1 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合において,不法行為に基づく損害賠償制度の目的及び理念に照らして相当と認められるときは,同逸失利益は,定期金による賠償の対象となる。 2 交通事故に起因する後遺障害による逸失利益につき定期金による賠償を命ずるに当たっては,事故の時点で,被害者が死亡する原因となる具体的事由が存在し,近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り,就労可能期間の終期より前の被害者の死亡時を定期金による賠償の終期とすることを要しない。 3 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合において,同人が事故当時4歳の幼児で,高次脳機能障害という後遺障害のため労働能力を全部喪失し,同逸失利益の現実化が将来の長期間にわたるなど判示の事情の下では,同逸失利益は,定期金による賠償の対象となる。 (1,2につき補足意見がある。)
1 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合に,同逸失利益は定期金による賠償の対象となるか 2 交通事故に起因する後遺障害による逸失利益につき定期金による賠償を命ずるに当たり被害者の死亡時を定期金による賠償の終期とすることの要否 3 交通事故の被害者が後遺障害による逸失利益について定期金による賠償を求めている場合に,同逸失利益が定期金による賠償の対象となるとされた事例
(1~3につき)民法417条,民法709条,民法722条1項,民訴法117条 (2につき)民法416条
判旨
交通事故による後遺障害の逸失利益について、損害賠償制度の目的と理念に照らして相当と認められる場合には、定期金賠償が認められる。また、その終期を定めるにあたっては、事故時に近い将来の死亡が客観的に予測されるなどの特段の事情がない限り、就労可能期間の終期より前の死亡時を終期とする必要はない。
問題の所在(論点)
不法行為に基づく後遺障害逸失利益の賠償について、定期金による支払を命じることができるか。また、その場合に「被害者の生存」を定期金支払の条件(終期)とすべきか。
規範
1. 交通事故による後遺障害逸失利益について、被害者が定期金賠償を求めている場合、損害賠償制度の目的(被害回復)及び理念(公平な分担)に照らして相当と認められるときは、定期金賠償の対象となる。 2. 定期金賠償を命ずる際、事故時点で近い将来の死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、就労可能期間の終期より前の被害者の死亡時を定期金賠償の終期とすることを要しない。
重要事実
4歳の幼児であった被上告人は、大型貨物自動車に衝突される事故に遭い、高次脳機能障害(自賠法施行令別表第2第3級3号)の後遺障害を負い、労働能力を全部喪失した。被上告人は、就労可能期間(18歳から67歳)の逸失利益について、各月に定期金で支払うことを求めて訴えを提起した。これに対し上告人側は、逸失利益は不法行為時に一括発生しており、定期金賠償を認めるべきではない、また死亡時を終期とすべきであると主張して争った。
あてはめ
1. 逸失利益は将来にわたり逐次現実化する性質を有し、将来の事情変更により算定基礎とかい離が生じ得る。民訴法117条が定期金賠償判決の変更を認めている趣旨は、実態に即した賠償の実現にある。本件被害者は4歳と若く、将来の長期間にわたり損害が現実化するため、定期金賠償を認めることは相当である。 2. 一時金賠償の場合、事故後の死亡は原則として考慮されない(判例)。定期金賠償も一時金と同一の損害を対象とする以上、同様に解すべきであり、事故後の死亡により加害者が免責されることは衡平に反する。したがって、特段の事情がない限り死亡時を終期とする必要はない。
結論
後遺障害逸失利益について定期金による賠償を命じることができる。また、特段の事情がない限り、就労可能期間の終期より前の死亡時を賠償の終期とする必要はない。
実務上の射程
被害者が定期金賠償を選択した場合の許容性を認めた重要判例。答案では、将来の事情変更(症状の改善や悪化)が予想される事案や、本件のように被害者が若年で計算の不確実性が高い事案において、民訴法117条の存在を根拠に本規範を定立する。また、中間利息控除がなされない点など、被害者側のメリットも意識して論証する。
事件番号: 平成29(受)659 / 裁判年月日: 平成30年9月27日 / 結論: その他
1 交通事故の被害者が労働者災害補償保険法に基づく給付を受けてもなお塡補されない損害について自賠法16条1項に基づく請求権を行使する場合は,他方で労働者災害補償保険法12条の4第1項により国に移転した上記請求権が行使され,被害者の上記請求権の額と国に移転した上記請求権の額の合計額が自動車損害賠償責任保険の保険金額を超え…