検察官,検察事務官又は司法警察職員から鑑定の嘱託を受けた者が当該鑑定に関して作成し若しくは受領した文書若しくは準文書又はその写しは,民訴法220条4号ホに定める刑事事件に係る訴訟に関する書類又は刑事事件において押収されている文書に該当する。
検察官等から鑑定の嘱託を受けた者が当該鑑定に関して作成し若しくは受領した文書等又はその写しは民訴法220条4号ホに定める刑事事件に係る訴訟に関する書類又は刑事事件において押収されている文書に該当するか
民訴法220条4号ホ
判旨
民事訴訟法220条4号ホにいう「刑事事件に係る訴訟に関する書類」の該当性は、当該文書の提出による具体的弊害の有無を個別に検討すべきではなく、被告事件若しくは被疑事件に関して作成され、又はこれらの事件において押収された文書(その写しを含む)であれば当然にこれに該当する。
問題の所在(論点)
民訴法220条4号ホ所定の「刑事事件に係る訴訟に関する書類」の該当性判断において、当該文書の開示による具体的弊害の有無を個別に検討すべきか。また、鑑定の嘱託に基づき作成・受領された文書及びその写しは同号ホに該当するか。
規範
刑事事件関係書類(民訴法220条4号ホ)が文書提出義務から一律に除外されている趣旨は、捜査の秘密保持や関係者のプライバシー保護の必要性が高く、裁判所がインカメラ手続等(同法223条6項)を用いても弊害の有無を判断することが困難なため、その開示の是非を刑事手続上の規律に委ねる点にある。したがって、同号ホへの該当性は、個別の弊害の有無や程度を検討するのではなく、当該文書が「被告事件若しくは被疑事件に関して作成され、又はこれらの事件において押収されている」かという形式的な属性によって判断すべきである。検察官等による鑑定の嘱託は犯罪捜査のために行われるものであり、その鑑定に関して作成・受領された文書等はこれに該当する。
重要事実
事件番号: 令和1(許)11 / 裁判年月日: 令和2年3月24日 / 結論: 棄却
文書提出命令の申立人の父の死体について司法警察職員から鑑定の嘱託を受けた者が当該鑑定のために必要な処分として裁判官の許可を受けてした当該死体の解剖の写真に係る情報が記録された電磁的記録媒体であって当該司法警察職員が所属する地方公共団体が所持するものは,当該地方公共団体と当該申立人との間において,民訴法220条3号所定の…
相手方は、病院での転倒事故により死亡した父の損害賠償請求訴訟において、司法警察職員から鑑定嘱託を受けた者が作成した司法解剖の鑑定書、嘱託書、及び外部から受領した関連資料(本件文書等)を所持する抗告人に対し、文書提出命令を申し立てた。原審は、本件文書等が提出されても捜査への支障や名誉侵害等の弊害が生じるおそれはないとして、刑事事件関係書類に該当しないと判断し、提出を命じたため、抗告人が許可抗告した。
あてはめ
本件文書等は、司法警察職員が犯罪捜査(死因究明等)を目的として行った鑑定嘱託に基づき作成・受領されたものである。これは「被疑事件に関して作成され、又は受領された文書」そのものであり、その写しも同様の性質を持つ。原審は具体的弊害の有無を検討して該当性を否定したが、同号ホの趣旨及びインカメラ手続を排除した同法223条6項の規定に照らせば、弊害の有無を個別に検討することは許されない。したがって、本件文書等は形式的に刑事事件関係書類に該当すると評価される。
結論
本件文書等は民訴法220条4号ホに該当し、同号に基づく提出義務は認められない。原決定を破棄し、2号(引用文書)等の他の提出義務の存否を審理させるため、本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
刑事事件に関連して作成された文書については、公訴時効の完成やプライバシー侵害の恐れがない場合であっても、4号(一般提出義務)の枠組みでは一律に提出義務が否定される。実務上は、同条2号(引用文書)や3号(法律関係文書)への該当性を別途慎重に検討する必要がある。
事件番号: 平成15(許)40 / 裁判年月日: 平成16年5月25日 / 結論: 破棄自判
1 刑訴法47条所定の「訴訟に関する書類」に該当する文書について文書提出命令の申立てがされた場合であっても,当該文書が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当し,かつ,当該文書の保管者によるその提出の拒否が,民事訴訟における当該文書を取り調べる必要性の有無,程度,当該文書が開示されることによる被告人,被疑者等…
事件番号: 平成11(許)26 / 裁判年月日: 平成12年3月10日 / 結論: 破棄自判
文部大臣の諮問機関である教科用図書検定調査審議会が作成した教科用図書についての判定内容を記載した書面及びその内容を記載した文部大臣に対する報告書は、民訴法二二〇条三号後段の文書に当たらない。
事件番号: 平成30(許)7 / 裁判年月日: 平成31年1月22日 / 結論: 破棄差戻
1 刑訴法47条所定の「訴訟に関する書類」に該当する文書について文書提出命令の申立てがされた場合であっても,当該文書が民訴法220条1号所定のいわゆる引用文書に該当し,かつ,当該文書の保管者によるその提出の拒否が,民事訴訟における当該文書を取り調べる必要性の有無,程度,当該文書が開示されることによる被告人,被疑者等の名…
事件番号: 平成19(許)22 / 裁判年月日: 平成19年12月12日 / 結論: その他
1 検察官が被疑者の勾留請求に当たって刑訴規則148条1項3号所定の資料として裁判官に提供した告訴状及び被害者の供述調書は,いずれも,上記各文書を所持する国と上記請求により勾留された者との間において,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当する。 2 強姦の被疑事実に基づき勾留された被疑者が,勾留請求の違法を…