地方公務員等共済組合法に基づく退職年金は、当該公務員本人及びその収入に依存する家族に対する生活保障のみならず損失補償の性格を有する。
地方公務員等共済組合法に基づく退職年金の性格
地方公務員等共済組合法78条
判旨
地方公務員等共済組合法に基づく退職年金は生活保障および損失補償の性格を有するため、受給権者が死亡した場合、その逸失利益性は認められる。また、相続人が遺族年金を受給する場合には、重複受給による不当な利得を避けるため、損害賠償額から遺族年金額を控除すべきである。
問題の所在(論点)
不法行為に基づく損害賠償請求において、(1)被害者が将来受領すべきであった退職年金は逸失利益に含まれるか、(2)退職年金の逸失利益を認める場合、相続人が受領する遺族年金を控除(損益相殺)すべきか。
規範
退職年金は、受給権者本人およびその扶養家族に対する生活保障のみならず、長年の勤務に対する損失補償としての性格を有する。そのため、不法行為により受給権を喪失した場合は逸失利益として認められるが、同一の事由により遺族年金が支給される場合には、損害の二重取り(利得)を防止するため、逸失利益の算定において損益相殺として遺族年金の現在額を控除すべきである。
重要事実
地方公務員であったDが死亡したことに対し、その相続人である被上告人らが、Dが生存していれば将来受給できたはずの退職年金について、逸失利益として損害賠償を請求した。一方で、相続人の一人であるBは、Dの死亡に伴い遺族年金を受給することとなった。このため、退職年金の逸失利益性の有無、および遺族年金との損益相殺の可否が争われた。
あてはめ
退職年金は普通恩給と同様に生活保障・損失補償の機能を持つため、生存していれば得られた利益として逸失利益性が認められる。もっとも、相続人Bが受領する遺族年金は、Dの平均余命期間内において退職年金の逸失利益とその対象が重複する。これを考慮せずに全額の賠償を認めれば、Bは退職年金の相続分と遺族年金を二重に得ることになり、不当な利得が生じる。したがって、Dの平均余命年数を基準に算出した遺族年金の現在額を控除するのが相当である。
結論
退職年金は逸失利益として認められる。また、相続人が遺族年金を受給する場合には、不当な利得を避けるため、退職年金の逸失利益から遺族年金相当額を控除すべきである。
実務上の射程
年金受給者や受給待機者が死亡した場合の損害賠償算定におけるリーディングケースである。答案上は、まず退職年金の法的性質から逸失利益性を認め、次に「同一の事由により利益を得た場合」として損益相殺の議論を展開する際に活用する。特に遺族年金との調整が必要な場面で、実質的な公平の観点から控除を肯定する根拠となる。
事件番号: 平成11(受)257 / 裁判年月日: 平成12年11月14日 / 結論: 棄却
不法行為により死亡した者が生存していたならば将来受給し得たであろう遺族厚生年金は、不法行為による損害としての逸失利益に当たらない。
事件番号: 昭和47(オ)645 / 裁判年月日: 昭和50年10月24日 / 結論: その他
不法行為により死亡した国家公務員の給与、国家公務員等退職手当法による退職手当、国家公務員共済組合法による退職給付の受給利益喪失による損害賠償債権を相続した者が、右公務員の死亡により遺族に給付される国家公務員等退職手当法による退職手当、国家公務員共済組合法による遺族年金、国家公務員災害補償法による遺族補償金の受給権者でな…