株式会社の取締役又は監査役の解任又は選任を内容とする株主総会決議不存在確認の訴えの係属中に当該株式会社が破産手続開始の決定を受けても,上記訴訟についての訴えの利益は当然には消滅しない。
株式会社の取締役等の解任又は選任を内容とする株主総会決議不存在確認の訴えの係属中に当該株式会社が破産手続開始の決定を受けた場合における訴えの利益の消長
会社法830条,破産法30条,民法653条,民訴法第2編第1章訴え
判旨
株式会社が破産手続開始の決定を受けても、会社組織に係る行為等については取締役らの権限が存続するため、役員の選任・解任を目的とする株主総会決議の不存在確認の訴えの利益は当然には消滅しない。
問題の所在(論点)
会社が破産手続開始の決定を受けた場合、会社と取締役・監査役との委任関係が当然に終了するか(民法653条の適用の有無)。それに伴い、役員選任・解任決議の不存在確認の訴えについて訴えの利益が消滅するか。
規範
民法653条は委任者の破産を委任終了事由とするが、これは財産管理処分権限の喪失に伴う趣旨である。会社が破産しても、破産財団と無関係な役員の選任・解任等の会社組織に係る行為は破産者が自ら行い得るため、会社と役員との委任関係は直ちには終了せず、役員は地位を当然には失わない。したがって、これら決議の存否を争う訴えの利益は、破産手続開始後も当然には消滅しない。
重要事実
株式会社の株主兼取締役であった上告人らが、自身らを解任し新たな役員を選任した株主総会決議および代表取締役選任決議の不存在確認を求めて提訴した。第1審係属中に会社が破産手続開始決定を受けたため、原審は、破産により全ての取締役が委任関係の終了により地位を喪失し、旧取締役が地位を回復する余地もないとして、訴えの利益を否定し訴えを却下した。
事件番号: 平成10(オ)1183 / 裁判年月日: 平成11年3月25日 / 結論: 棄却
取締役等を選任する甲株主総会決議の不存在確認請求に、同決議が存在しないことを理由とする後任取締役等の選任に係る乙株主総会決議の不存在確認請求が併合されている場合には、後の決議がいわゆる全員出席総会において行われたなどの特段の事情のない限り、先の決議についても存否の確認の利益が認められる。
あてはめ
民法653条の趣旨は財産的行為の不能にあるが、役員の選任・解任は破産財団の管理処分権限と無関係な組織的行為であり、破産管財人の権限外で会社が自ら行える。本件株主総会決議等により選任された役員や解任されたとされる上告人らは、破産後も組織的行為に関しては権限を行使し得る地位にあり、決議の効力を確定させる法的利益が存続しているといえる。
結論
会社が破産手続開始の決定を受けても、取締役等の地位を当然には喪失しないため、株主総会決議不存在確認の訴えの利益は消滅しない。原判決を破棄し、差し戻す。
実務上の射程
会社が破産した場合の取締役の地位の存否に関する重要判例。財産管理の面では破産管財人に権限が移るものの、社員総会の開催や役員選任といった組織法上の事項については、依然として旧来の機関が権限を保持することを明確にした点に実務上の意義がある。
事件番号: 昭和33(オ)1061 / 裁判年月日: 昭和36年12月14日 / 結論: 棄却
昭和二五年法律第一六七号による改正前の商法第二〇四条第一項但書に基き、株式会社の定款中に存する「取締役会の承諾なくしては株式を譲渡することを得ない」旨の規定は、会社の清算手続中はその効力を停止されるものと解すべきである。
事件番号: 昭和24(オ)347 / 裁判年月日: 昭和25年6月13日 / 結論: 棄却
解任された取締役につきなされた辞任の登記は、取締役たる資格消滅という身分変動については、結局真実に合致しているから、登記としてその効力を有する。