不法行為により死亡した者が生存していたならば将来受給し得たであろう遺族厚生年金は、不法行為による損害としての逸失利益に当たらない。
不法行為により死亡した者が生存していたならば将来受給し得たであろう遺族厚生年金の逸失利益性
厚生年金保険法58条,厚生年金保険法63条1項1号,民法709条
判旨
不法行為により死亡した被害者が将来受給し得たであろう遺族厚生年金及び遺族共済年金は、受給権者自身の生計維持を目的とする社会保障的性格の強い給付であり、逸失利益には当たらない。
問題の所在(論点)
他人の不法行為により死亡した者が、将来受給し得たであろう「遺族厚生年金」及びこれに類する「遺族年金」は、民法709条に基づく不法行為の損害賠償における逸失利益に当たるか。
規範
将来受給すべき年金が不法行為に基づく逸失利益に当たるか否かは、当該年金給付の目的、性格、および受給権の存続の確実性を考慮して判断すべきである。給付が専ら受給権者自身の生計維持を目的とし、保険料との牽連性が間接的で社会保障的性格が強く、かつ婚姻等の本人の意思に左右される事由で受給権が消滅する不確実なものである場合には、当該年金は逸失利益に含まれない。
重要事実
交通事故により死亡した被害者の相続人(上告人)が、加害者(被上告人)に対し、被害者が生存していれば平均余命期間中に受給できたはずの「遺族厚生年金」及び「市議会議員共済会の共済給付金としての遺族年金」の現在額を、被害者の逸失利益として損害賠償請求した事案。
あてはめ
遺族厚生年金は、受給権者が死亡当時生計を維持していた者に限られ、婚姻等により受給権が消滅することから、専ら受給権者自身の生計維持を目的とした給付である。また、受給権者自身が保険料を拠出しておらず、社会保障的性格が強い。さらに、婚姻等の本人意思による事由で失権するため、存続が確実とはいえない。市議会議員共済会の遺族年金も同様の性質を有する。したがって、これらの年金は被害者の財産的利得(逸失利益)と評価するに適さない。
結論
被害者が生存していれば将来受給し得たであろう遺族厚生年金及び遺族共済年金は、不法行為による損害としての逸失利益には当たらない。
実務上の射程
被害者が「受領する側」であった遺族年金の逸失利益性を否定した判例である。老齢年金や障害年金が原則として逸失利益性を認められる(最判昭43.11.1等)のと対比して押さえるべきであり、答案上は年金の種類に応じた性質決定(拠出制か、個人の属性に専属するか等)が重要となる。
事件番号: 平成9(オ)434 / 裁判年月日: 平成11年10月22日 / 結論: その他
一 障害基礎年金及び障害厚生年金の受給権者が不法行為により死亡した場合には、その相続人は、加害者に対し、被害者の得べかりし右各障害年金額を逸失利益として請求することができる。 二 障害基礎年金及び障害厚生年金についてそれぞれ加給分を受給している者が不法行為により死亡した場合には、その相続人は、加害者に対し、被害者の得べ…