事業協同組合の理事を選出する選挙の取消しを求める訴えに,同選挙が取り消されるべきものであることを理由として後任理事又は監事を選出する後行の選挙の効力を争う訴えが併合されている場合には,後行の選挙がいわゆる全員出席総会においてされたなどの特段の事情がない限り,先行の選挙の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。
事業協同組合の理事を選出する選挙の取消しを求める訴えに同選挙が取り消されるべきものであることを理由として後任理事又は監事を選出する後行の選挙の効力を争う訴えが併合されている場合における先行の選挙の取消しを求める訴えの利益
中小企業等協同組合法54条,会社法831条,民訴法第2編第1章訴え
判旨
事業協同組合の理事選任決議の取消請求中に後行の選挙が行われた場合でも、先行の選挙が取り消されるべきであることを理由に後行の選挙の効力を争う訴えが併合されているときは、特段の事情がない限り、先行の選挙の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。
問題の所在(論点)
役員選出決議の取消訴訟の継続中に、後任者を選出する決議がなされた場合、先行決議の取消しを求める訴えの利益(民事訴訟法133条1項)が消滅するか。また、取消判決の確定を条件とする後行決議の不存在確認の訴えが許容されるか。
規範
1. 理事選出の決議(先行決議)が取り消された場合、特段の事情がない限り、その理事により構成される理事会等の招集に基づき行われた後行の選挙決議にも瑕疵が生じる。 2. 形成の訴えにおいて、訴え提起後の事情の変化があっても、併合された訴えにおいて先行決議の取消しの有無が後行決議の効力の先決問題となる場合には、先行決議の取消しを求める実益があり、訴えの利益は消滅しない。 3. 後行決議の不存在確認を「先行決議の取消判決の確定」を条件として求めることは、予備的併合の趣旨に照らし適法である。
重要事実
事件番号: 平成10(オ)1183 / 裁判年月日: 平成11年3月25日 / 結論: 棄却
取締役等を選任する甲株主総会決議の不存在確認請求に、同決議が存在しないことを理由とする後任取締役等の選任に係る乙株主総会決議の不存在確認請求が併合されている場合には、後の決議がいわゆる全員出席総会において行われたなどの特段の事情のない限り、先の決議についても存否の確認の利益が認められる。
上告人は、事業協同組合である被上告人の理事選出決議(本件選挙1)及び監事選出決議(本件選挙2)の取消訴訟を提起した。訴訟継続中に理事等の任期が満了し、本件選挙1の理事が招集した総会において新たな理事・監事の選出(本件選挙3・4)が行われた。これを受け上告人は、本件選挙1が取り消されることを条件に、本件選挙3・4の不存在確認請求を追加した。原審は、任期満了と後行選挙の実施により先行決議の取消しを求める訴えの利益は消滅し、また条件付きの訴えも不適法であるとして、訴えを却下した。
あてはめ
1. 本件選挙1(先行決議)が取り消されれば、その理事らが招集した本件選挙3・4(後行決議)も、原則として無権限者による招集として瑕疵が生じる(全員出席総会等の特段の事情を除く)。 2. したがって、本件選挙1が取り消されるべきか否かは、併合された本件選挙3・4の効力の判断において不可欠な先決問題であるから、依然として取消しを求める実益がある。 3. 本件選挙2についても、本件選挙4の瑕疵が確定すれば前任監事が権利義務(中協法36条の2)を有し得るため、訴えの実益は失われない。 4. 先行決議の取消しを条件とする後行決議の不存在確認は、法律関係の安定を図る合理性があり不適法とはいえない。
結論
先行決議の取消訴訟と、その取消しを前提とする後行決議の効力を争う訴訟が併合されている場合、先行決議の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。本件各訴えを却下した原判決は破棄を免れない。
実務上の射程
会社法831条1項1号に基づく決議取消訴訟全般において、役員の任期満了や後継者の選出が生じた際、訴えの利益を維持するための指針となる。実務上は、訴えの利益消滅を防ぐため、速やかに後行決議の不存在・無効確認を併合(または追加的変更)して提起すべきである。「条件付きの訴え」の適法性を認めた点でも重要である。
事件番号: 昭和38(オ)992 / 裁判年月日: 昭和40年6月29日 / 結論: 棄却
一 新株がすでに発行された後は、新株発行無効の訴を提起しないかぎり、当該新株の発行を無効とするに由なく、新株発行に関する株主総会決議無効確認の訴は、確認の利益がない。 二 株主総会決議無効確認の訴を提起して請求棄却の確定判決を受けた者が、後の株主総会で行なわれた右決議内容再確認の決議に対し、更に無効確認の訴を提起しても…
事件番号: 昭和30(オ)198 / 裁判年月日: 昭和32年11月1日 / 結論: 棄却
漁業協同組合の総会で理事に選挙されその後辞任した者につき、過去において理事でなかつたことの確認を求める趣旨の理事選挙無効確認の訴は、確認の訴として許されない。
事件番号: 昭和33(オ)709 / 裁判年月日: 昭和36年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】取締役等を選任した株主総会決議の無効確認の訴えにおいて、当該取締役が既に退任し後任者の登記も完了している場合、過去の法律行為の効力を争う前提としての確認利益は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和29年10月の株主総会においてDおよびEを取締役・代表取締役に選任した決議の無効確認を求めた…