文書提出命令の申立人の父の死体について司法警察職員から鑑定の嘱託を受けた者が当該鑑定のために必要な処分として裁判官の許可を受けてした当該死体の解剖の写真に係る情報が記録された電磁的記録媒体であって当該司法警察職員が所属する地方公共団体が所持するものは,当該地方公共団体と当該申立人との間において,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当する。
鑑定のために必要な処分としてされた死体の解剖の写真に係る情報が記録された電磁的記録媒体が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当するとされた事例
民訴法220条3号
判旨
司法警察職員による司法解剖の結果を記録した写真は、遺族が死体を不当に傷つけられない法的利益を有することを踏まえ、解剖が適正に行われたことを示す資料としての側面も有するため、民訴法220条3号後段の「法律関係文書」に該当する。
問題の所在(論点)
刑事事件の捜査過程で作成された司法解剖の写真が、民訴法220条3号後段にいう「挙証者と文書の所持者との間の法律関係について作成された」文書(法律関係文書)に該当するか。
規範
文書が民訴法220条3号後段の「法律関係文書」に該当するか否かは、同条項の文言・沿革に照らし、文書の記載内容、作成の経緯及び目的等を斟酌して判断すべきである。特に、当該文書が当事者間の法的利益の侵害の有無等に係る法律関係を明らかにする側面を有するかという点が考慮される。
重要事実
相手方の父Aが、病院での転倒により死亡したとして、相手方が病院側に損害賠償を請求した。相手方は死因等の立証のため、司法警察職員の嘱託により実施された司法解剖の写真(本件準文書)について、所持者である地方公共団体(抗告人)に対し文書提出命令を申し立てた。本件準文書は、裁判官の許可を得て行われた司法解剖の経過・結果を記録した電磁的記録媒体である。
事件番号: 令和1(許)12 / 裁判年月日: 令和2年3月24日 / 結論: 破棄差戻
検察官,検察事務官又は司法警察職員から鑑定の嘱託を受けた者が当該鑑定に関して作成し若しくは受領した文書若しくは準文書又はその写しは,民訴法220条4号ホに定める刑事事件に係る訴訟に関する書類又は刑事事件において押収されている文書に該当する。
あてはめ
第一に、死体解剖保存法等の規定に照らし、遺族である相手方は、父Aの死体が礼を失する態様で不当に傷つけられないことについて法的な利益を有する。第二に、司法解剖は遺族の承諾なく行われるが、解剖による死体への侵襲の範囲や態様によっては、上記法的利益が侵害され得る。第三に、本件写真は、解剖の経過・結果を正確に記録するものであり、犯罪捜査資料であると同時に、解剖が適正に行われたことを示し、遺族の法的利益侵害の有無に係る法律関係を明らかにする側面もある。したがって、本件写真は法律関係文書に該当すると評価される。
結論
本件準文書は法律関係文書に該当する。また、仮に刑事訴訟法47条の「訴訟に関する書類」に該当する場合であっても、保管者による拒絶が裁量権の逸脱・濫用にあたる場合には、提出を命じることができる。
実務上の射程
司法解剖の結果が「刑事事件に係る訴訟に関する書類」(民訴法220条4号ホ)として原則提出義務を否定される場合でも、3号後段の法律関係文書として提出を基礎づける道を開いた点に実務上の意義がある。答案では、作成目的が「専ら捜査のため」であっても、遺族の法的利益との関係で「法律関係を明らかにする側面」を抽出して3号後段を適用する論理として活用できる。
事件番号: 平成11(許)26 / 裁判年月日: 平成12年3月10日 / 結論: 破棄自判
文部大臣の諮問機関である教科用図書検定調査審議会が作成した教科用図書についての判定内容を記載した書面及びその内容を記載した文部大臣に対する報告書は、民訴法二二〇条三号後段の文書に当たらない。
事件番号: 平成16(許)14 / 裁判年月日: 平成16年11月26日 / 結論: 棄却
1 破たんした保険会社につき選任された保険管理人が,金融監督庁長官から,保険業法(平成11年法律第160号による改正前のもの)313条1項,242条3項に基づき,当該保険会社の破たんについての旧役員等の経営責任を明らかにするために弁護士,公認会計士等の第三者を委員とする調査委員会を設置して調査を行うことを命じられたため…
事件番号: 平成17(許)11 / 裁判年月日: 平成17年10月14日 / 結論: 破棄差戻
1 民訴法220条4号ロにいう「公務員の職務上の秘密」には,公務員が職務を遂行する上で知ることができた私人の秘密であって,それが本案事件において公にされることにより,私人との信頼関係が損なわれ,公務の公正かつ円滑な運営に支障を来すこととなるものも含まれる。 2 民訴法220条4号ロにいう「その提出により公共の利益を害し…
事件番号: 平成17(許)4 / 裁判年月日: 平成17年7月22日 / 結論: その他
1 警察官が文書提出命令の申立人の住居等において行った捜索差押えに係る捜索差押許可状及び捜索差押令状請求書は,いずれも,当該警察官が所属し,上記各文書を所持する地方公共団体と文書提出命令申立人との間において,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当する。 2 民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当…