文部大臣の諮問機関である教科用図書検定調査審議会が作成した教科用図書についての判定内容を記載した書面及びその内容を記載した文部大臣に対する報告書は、民訴法二二〇条三号後段の文書に当たらない。
教科用図書検定調査審議会の作成した文書が民訴法二二〇条三号後段の文書に当たらないとされた事例
民訴法220条3号,学校教育法21条1項,学校教育法51条,教科用図書検定規則(平成元年文部省令第20号)7条
判旨
民訴法220条3号後段の文書提出義務に関し、専ら自己使用のために作成された内部文書は、特段の事情がない限り提出義務を負わない。教科書検定における審議会の判定記録や報告書は、意思形成過程において内部利用を目的とするものであり、内部文書に該当する。
問題の所在(論点)
民訴法220条3号後段(いわゆる一般義務化前の法律関係文書)に基づき提出義務を負わない「内部文書」の判断基準、および教科書検定過程における審議会の審議記録等がこれに該当するか。
規範
民訴法220条3号後段にいう「挙証者が専ら自己の利用に供するための文書」以外の文書には、文書の所持者が専ら自己使用のために作成した内部文書(内部文書)は含まれない。文書が内部文書に該当するかは、文書の記載内容、性質、作成目的、公表の予定の有無等を総合して判断すべきである。
重要事実
教科書検定の不合格事由等に関する国家賠償請求訴訟において、原告(執筆者)が、文部大臣(当時)による検定意見の根拠となった「教科用図書検定調査審議会」の判定内容を記載した書面(本件文書5)及び文部大臣への報告書(本件文書6)の提出命令を申し立てた。当該文書は法令上の作成義務はなく、審議会の議決内容を内部的に記録・報告するためのものであった。
事件番号: 平成11(許)2 / 裁判年月日: 平成11年11月12日 / 結論: 破棄自判
一 ある文書が、その作成目的、記載内容、これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯、その他の事情から判断して、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど、開示によって所…
あてはめ
本件文書5・6は、文部大臣の判断を補佐する審議会が、所掌事務の遂行過程で判定内容の記録や報告の手段として作成したものである。これらは法令に作成規定がなく、記載内容も審議会に一任されており、外部への公表も予定されていない。したがって、これらは意思形成過程において専ら内部で使用されることを目的とした内部文書と評価される。
結論
本件文書5・6は内部文書であり、民訴法220条3号後段の文書には当たらない。したがって、抗告人は文書提出義務を負わず、申立ては却下されるべきである。
実務上の射程
平成13年改正前の一般義務化前の判例であるが、現行法220条4号ニ(自己使用文書)の解釈において今なお重要な射程を有する。行政機関の意思形成過程にある文書が「専ら所持者の利用に供するためのもの」に該当するかを判断する際の、作成目的や公表予定の有無という考慮要素は実務上必須の枠組みである。
事件番号: 平成16(許)14 / 裁判年月日: 平成16年11月26日 / 結論: 棄却
1 破たんした保険会社につき選任された保険管理人が,金融監督庁長官から,保険業法(平成11年法律第160号による改正前のもの)313条1項,242条3項に基づき,当該保険会社の破たんについての旧役員等の経営責任を明らかにするために弁護士,公認会計士等の第三者を委員とする調査委員会を設置して調査を行うことを命じられたため…
事件番号: 平成17(許)39 / 裁判年月日: 平成18年2月17日 / 結論: 棄却
銀行の営業関連部,個人金融部等の本部の担当部署から各営業店長等にあてて発出されたいわゆる社内通達文書につき,その内容は,変額一時払終身保険に対する融資案件を推進するとの一般的な業務遂行上の指針を示し,あるいは,客観的な業務結果報告を記載したものであり,取引先の顧客の信用情報や銀行の高度なノウハウに関する記載は含まれてお…
事件番号: 昭和44(ク)375 / 裁判年月日: 昭和46年12月17日 / 結論: 却下
抗告人と相手方との間には、抗告人が相手方の著作に対する検定という方式を通して相手方の有する表現の自由を制限したという法律関係が存在する旨の原決定の判示は、抗告人および相手方の判示主張事実を前提とすれば右法律関係が存在することとなるとしているものにすぎず、本件検定が相手方の表現の自由を侵害している旨を原審みずからが判断し…
事件番号: 平成11(許)20 / 裁判年月日: 平成12年3月10日 / 結論: その他
一 証拠調べの必要性を欠くことを理由として文書提出命令の申立てを却下する決定に対しては、右必要性があることを理由として独立に不服の申立てをすることはできない。 二 民訴法一九七条一項三号所定の「技術又は職業の秘密」とは、その事項が公開されると、当該技術の有する社会的価値が下落しこれによる活動が困難になるもの又は当該職業…