高齢者の医療の確保に関する法律による後期高齢者医療給付を行った後期高齢者医療広域連合は,その給付事由が第三者の不法行為によって生じた場合,当該第三者に対し,当該後期高齢者医療給付により代位取得した当該不法行為に基づく損害賠償請求権に係る債務について,当該後期高齢者医療給付が行われた日の翌日からの遅延損害金の支払を求めることができる。 (意見がある。)
高齢者の医療の確保に関する法律による後期高齢者医療給付を行った後期高齢者医療広域連合が当該後期高齢者医療給付により代位取得した不法行為に基づく損害賠償請求権に係る債務についての遅延損害金の起算日
高齢者の医療の確保に関する法律58条,民法412条,民法709条
判旨
後期高齢者医療広域連合が後期高齢者医療給付を行った場合、法58条に基づき代位取得した不法行為に基づく損害賠償請求権に係る債務について、加害者に対し、当該医療給付が行われた日の翌日からの遅延損害金の支払を請求できる。
問題の所在(論点)
後期高齢者医療給付を行った保険者が、法58条により代位取得した損害賠償請求権を行使する場合において、加害者に対して請求できる遅延損害金の起算点はいつか。事故時か、給付時か、あるいは催告時か。
規範
1. 不法行為に基づく損害賠償債務は、損害発生と同時に何ら催告を要せず遅滞に陥る。2. 後期高齢者医療給付が行われたときは、法58条により、その価額の限度で被保険者の加害者に対する損害賠償請求権が当然に保険者に移転する。3. ただし、同給付は被害者の損害元本を補填するものであり、損害元本に対する遅延損害金を補填するものではないため、保険者が代位取得するのは損害金元本の支払請求権に限られる。
重要事実
被害者Bは、被上告人の運転する自動車に衝突され傷害を負った(本件事故)。上告人(広域連合)は、Bに対し後期高齢者医療給付を行い、その価額から過失相殺等を経た額の支払を加害者に求めた。上告人は、遅延損害金の起算日を「本件事故の日」と主張したが、原審は「訴状送達の日の翌日」であると判断したため、上告人が上告した。
あてはめ
後期高齢者医療給付が行われると、その給付の都度、対応する損害賠償請求権が保険者に移転する。このとき、保険者が取得するのは「元本」部分に限られるため、事故時から給付時までの間に発生していた遅延損害金債権まで取得するわけではない。しかし、移転した元本債権自体は不法行為に基づく債権としての性質を維持している。したがって、給付によって債権が保険者に移転した後は、当該元本について遅滞の責任が生じる。具体的には、給付が行われたことによって代位の効力が生じた「当該給付が行われた日の翌日」から、遅延損害金が発生すると解するのが相当である。
結論
上告人は、本件医療給付が行われた日の翌日からの遅延損害金の支払を求めることができる。原審の判断には法令の違反があるため、給付日等の審理を尽くさせるべく、当該部分を破棄し差し戻す。
実務上の射程
保険代位が生じる場面(健康保険、介護保険等)において、保険者が取得できる遅延損害金の範囲を確定させた。被害者の損害を二重に補填することを防ぎつつ、保険者の代位取得後の遅延損害金を認めることで公平な負担を図る実務上の指針となる。
事件番号: 平成20(受)494 / 裁判年月日: 平成22年9月13日 / 結論: その他
1 被害者が,不法行為によって傷害を受け,その後に後遺障害が残った場合において,労働者災害補償保険法に基づく保険給付や公的年金制度に基づく年金給付を受けたときは,これらの各社会保険給付については,これらによるてん補の対象となる特定の損害と同性質であり,かつ,相互補完性を有する損害の元本との間で,損益相殺的な調整を行うべ…