取締役等を選任する甲株主総会決議の不存在確認請求に、同決議が存在しないことを理由とする後任取締役等の選任に係る乙株主総会決議の不存在確認請求が併合されている場合には、後の決議がいわゆる全員出席総会において行われたなどの特段の事情のない限り、先の決議についても存否の確認の利益が認められる。
取締役等を選任する甲株主総会決議の不存在確認請求に同決議が存在しないことを理由とする後任取締役等の選任に係る乙株主総会決議の不存在確認請求が併合されている場合における先の決議の存否確認の利益
商法252条,民訴法134条
判旨
役員選任決議の不存在確認の訴えにおいて、既に後行決議で新たな役員が選任された場合でも、先行決議の瑕疵が後行決議の効力に影響を及ぼす先決関係にあり、両訴訟が併合されているときは、先行決議の不存在確認についても訴えの利益が認められる。
問題の所在(論点)
後行の役員選任決議がなされた場合において、その後行決議の有効性が先行決議の存否を前提とする(先決関係にある)とき、先行決議の不存在確認を求める訴えの利益(会社法830条1項、民訴法134条)が認められるか。
規範
1. 取締役等を選任する株主総会決議の不存在確認訴訟の係属中に、後行決議で新たに役員が選任されたときは、特段の事情のない限り、先行決議の不存在確認を求める訴えの利益は消滅する。 2. もっとも、先行決議で選任された取締役らによる取締役会の招集決定に基づき、後行決議がなされた場合、先行決議の不存在という瑕疵は後行決議の存否に影響を及ぼす(先決関係)。 3. このような関係にある先行決議と後行決議の不存在確認の訴えが併合されているときは、先行決議の存否の判断に既判力を及ぼして紛争の根源を絶つ必要があるため、先行決議についても当然に訴えの利益が認められる。
重要事実
事件番号: 平成31(受)558 / 裁判年月日: 令和2年9月3日 / 結論: 破棄差戻
事業協同組合の理事を選出する選挙の取消しを求める訴えに,同選挙が取り消されるべきものであることを理由として後任理事又は監事を選出する後行の選挙の効力を争う訴えが併合されている場合には,後行の選挙がいわゆる全員出席総会においてされたなどの特段の事情がない限り,先行の選挙の取消しを求める訴えの利益は消滅しない。
上告人は被上告会社の株主であり、昭和59年の株主総会(第一決議)以降、数回にわたり取締役・監査役を選任する決議(第四・第五・第八・第九決議等)が行われた。上告人は、これらの各決議の不存在確認を求めて提訴した。原審は、先行する第一、第四、第五、第八決議について、その後に第九決議で新たな役員が選任されたことを理由に、訴えの利益が失われたとして却下した。これに対し上告人が、先行決議の瑕疵が後行決議の有効性に影響するため訴えの利益が存続すると主張して上告した事案である。
あてはめ
本件において、第一、第四、第五、第八決議により選任された取締役らが構成する取締役会の招集に基づき、後の第九決議がなされている。この場合、先行決議に不存在の瑕疵があれば、原則として召集権限のない者による招集として第九決議も法律上存在しないこととなるため、先行決議の存否は後行決議の存否を決するための先決問題となる。そして、本件では先行・後行の両決議の不存在確認の訴えが併合されている以上、先行決議の存否を確定させて既判力を生じさせることが、紛争の根本的解決に資するといえる。したがって、先行決議についての確認の利益は消滅していないと解される。
結論
先行決議の瑕疵が後行決議の効力に影響を及ぼす先決関係にあり、かつ両訴訟が併合されている場合には、先行決議の不存在確認を求める訴えの利益は認められる。
実務上の射程
役員選任決議の連鎖において、いわゆる「芋づる式」に決議が無効・不存在となる場合の訴えの利益を肯定した射程の広い判例である。答案上は、まず後行決議により訴えの利益が消滅するという原則を述べた上で、本判決の「先決関係」と「訴えの併合」という要件を指摘し、紛争の抜本的解決の必要性から訴えの利益を肯定する論法を用いる。
事件番号: 平成1(オ)605 / 裁判年月日: 平成4年10月29日 / 結論: 棄却
役員退職慰労金贈呈の株主総会決議取消しの訴えの係属中、右決議と同一の内容を持ち、右決議の取消判決が確定した場合にはさかのぼって効力を生ずるものとされている決議が有効に成立し、それが確定したときは、特別の事情がない限り、右決議取消しの訴えの利益は、失われる。
事件番号: 平成20(受)951 / 裁判年月日: 平成21年4月17日 / 結論: 破棄差戻
株式会社の取締役又は監査役の解任又は選任を内容とする株主総会決議不存在確認の訴えの係属中に当該株式会社が破産手続開始の決定を受けても,上記訴訟についての訴えの利益は当然には消滅しない。
事件番号: 昭和33(オ)709 / 裁判年月日: 昭和36年6月16日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】取締役等を選任した株主総会決議の無効確認の訴えにおいて、当該取締役が既に退任し後任者の登記も完了している場合、過去の法律行為の効力を争う前提としての確認利益は認められない。 第1 事案の概要:上告人は、昭和29年10月の株主総会においてDおよびEを取締役・代表取締役に選任した決議の無効確認を求めた…
事件番号: 昭和33(オ)1061 / 裁判年月日: 昭和36年12月14日 / 結論: 棄却
昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二〇四条第一項但書に基き、株式会社の定款中に存する「取締役会の承諾なくしては株式を譲渡することを得ない」旨の規定は、会社の清算手続中はその効力を停止されるものと解すべきである。