているが、長男の権利放棄が長男以外の者を住職に任命するための要件にはなっておらず、その他に甲が右法人の代表役員等の地位について何らかの法律上の利害関係を有する地位にあること…
重要事実
宗教法人A神社の氏子らが、同法人の代表役員の地位にないことの確認等を求めて出訴した。A神社の規則では、代表役員は責任役員である宮司が務め、責任役員は氏子総代が選考し、氏子総代は役員会が選任するとされていた。原告の中には、責任役員や氏子総代の地位にある者のほか、単なる氏子の地位に留まる者も含まれていた。
あてはめ
責任役員は代表役員の任免に直接関与し、氏子総代も責任役員の選考を通じて代表役員の地位に影響を及ぼし得る立場にあるため、法律上の利害関係が認められる。これに対し、単なる氏子は、宗教法人法上も規則上も、代表役員の任免に関与する権限を与えられておらず、また代表役員から任免される立場にもない。したがって、氏子は法人の機関ではなく、代表役員の地位について法律上の利害関係を有するとはいえない。
結論
責任役員及び氏子総代である原告については原告適格を認めるが、単なる氏子にすぎない原告については原告適格を欠くものとして、訴えを却下すべきである。
実務上の射程
確認の訴えにおける原告適格の判断枠組みとして、対象となる地位が原告の権利義務にどう影響するか、または原告がその選任権限を有するかという観点から論じる際に活用できる。宗教法人に限らず、非営利法人の内部紛争における原告適格の射程を検討する際の指標となる。
事件番号: 平成2(オ)821 / 裁判年月日: 平成2年10月29日 / 結論: 棄却
寺院の住職の選任権又は右住職となる資格を有することを主張するにすぎない者は、右住職が宗教法人の代表役員に就任するものとされている場合であっても、右代表役員の地位の不存在の確認を求める法律上の利益を有しない。
事件番号: 昭和61(オ)531 / 裁判年月日: 平成5年9月7日 / 結論: 棄却
特定の者が宗教団体の宗教活動上の地位にあることに基づいて宗教法人である当該宗教団体の代表役員の地位にあることが争われている訴訟において、その者の宗教活動上の地位の存否を審理、判断するにつき、当該宗教団体の教義ないし信仰の内容に立ち入って審理、判断することが必要不可欠である場合には、右の者の代表役員の地位の存否の確認を求…
事件番号: 昭和53(オ)701 / 裁判年月日: 昭和53年11月30日 / 結論: 棄却
宗教法人の責任役員が代表役員を互選する場合において、その責任役員が代表役員の候補者に擬せられているときでも、議決事項につき特別の利害関係を有する場合にはあたらない。