不法行為により死亡した者の得べかりし普通恩給の受給利益喪失に基づく損害賠償債権は、相続の対象となる。
不法行為により死亡した者の得べかりし普通恩給の受給利益喪失に基づく損害賠償債権は相続の対象となるか
恩給法9条1項1号,民法896条
判旨
他人の不法行為により死亡した者が将来受領できたはずの普通恩給は、本人の生活保障のみならず家族の生計維持の機能も有するため、その逸失利益は相続人が相続により取得することができる。
問題の所在(論点)
他人の不法行為により死亡した者の「得べかりし普通恩給」は、不法行為に基づく損害賠償請求における逸失利益として、相続人が承継し得るか。
規範
公務員であった者が支給を受ける普通恩給は、受給権者本人の損失補償・生活保障を目的とするだけでなく、その収入に生計を依存する家族に対しても同様の機能を営むものである。したがって、不法行為により死亡した者が将来得られたはずの普通恩給は、逸失利益として相続人が相続により取得できると解するのが相当である。
重要事実
公務員であった亡Dは、他人の不法行為によって死亡した。Dは生存していれば普通恩給を受給できる権利を有していたが、死亡によりその受給権を喪失した。Dの相続人である上告人らは、当該恩給受給権喪失による損害(逸失利益)の賠償を求めて提訴したが、原審は恩給受給権喪失による損害そのものを認めなかった。
あてはめ
普通恩給は本人のみならず家族の生計を支える性質を持つため、死亡によって失われた恩給額は損害として認められるべきである。本件原審は恩給受給権喪失による損害を否定した点で解釈を誤っている。しかし、原審は逸失利益の算定過程で、恩給が生活費に充てられることを前提に生活費控除率を2割と低く算定しており、恩給喪失の事情は実質的に斟酌されている。そのため、原審の法令解釈の誤りは結論に影響を及ぼさない。
結論
他人の不法行為により死亡した者の得べかりし普通恩給は、逸失利益として相続人が相続により取得する。本件では原審の判断枠組みに誤りがあるが、算定結果において実質的に斟酌されているため、上告は棄却される。
実務上の射程
死亡逸失利益における「収入」の範囲に関する重要判例である。答案上では、逸失利益の算定において給与所得だけでなく恩給や年金(老齢年金等)も含まれることを根拠付ける際に、本判決の「本人および家族の生活保障」という趣旨を引用して論じる。ただし、実務上は生活費控除との重複評価に注意が必要である。
事件番号: 平成11(受)1390 / 裁判年月日: 平成12年11月14日 / 結論: その他
不法行為により死亡した者が生存していたならば将来受給し得たであろういわゆる軍人恩給としての扶助料は、不法行為による損害としての逸失利益に当たらない。
事件番号: 昭和47(オ)645 / 裁判年月日: 昭和50年10月24日 / 結論: その他
不法行為により死亡した国家公務員の給与、国家公務員等退職手当法による退職手当、国家公務員共済組合法による退職給付の受給利益喪失による損害賠償債権を相続した者が、右公務員の死亡により遺族に給付される国家公務員等退職手当法による退職手当、国家公務員共済組合法による遺族年金、国家公務員災害補償法による遺族補償金の受給権者でな…