名古屋市議会の会派が市から交付された政務調査費を所属議員に支出する際に各議員から諸経費と使途基準中の経費の項目等との対応関係を示す文書として提出を受けた報告書及びこれに添付された領収書は,次の(1),(2)など判示の事情の下では,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる。 (1) 名古屋市会政務調査費の交付に関する条例(平成13年名古屋市条例第1号。平成20年名古屋市条例第1号による改正前のもの)の委任を受けた名古屋市会政務調査費の交付に関する規則(平成13年名古屋市規則第11号)は,会派の経理責任者に政務調査費の支出について会計帳簿の調製及び領収書等の証拠書類の整理並びにこれらの書類の保管を義務付けているが,上記条例及び規則の規定上,上記各書類は,専ら各会派の内部にとどめて利用すべき文書であることが予定されている。当該報告書は,当該会派が独自に使用しているもので,せいぜい上記規則所定の証拠書類に該当し得るにとどまり,これに添付された領収書は,上記規則所定の領収書に該当する。 (2) 当該報告書及びこれに添付された領収書は,個々の政務調査費の支出について,当該支出に係る調査研究活動をした議員の氏名,当該議員が用いた金額やその使途,主な調査内容等が具体的に記載されるものである上,調査研究活動に協力するなどした第三者の氏名等が記載されているがい然性が高いものである。 (反対意見がある。)
名古屋市議会の会派が市から交付された政務調査費を所属議員に支出する際に各議員から諸経費と使途基準中の経費の項目等との対応関係を示す文書として提出を受けた報告書及びこれに添付された領収書が民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たるとされた事例
民訴法220条4号ニ,地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの)100条13項,地方自治法(平成20年法律第69号による改正前のもの)100条14項,名古屋市会政務調査費の交付に関する条例(平成13年名古屋市条例第1号。平成20年名古屋市条例第1号による改正前のもの)4条,名古屋市会政務調査費の交付に関する条例(平成13年名古屋市条例第1号。平成20年名古屋市条例第1号による改正前のもの)5条1項,名古屋市会政務調査費の交付に関する条例(平成13年名古屋市条例第1号。平成20年名古屋市条例第1号による改正前のもの)6条,名古屋市会政務調査費の交付に関する条例(平成13年名古屋市条例第1号。平成20年名古屋市条例第1号による改正前のもの)8条1項,名古屋市会政務調査費の交付に関する条例(平成13年名古屋市条例第1号。平成20年名古屋市条例第1号による改正前のもの)8条2項,名古屋市会政務調査費の交付に関する条例(平成13年名古屋市条例第1号。平成20年名古屋市条例第1号による改正前のもの)別記様式,名古屋市会政務調査費の交付に関する規則(平成13年名古屋市規則第11号)6条2項,名古屋市会政務調査費の使途基準及び収支報告書の閲覧に関する規程(平成13年名古屋市会達第1号)2条,名古屋市会政務調査費の使途基準及び収支報告書の閲覧に関する規程(平成13年名古屋市会達第1号)別表
判旨
政務調査費の領収書や報告書が、専ら内部利用目的で作成され、開示により調査研究活動の自由が妨げられる等の看過し難い不利益が生ずるおそれがある場合、特段の事情のない限り「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当する。
問題の所在(論点)
事件番号: 平成17(行フ)2 / 裁判年月日: 平成17年11月10日 / 結論: 棄却
仙台市議会の会派に対する政務調査費の交付を定める仙台市政務調査費の交付に関する条例(平成13年仙台市条例第33号)の委任に基づいて議長が定めた要綱に,議員が所属会派に交付された政務調査費によって費用を支弁して調査研究を行った場合には当該会派の代表者に対し調査研究報告書により調査研究の内容及び経費の内訳を報告すべき旨の定…
地方議会の会派が保管する政務調査費の報告書および領収書が、民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当するか。
規範
ある文書が、(1)作成目的、記載内容、所持に至る経緯等から、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部への開示が予定されていない文書であり、かつ(2)開示により個人のプライバシー侵害や団体等の自由な意思形成の阻害など、所持者側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には、特段の事情がない限り、民訴法220条4号ニの「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」(自己利用文書)に当たる。
重要事実
名古屋市議会の会派(本件会派)の住民らが、不当利得返還請求訴訟において、会派が所属議員から提出させた「政務調査費報告書」および「領収書」の文書提出命令を申し立てた。当時の条例では、収支報告書の閲覧制度はあったが、個別の領収書等の提出や公開までは義務付けられておらず、会派には5年間の保管義務が課されているのみであった。本件報告書は会派が独自に作成した様式であり、議員が使途基準に基づき経理責任者に提出する内部資料として運用されていた。
あてはめ
まず、当時の条例が収支報告書の記載を概括的なものに留め、個別領収書の公開を求めていなかった趣旨は、執行機関等からの干渉を防止し、議員の調査研究活動の自由を確保する点にある。これに照らせば、本件各文書は、各会派が適正な使用の自律を促し、説明責任の基礎資料として内部に留めるべく作成されたものであり、外部への開示は予定されていない(要件1充足)。次に、当該文書には活動目的や協力者名が具体的に記載され得るため、開示されれば活動内容が推知され、外部からの干渉を招いて調査研究活動を阻害するほか、協力者のプライバシーを侵害する等、所持者に看過し難い不利益を生じさせる(要件2充足)。
結論
本件各文書は「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当し、文書提出命令の対象とはならない。
実務上の射程
自己利用文書の該当性は、作成目的(内部性)と開示による不利益(秘匿の必要性)の二要素から判断される。本判決は、政治活動の自由という憲法的価値を背景に、政務調査費に関する領収書の自己利用文書性を認めた。ただし、その後の条例改正等で提出・公開が義務化された場合は、開示予定がないとはいえず、本判断の射程外となる点に注意が必要である。
事件番号: 平成26(行フ)3 / 裁判年月日: 平成26年10月29日 / 結論: 破棄自判
岡山県議会の議員が県から交付された政務調査費の支出に係る1万円以下の支出に係る領収書その他の証拠書類等及び会計帳簿は,次の(1)~(3)など判示の事情の下では,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない。 (1) 岡山県議会の政務調査費の交付に関する条例(平成13年岡山県条例第4…
事件番号: 平成23(行ト)42 / 裁判年月日: 平成23年10月11日 / 結論: 棄却
弁護士会の綱紀委員会の議事録のうち「重要な発言の要旨」に当たる部分は,次の(1)及び(2)の事情の下では,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当する。 (1) 当該弁護士会の会則等の内部規則において,綱紀委員会の議事及び議事録は非公開とされており,綱紀委員会の議決に基づき懲戒委員会…
事件番号: 平成17(許)39 / 裁判年月日: 平成18年2月17日 / 結論: 棄却
銀行の営業関連部,個人金融部等の本部の担当部署から各営業店長等にあてて発出されたいわゆる社内通達文書につき,その内容は,変額一時払終身保険に対する融資案件を推進するとの一般的な業務遂行上の指針を示し,あるいは,客観的な業務結果報告を記載したものであり,取引先の顧客の信用情報や銀行の高度なノウハウに関する記載は含まれてお…
事件番号: 平成19(許)22 / 裁判年月日: 平成19年12月12日 / 結論: その他
1 検察官が被疑者の勾留請求に当たって刑訴規則148条1項3号所定の資料として裁判官に提供した告訴状及び被害者の供述調書は,いずれも,上記各文書を所持する国と上記請求により勾留された者との間において,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当する。 2 強姦の被疑事実に基づき勾留された被疑者が,勾留請求の違法を…