強制執行の申立てをした債権者が,当該強制執行における債務者に対する不法行為に基づく損害賠償請求において,当該強制執行に要した費用のうち民事訴訟費用等に関する法律2条各号に掲げられた費目のものを損害として主張することは許されない。 (補足意見がある。)
強制執行の申立てをした債権者が債務者に対する不法行為に基づく損害賠償請求において当該強制執行に要した費用のうち民事訴訟費用等に関する法律2条各号に掲げられた費目のものを損害として主張することの許否
民事執行法42条,民事訴訟費用等に関する法律2条,民法709条
判旨
強制執行に要した費用のうち民事訴訟費用等に関する法律2条各号に掲げられた費目のものは、専ら費用額確定処分を経て取り立てるべきであり、これを別途の不法行為に基づく損害賠償請求において損害として主張することはできない。
問題の所在(論点)
強制執行の申立てをした債権者が、当該強制執行に要した費用のうち民事訴訟費用等に関する法律2条各号に掲げられた費目のものを、債務者に対する不法行為に基づく損害として主張し、損害賠償請求を行うことができるか。
規範
民事訴訟費用等に関する法律2条が費目および額を法定しているのは、当事者の予測可能性の確保と費用確定の容易化を図り、簡易迅速な取立てを可能にすることで、適正な司法制度の維持と公平かつ円滑な利用という公益目的を達成する趣旨である。したがって、同条各号に掲げられた費目の費用については、民事執行法42条2項による取立て、または専ら費用額確定処分(同条4項等)を経て取り立てることが予定されており、これを別途の不法行為に基づく損害賠償請求において損害として主張することは、上記制度の趣旨を損なうため許されない。
重要事実
債権者である被上告人は、建物の明渡しを命ずる仮執行宣言付判決に基づき、執行費用161万3244円を支出して強制執行を完了させた。その後、被上告人は債務者である上告人らに対し、上記執行費用および弁護士費用相当額の合計177万4568円を、上告人らによる建物占有に係る共同不法行為に基づく損害であるとして、その連帯支払を求めて提訴した。
あてはめ
本件で被上告人が損害として主張する執行費用は、費用法2条各号に掲げられた費目に該当する。このような費用については、民事執行法が定める費用額確定処分等の簡便な手続によって回収されるべきものであり、実体法上の損害賠償請求の対象とすることはできない。被上告人は、執行手続内での取立てや費用額確定処分を経ることなく、不法行為を理由としてこれらの費用の賠償を求めているが、これは法が定めた費用の回収スキームに反するものである。
結論
強制執行に要した費用法2条所定の費目を、不法行為に基づく損害賠償請求において損害として主張することは許されない。したがって、被上告人の請求は理由がなく、棄却されるべきである。
実務上の射程
執行費用や訴訟費用の回収について、法が簡易迅速な特別手続(費用額確定手続等)を用意している場合には、その手続の公益的性格に鑑み、別途の不法行為請求による回収を認めないという排他的な効力を認めた。答案上、訴訟費用等の償還を実体法上の請求で構成しようとする場面での制限として引用すべき判例である。
事件番号: 昭和26(オ)407 / 裁判年月日: 昭和28年4月17日 / 結論: 棄却
物品購入を委託された者が、その代金として交付を受けた金員を他に流用費消しても、右費消行為をもつて不法行為にあたるものとはいえない。