不法行為により死亡した者が生存していたならば将来受給し得たであろういわゆる軍人恩給としての扶助料は、不法行為による損害としての逸失利益に当たらない。
不法行為により死亡した者が生存していたならば将来受給し得たであろういわゆる軍人恩給としての扶助料の逸失利益性
恩給法の一部を改正する法律(昭和28年法律第155号)附則10条,恩給法9条1項1号,民法709条
判旨
交通事故による被害者の死亡に関し、軍人恩給としての扶助料および将来の法改正を前提とする特別給付金は、いずれも不法行為に基づく逸失利益には当たらない。
問題の所在(論点)
被害者が受給していた軍人恩給(扶助料)および、将来支給される可能性があった特別給付金は、民法709条(自動車損害賠償保障法3条)に基づく死亡逸失利益に含まれるか。
規範
不法行為による死亡に伴う逸失利益とは、事故がなければ将来確実に取得できたと認められる経済的利益を指す。軍人恩給(扶助料)は、受給権者本人の生計維持を目的とした社会保障的性格の強い給付であり、かつ受給権者の婚姻等により消滅し得る不安定な権利であるため、逸失利益に当たらない。また、将来の特別給付金は、現行法上に支給規定がなく、新たな法改正がなければ受給権が発生しないため、確実な利益とは認められない。
重要事実
被害者F(当時76歳)は、上告人が運転する自動二輪車との衝突事故により死亡した。Fは、戦死した夫の遺族として公務扶助料(軍人恩給)を受給していたほか、戦没者等の妻に対する特別給付金法に基づき交付された国債の償還を受けていた。Fの相続人である被上告人らは、Fが生存していれば平均余命期間中に受給できたはずの扶助料および将来新たに交付されると見込まれる特別給付金(国債)について、逸失利益として損害賠償を請求した。
あてはめ
扶助料については、その支給要件が成人子の場合は重度障害を要すること、婚姻や養子縁組により権利が消滅することから、専ら受給権者自身の生存中の生活安定を目的とする一代限りの給付であるといえる。したがって、その本質は社会保障的給付であり、不法行為によって失われた財産的利益としての逸失利益には当たらない。また、特別給付金については、過去数回にわたり法改正で支給されてきた経緯はあるものの、現行法上に将来の支給規定はなく、法改正を前提とした期待利益は法的保護に値する確実な利益とは解されない。
結論
扶助料および将来の特別給付金はいずれも逸失利益に当たらないため、これらを損害額に算入した原判決は破棄され、当該金額を控除した範囲で請求が認容された。
実務上の射程
死亡逸失利益の算定において、各種公的年金や給付金の「逸失利益性」を判断する際の基準となる。老齢年金等は逸失利益性が認められる一方で、恩給法上の扶助料のように「一身専属性」や「社会保障的性格」が強く、個人の意思で消滅し得る給付については否定されるという区別を論じる際に用いる。
事件番号: 平成9(オ)434 / 裁判年月日: 平成11年10月22日 / 結論: その他
一 障害基礎年金及び障害厚生年金の受給権者が不法行為により死亡した場合には、その相続人は、加害者に対し、被害者の得べかりし右各障害年金額を逸失利益として請求することができる。 二 障害基礎年金及び障害厚生年金についてそれぞれ加給分を受給している者が不法行為により死亡した場合には、その相続人は、加害者に対し、被害者の得べ…