一 証拠調べの必要性を欠くことを理由として文書提出命令の申立てを却下する決定に対しては、右必要性があることを理由として独立に不服の申立てをすることはできない。 二 民訴法一九七条一項三号所定の「技術又は職業の秘密」とは、その事項が公開されると、当該技術の有する社会的価値が下落しこれによる活動が困難になるもの又は当該職業に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるものをいう。
一 証拠調べの必要性を欠くことを理由として文書提出命令の申立てを却下する決定に対し不服の申立てをすることの許否 二 民訴法一九七条一項三号所定の「技術又は職業の秘密」の意義
民訴法197条1項3号,民訴法220条4号ロ,民訴法221条,民訴法223条4項
判旨
「技術又は職業の秘密」とは、公開により技術の社会的価値が下落し活動が困難になるもの等を指し、情報の種類や不利益の具体的内容を欠く場合はこれに当たらない。また、自己利用文書に該当するには、外部への開示予定がないだけでなく、開示により看過し難い不利益が生ずるおそれがあることを要する。
問題の所在(論点)
1. 技術上の情報が記載されていることから直ちに「技術又は職業の秘密」に該当するといえるか。 2. 外部への開示を予定していない文書であれば、直ちに「自己利用文書」に該当するといえるか。
規範
1.「技術又は職業の秘密」(民訴法197条1項3号)とは、事項の公開により、当該技術の有する社会的価値が下落しこれによる活動が困難になるもの、又は当該職業に深刻な影響を与え以後その遂行が困難になるものをいう。 2.「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」(同法220条4号ハ)とは、作成目的、記載内容、所持の経緯等から、専ら内部利用目的で作成され外部への開示が予定されていない文書であって、開示により個人のプライバシー侵害や自由な意思形成の阻害など、所持者側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあるものをいう(特段の事情がある場合を除く)。
事件番号: 平成11(許)2 / 裁判年月日: 平成11年11月12日 / 結論: 破棄自判
一 ある文書が、その作成目的、記載内容、これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯、その他の事情から判断して、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど、開示によって所…
重要事実
抗告人らは、購入した電話機器(本件機器)の瑕疵による損害賠償を請求し、立証のため本件機器の回路図及び信号流れ図(本件文書)の文書提出命令を申し立てた。相手方は、本件文書がメーカーのノウハウ等を含む「技術又は職業の秘密」であり、かつ「自己利用文書」であるとして提出義務を争った。原審は、メーカーの不利益が予想されることや外部開示を予定していないことを理由に、具体的な不利益の内容を認定せず申立てを却下した。
あてはめ
1. 技術上の情報が含まれるとしても、相手方は情報の種類、性質、および開示による不利益の具体的内容を主張しておらず、原審もこれらを具体的に認定していない。したがって、社会的価値の下落や活動困難を招く「技術又は職業の秘密」に当たるとは断定できない。 2. 本件文書が外部への開示を予定せず作成されたものであっても、その内容に照らし、開示によって所持者側に「看過し難い不利益」が生ずるおそれがあるか否かを具体的に判断すべきである。単に外部開示の予定がないことのみをもって自己利用文書に当たると判断した原審には、法令の解釈適用の誤りがある。
結論
原決定のうち本件文書に係る部分を破棄し、具体的な不利益の有無等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
文書提出義務の例外(技術の秘密・自己利用文書)を主張する際のハードルを示した。単なる「社外秘」や「ノウハウの記載」では足りず、開示による具体的・客観的な不利益(活動困難や看過し難い不利益)の主張立証が必要であることを強調する際に用いる。
事件番号: 平成17(許)39 / 裁判年月日: 平成18年2月17日 / 結論: 棄却
銀行の営業関連部,個人金融部等の本部の担当部署から各営業店長等にあてて発出されたいわゆる社内通達文書につき,その内容は,変額一時払終身保険に対する融資案件を推進するとの一般的な業務遂行上の指針を示し,あるいは,客観的な業務結果報告を記載したものであり,取引先の顧客の信用情報や銀行の高度なノウハウに関する記載は含まれてお…
事件番号: 平成11(許)26 / 裁判年月日: 平成12年3月10日 / 結論: 破棄自判
文部大臣の諮問機関である教科用図書検定調査審議会が作成した教科用図書についての判定内容を記載した書面及びその内容を記載した文部大臣に対する報告書は、民訴法二二〇条三号後段の文書に当たらない。
事件番号: 平成11(許)35 / 裁判年月日: 平成12年12月14日 / 結論: 破棄自判
信用金庫の会員が代表訴訟において信用金庫の貸出稟議書につき文書提出命令の申立てをしたことは、当該貸出稟議書が民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない特段の事情とはいえない。 (反対意見がある。)
事件番号: 平成15(許)48 / 裁判年月日: 平成16年2月20日 / 結論: 破棄自判
1 県が,漁業協同組合との間でその所属組合員全員が被る漁業損失の総額を対象とする漁業補償交渉をする際の手持ち資料として作成した補償額算定調書中,その総額を積算する過程で算出した文書提出命令申立人に係る補償見積額が記載された部分は,県が各組合員に対する補償額の決定,配分を同組合の自主的な判断にゆだねることを前提とし,その…