宗教法人の責任役員が代表役員を互選する場合において、その責任役員が代表役員の候補者に擬せられているときでも、議決事項につき特別の利害関係を有する場合にはあたらない。
宗教法人の責任役員が代表役員を互選する場合における当該責任役員の特別利害関係
宗教法人法18条2項,宗教法人法21条2項
判旨
宗教法人の責任役員が代表役員の選定に関与する場合、自身が候補者であっても、宗教法人法21条2項にいう「特別の利害関係」を有する者には当たらない。
問題の所在(論点)
宗教法人の代表役員を選定する議決において、責任役員が自ら候補者となっている場合、宗教法人法21条2項にいう「特別の利害関係を有する者」として、議決権の行使が制限されるか。
規範
宗教法人法21条2項(および同趣旨の法人規則)に規定される「特別の利害関係」とは、議決事項について法人と役員個人の利益が相反し、公正な議決を期待できない特殊な関係を指す。しかし、代表役員の選定(互選等)は法人の組織構成に関する内部的事項であり、責任役員が候補者となることは、法人の円滑な運営という共通の目的の範囲内にある。したがって、自己が代表役員候補に擬せられている場合であっても、当然には「特別の利害関係」を有する者には当たらない。
重要事実
宗教法人Bにおいて、責任役員らが代表役員の選定を行った。同法人の規則では、責任役員の互選または特定の資格者(浄土宗の教師)のうちから責任役員が代表役員を選定する旨が定められていた。この選定手続において、選定に関与した責任役員自身が代表役員の候補者となっていた。上告人は、このような選定は宗教法人法21条2項および法人規則が禁じる「特別の利害関係」を有する者による議決権行使にあたり、無効であると主張して争った。
あてはめ
宗教法人法18条2項および21条2項の規定に照らせば、責任役員が代表役員を互選等により選定する際、候補者となることは法人の機関構成上の予定範囲内である。本件宗教法人Bの規則16条2項(法21条2項と同趣旨)および8条(選定方法)の解釈においても、責任役員が代表役員という地位に就く候補者であるという事実は、直ちに法人との利益相反を生じさせるものではない。ゆえに、当該責任役員が議決に加わることは、公正を害する「特別の利害関係」の行使には該当せず、議決権の行使は否定されないと解される。
結論
責任役員は、自己が代表役員候補であっても、特別の利害関係人として排除されず、有効に議決権を行使できる。
実務上の射程
本判決は宗教法人法に関するものであるが、社団法人の理事選任等における「特別利害関係人」の範囲を検討する際にも参照される。役員選任という組織内部の構成に関する議決においては、選任されることによる反射的利益(役員報酬等)があるとしても、それのみでは特別利害関係には当たらないとするのが一般的な実務・判例の傾向である。
事件番号: 平成2(オ)821 / 裁判年月日: 平成2年10月29日 / 結論: 棄却
寺院の住職の選任権又は右住職となる資格を有することを主張するにすぎない者は、右住職が宗教法人の代表役員に就任するものとされている場合であっても、右代表役員の地位の不存在の確認を求める法律上の利益を有しない。
事件番号: 昭和41(オ)1171 / 裁判年月日: 昭和43年6月27日 / 結論: 棄却
財団法人の寄付行為に評議員の解任に関する規定はないが、その選任については専ら会長の職権とされていること、選任された評議員については任期の定めがされていないことなどの事情に徴すれば、会長に評議員の解任権があるものと解するのが相当である。
事件番号: 昭和52(オ)833 / 裁判年月日: 昭和53年4月14日 / 結論: 棄却
有限会社の社員総会において、その社員である特定の者を取締役に選任すべき決議をする場合に、その特定の者は、右決議につき特別の利害関係を有する者にあたらない。