信用金庫の会員が代表訴訟において信用金庫の貸出稟議書につき文書提出命令の申立てをしたことは、当該貸出稟議書が民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない特段の事情とはいえない。 (反対意見がある。)
信用金庫の会員が代表訴訟において信用金庫の貸出稟議書につき文書提出命令の申立てをしたことと当該貸出稟議書が民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない特段の事情
民訴法220条4号,信用金庫法39条,商法267条
判旨
信用金庫の会員代表訴訟において、会員は当該金庫と同一視できる立場になく、貸出稟議書は特段の事情がない限り民事訴訟法220条4号ハ所定の「自己使用文書」に該当する。
問題の所在(論点)
信用金庫の会員代表訴訟において、会員は金庫が所持する貸出稟議書の利用関係において金庫と「同一視することができる立場」に立つといえるか。また、当該稟議書は「自己使用文書」として提出義務を免れるか。
規範
金融機関の貸出稟議書は、特段の事情がない限り、民事訴訟法220条4号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書(自己使用文書)」に該当する。ここでいう「特段の事情」とは、文書提出命令の申立人が、当該文書の利用関係において所持者と同一視することができる立場に立つ場合をいう。
重要事実
信用金庫の会員である相手方が、元理事らによる不適切な融資(本件各融資)により金庫に損害が生じたと主張し、代表訴訟を提起した。相手方は、理事らの善管注意義務違反を立証するため、金庫が所持する貸出稟議書及び添付意見書(本件各文書)につき、民訴法220条3号後段または4号に基づき文書提出命令を申し立てた。
事件番号: 平成13(許)15 / 裁判年月日: 平成13年12月7日 / 結論: 棄却
信用組合の作成した貸出稟議書の所持者は,預金保険機構から委託を受け,同機構に代わって,破たんした金融機関等からその資産を買い取り,その管理及び処分を行うことを主な業務とする株式会社であり,経営が破たんした信用組合からその営業の全部を譲り受けたことに伴い,貸出稟議書を所持するに至ったものであること,その信用組合は,清算中…
あてはめ
信用金庫法上、会員に認められた書類開示の範囲は限定されており、会計帳簿等の閲覧権はない。代表訴訟は会員の地位に基づき理事の責任を追及する点に留まり、会員に金庫と同一の立場で書類を利用する地位を付与するものではない。したがって、会員は文書の利用関係において金庫と同一視できる立場にはなく、特段の事情は認められない。よって、内部的な意思決定過程で作成された本件各文書は、専ら金庫内部の利用に供されるべき自己使用文書といえる。
結論
本件各文書は民訴法220条4号ハ所定の自己使用文書に該当し、同条3号後段にも該当しないため、金庫は提出義務を負わない。申立てを却下した原々決定は正当である。
実務上の射程
銀行等の貸出稟議書が原則として自己使用文書に当たるとした判例(最決平11・11・12)を前提に、会員代表訴訟という特殊な状況下でも「同一視」を否定し、提出義務の範囲を厳格に画したもの。答案では、特段の事情の定義(同一視の可否)と、会員の具体的権利(閲覧権の範囲)を対比させて論じる際に用いる。
事件番号: 平成11(許)36 / 裁判年月日: 平成12年12月14日 / 結論: 却下
文書提出命令の申立てについての決定に対しては、文書の提出を命じられた所持者及び申立てを却下された申立人以外の者は抗告の利益を有しない。
事件番号: 平成11(許)2 / 裁判年月日: 平成11年11月12日 / 結論: 破棄自判
一 ある文書が、その作成目的、記載内容、これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯、その他の事情から判断して、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど、開示によって所…
事件番号: 平成17(許)39 / 裁判年月日: 平成18年2月17日 / 結論: 棄却
銀行の営業関連部,個人金融部等の本部の担当部署から各営業店長等にあてて発出されたいわゆる社内通達文書につき,その内容は,変額一時払終身保険に対する融資案件を推進するとの一般的な業務遂行上の指針を示し,あるいは,客観的な業務結果報告を記載したものであり,取引先の顧客の信用情報や銀行の高度なノウハウに関する記載は含まれてお…
事件番号: 平成23(行ト)42 / 裁判年月日: 平成23年10月11日 / 結論: 棄却
弁護士会の綱紀委員会の議事録のうち「重要な発言の要旨」に当たる部分は,次の(1)及び(2)の事情の下では,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当する。 (1) 当該弁護士会の会則等の内部規則において,綱紀委員会の議事及び議事録は非公開とされており,綱紀委員会の議決に基づき懲戒委員会…