弁護士会の綱紀委員会の議事録のうち「重要な発言の要旨」に当たる部分は,次の(1)及び(2)の事情の下では,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当する。 (1) 当該弁護士会の会則等の内部規則において,綱紀委員会の議事及び議事録は非公開とされており,綱紀委員会の議決に基づき懲戒委員会に対し事案の審査を求めるに当たって提出すべき綱紀委員会の調査記録等にも,その議事録は含まれていない。 (2) 上記部分は,当該弁護士会の綱紀委員会内部における意思形成過程に関する情報が記載されているものである。 (補足意見がある。)
弁護士会の綱紀委員会の議事録のうち「重要な発言の要旨」に当たる部分が民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当するとされた事例
民訴法220条4号ニ,弁護士法58条
判旨
弁護士会の綱紀委員会議事録等は、専ら内部利用目的で作成され、開示により自由な意思形成を阻害するおそれがあるため、原則として民訴法220条4号ニの自己利用文書に該当する。また、自己利用文書に該当する以上、同条3号の法律関係文書にも該当しない。
問題の所在(論点)
弁護士会の綱紀委員会の議事録および議案書が、民訴法220条4号ニの「専ら文書の所持者の利用に供するための文書(自己利用文書)」に該当し、提出義務が否定されるか。
規範
ある文書が、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部への開示が予定されていない文書であって、開示により個人のプライバシー侵害や団体等の自由な意思形成が阻害されるなど、所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがある場合には、特段の事情がない限り、民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書(自己利用文書)」に当たる。自己利用文書に該当する文書は、民訴法220条3号の「法律関係文書」にも該当しない。
重要事実
事件番号: 平成17(許)39 / 裁判年月日: 平成18年2月17日 / 結論: 棄却
銀行の営業関連部,個人金融部等の本部の担当部署から各営業店長等にあてて発出されたいわゆる社内通達文書につき,その内容は,変額一時払終身保険に対する融資案件を推進するとの一般的な業務遂行上の指針を示し,あるいは,客観的な業務結果報告を記載したものであり,取引先の顧客の信用情報や銀行の高度なノウハウに関する記載は含まれてお…
弁護士である抗告人は、所属する弁護士会(相手方)から受けた戒告処分の取消訴訟において、同会の綱紀委員会での議論の経過を立証するため、当該委員会の「議事録」および「議案書」の文書提出命令を申し立てた。相手方の内部規則では、綱紀委員会の議事は非公開とされ、議事録はいかなる場合も閲覧・謄写が許されない旨が定められていた。
あてはめ
弁護士法上、議事録の作成・保存は弁護士会の自主性に委ねられているところ、相手方の規則は議事録を厳格な非公開としている。これに鑑みれば、本件議事録および議案書は専ら内部利用目的で作成され、開示が予定されていない。また、審議内容である「重要な発言の要旨」等が開示されれば、委員会における自由な意見表明を阻害し、自由な意思形成に支障を来すおそれは明らかである。したがって、特段の事情がない限り自己利用文書に該当する。
結論
本件各文書は自己利用文書に該当し、法律関係文書にも当たらないため、相手方は提出義務を負わない。文書提出命令の申立てを却下した原審の判断は妥当である。
実務上の射程
自己利用文書の該当性判断において「開示による自由な意思形成の阻害」という不利益を重視する。また、特段の事情の有無にかかわらず、4号ニに該当すれば3号の法律関係文書性も否定されるという解釈手法を示しており、220条各号の適用関係における標準的な判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 平成21(行フ)3 / 裁判年月日: 平成22年4月12日 / 結論: 破棄自判
名古屋市議会の会派が市から交付された政務調査費を所属議員に支出する際に各議員から諸経費と使途基準中の経費の項目等との対応関係を示す文書として提出を受けた報告書及びこれに添付された領収書は,次の(1),(2)など判示の事情の下では,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる。 (1) …
事件番号: 平成11(許)35 / 裁判年月日: 平成12年12月14日 / 結論: 破棄自判
信用金庫の会員が代表訴訟において信用金庫の貸出稟議書につき文書提出命令の申立てをしたことは、当該貸出稟議書が民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない特段の事情とはいえない。 (反対意見がある。)
事件番号: 平成13(許)15 / 裁判年月日: 平成13年12月7日 / 結論: 棄却
信用組合の作成した貸出稟議書の所持者は,預金保険機構から委託を受け,同機構に代わって,破たんした金融機関等からその資産を買い取り,その管理及び処分を行うことを主な業務とする株式会社であり,経営が破たんした信用組合からその営業の全部を譲り受けたことに伴い,貸出稟議書を所持するに至ったものであること,その信用組合は,清算中…
事件番号: 平成17(行フ)2 / 裁判年月日: 平成17年11月10日 / 結論: 棄却
仙台市議会の会派に対する政務調査費の交付を定める仙台市政務調査費の交付に関する条例(平成13年仙台市条例第33号)の委任に基づいて議長が定めた要綱に,議員が所属会派に交付された政務調査費によって費用を支弁して調査研究を行った場合には当該会派の代表者に対し調査研究報告書により調査研究の内容及び経費の内訳を報告すべき旨の定…