不法行為により死亡した者の得べかりし普通恩給の受給利益喪失の損害賠償債権を相続した者が、当該被害者の死亡により、扶助料の受給権を取得した場合には、当該相続人が請求することができる損害賠償額は、扶助料額の限度において減縮すべきものと解するのが相当である。
不法行為により死亡した者の得べかりし普通恩給の受給利益喪失の損害賠償債権を相続した者が当該被害者の死亡により扶助料の受給権を取得した場合と扶助料額の限度における損害賠償額の減縮の適否
民法709条
判旨
不法行為により死亡した被害者の遺族が相続した損害賠償債権のうち、被害者が生存していれば取得したであろう恩給の逸失利益については、同一の目的・機能を有する扶助料の額の限度で当然に減縮される。
問題の所在(論点)
被害者の死亡によって相続人が取得した「恩給受給利益の逸失利益」に係る損害賠償請求権から、相続人が別途受給した「遺族扶助料」を損益相殺(ないし実質的な損害の減縮)として控除できるか。
規範
不法行為の損害賠償額の算定において、被害者の死亡により生じた財産的損害(恩給受給利益の喪失)と、その死亡を原因として遺族が受給する給付(扶助料)が、いずれも遺族に対する損失補償ないし生活保障という同一の目的・機能を有する場合には、衡平の理念に基づき、二重取りを避けるため、損害賠償額から当該給付額を控除すべきである。
重要事実
公務員であったDが他人の不法行為により死亡した。Dの相続人である上告人Aは、Dが生存していれば取得したであろう恩給の受給利益(7万3053円)を含む財産的損害賠償債権を相続により取得した。一方で、AはDの死亡に伴い、遺族としての扶助料の支給を受ける権利を取得し、実際に同額(7万3053円)を受領した。この扶助料の額を損害賠償額から控除できるかが争点となった。
あてはめ
まず、普通恩給は本人および家族の生活保障を目的とし、遺族扶助料も遺族の生活保障を目的とするものであって、両者は目的・機能を共通にする。次に、被害者の死亡により相続人が承継した損害賠償債権の中には、恩給受給利益の喪失分が含まれている。この場合に、相続人が同一の目的を持つ扶助料を受給したときは、二重取りを許す不合理を避け、不法行為法上の衡平の理念を実現する必要がある。したがって、損害賠償債権のうち恩給相当額については、扶助料の額の限度において当然に減縮されるべきである。本件では、逸失利益の額と扶助料の額が同額であるため、当該部分は全額控除されることとなる。
結論
上告人Aが請求できる財産的損害賠償額の算定にあたり、恩給受給利益に関する部分は、受領した扶助料額の限度で減縮される。
実務上の射程
公的年金や恩給などの給付が損益相殺の対象となるかを判断する際のリーディングケースである。答案上は、給付の性質が損害の填補(生活保障等)と同一目的であるかを検討し、「衡平の理念」を根拠に控除を肯定する文脈で使用する。なお、本判決は慰謝料算定において加害者の資産状態を斟酌することも肯定している。
事件番号: 昭和48(オ)813 / 裁判年月日: 昭和50年10月21日 / 結論: 棄却
地方公務員等共済組合法に基づく退職年金は、当該公務員本人及びその収入に依存する家族に対する生活保障のみならず損失補償の性格を有する。
事件番号: 昭和47(オ)645 / 裁判年月日: 昭和50年10月24日 / 結論: その他
不法行為により死亡した国家公務員の給与、国家公務員等退職手当法による退職手当、国家公務員共済組合法による退職給付の受給利益喪失による損害賠償債権を相続した者が、右公務員の死亡により遺族に給付される国家公務員等退職手当法による退職手当、国家公務員共済組合法による遺族年金、国家公務員災害補償法による遺族補償金の受給権者でな…