岡山県議会の議員が県から交付された政務調査費の支出に係る1万円以下の支出に係る領収書その他の証拠書類等及び会計帳簿は,次の(1)~(3)など判示の事情の下では,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない。 (1) 岡山県議会の政務調査費の交付に関する条例(平成13年岡山県条例第43号。平成24年岡山県条例第86号による改正前のもの)においては,平成21年岡山県条例第34号による改正により,政務調査費の交付を受けた議員は収支報告書に1万円を超える支出に係る領収書の写しその他の議長が定める書類を添付して議長に提出しなければならず,何人も議長に対してこれらの書類の閲覧を請求することができることとされた。 (2) 上記条例の委任を受けた岡山県議会の政務調査費の交付に関する規程(平成13年岡山県議会告示第1号。平成24年岡山県議会告示第2号による改正前のもの)においては,政務調査費の支出につき,その金額の多寡にかかわらず,議員に対して領収書その他の証拠書類等の整理保管及び保存が義務付けられており,上記改正後の上記条例の下では,上記領収書その他の証拠書類等は,議長において上記条例に基づく調査を行う際に必要に応じて支出の金額の多寡にかかわらず直接確認することが予定されているものである。 (3) 会計帳簿は,領収書その他の証拠書類等を原始的な資料とし,これらの資料から明らかとなる情報が一覧し得る状態で整理されたものであるところ,上記条例の委任を受けた上記規程においては,政務調査費の支出につき,議員に対して会計帳簿の調製及び保存が義務付けられており,上記改正後の上記条例の下では,上記会計帳簿は,議長において上記条例に基づく調査を行う際に必要に応じて直接確認することが予定されているものである。
岡山県議会の議員が県から交付された政務調査費の支出に係る1万円以下の支出に係る領収書その他の証拠書類等及び会計帳簿が民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらないとされた事例
民訴法220条4号ニ,地方自治法(平成24年法律第72号による改正前のもの)100条14項,地方自治法(平成24年法律第72号による改正前のもの)100条15項,岡山県議会の政務調査費の交付に関する条例(平成13年岡山県条例第43号。平成24年岡山県条例第86号による改正前のもの)8条1項,岡山県議会の政務調査費の交付に関する条例(平成13年岡山県条例第43号。平成24年岡山県条例第86号による改正前のもの)8条3項,岡山県議会の政務調査費の交付に関する条例(平成13年岡山県条例第43号。平成24年岡山県条例第86号による改正前のもの)9条,岡山県議会の政務調査費の交付に関する条例(平成13年岡山県条例第43号。平成24年岡山県条例第86号による改正前のもの)11条1項,岡山県議会の政務調査費の交付に関する条例(平成13年岡山県条例第43号。平成24年岡山県条例第86号による改正前のもの)11条2項,岡山県議会の政務調査費の交付に関する規程(平成13年岡山県議会告示第1号。平成24年岡山県議会告示第2号による改正前のもの)6条,岡山県議会の政務調査費の交付に関する規程(平成13年岡山県議会告示第1号。平成24年岡山県議会告示第2号による改正前のもの)7条
判旨
政務調査費の支出に係る領収書や会計帳簿は、条例等により議長等への提出や保存義務が課されている場合、たとえ一部が提出対象外であっても外部開示が予定されていないとはいえず、自己使用文書(民訴法220条4号ニ)に該当しない。
事件番号: 平成21(行フ)3 / 裁判年月日: 平成22年4月12日 / 結論: 破棄自判
名古屋市議会の会派が市から交付された政務調査費を所属議員に支出する際に各議員から諸経費と使途基準中の経費の項目等との対応関係を示す文書として提出を受けた報告書及びこれに添付された領収書は,次の(1),(2)など判示の事情の下では,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる。 (1) …
問題の所在(論点)
地方議会議員が保存義務を負う1万円以下の政務調査費領収書および会計帳簿が、民事訴訟法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当するか。
規範
ある文書が「専ら文書の所持者の利用に供するための文書(自己使用文書)」に当たるかは、①作成目的、②記載内容、③所持に至る経緯等の諸事情を考慮し、専ら内部利用目的で作成され外部への開示が予定されていない文書であって、開示によりプライバシー侵害や自由な意思形成阻害等の看過し難い不利益が生じるおそれがある場合に(特段の事情がない限り)認められる。
重要事実
岡山県議会議員(相手方)に対し、政務調査費の不当利得返還請求訴訟を本案として、1万円以下の支出に係る領収書等および会計帳簿(本件各文書)の文書提出命令が申し立てられた。当時の条例では、1万円超の支出については領収書写しの提出・閲覧が義務付けられていたが、1万円以下については提出義務がなく、議員に5年間の保存義務が課されるにとどまっていた。相手方は、本件各文書は外部開示が予定されていない自己使用文書であると主張した。
あてはめ
地方自治法上の政務調査費制度は使途の透明性確保を目的とする。本件条例の改正趣旨は調査研究の自由よりも透明性を優先しており、1万円以下の書類の提出義務がないのは事務負担への配慮にすぎず、開示を拒絶する趣旨ではない。また、規程により金額を問わず証拠書類の保存が義務付けられており、議長による調査の際には直接確認されることが予定されている。さらに、会計帳簿もこれらの情報を整理したものであり、同様に議長による確認が想定される。したがって、本件各文書は「外部の者に開示することが予定されていない文書」とは認められない。
結論
本件各文書は自己使用文書に該当しない。したがって、文書提出命令の対象となる。
実務上の射程
行政訴訟や住民訴訟に伴う文書提出命令において、自己使用文書の該当性を判断する重要指標となる。特に、法令や条例に基づき公的な外観や報告・保存義務が設定されている文書については、実質的な秘匿の必要性があっても「開示が予定されていない」という要件を充たしにくくなる点に留意が必要である。
事件番号: 平成17(行フ)2 / 裁判年月日: 平成17年11月10日 / 結論: 棄却
仙台市議会の会派に対する政務調査費の交付を定める仙台市政務調査費の交付に関する条例(平成13年仙台市条例第33号)の委任に基づいて議長が定めた要綱に,議員が所属会派に交付された政務調査費によって費用を支弁して調査研究を行った場合には当該会派の代表者に対し調査研究報告書により調査研究の内容及び経費の内訳を報告すべき旨の定…
事件番号: 平成11(許)35 / 裁判年月日: 平成12年12月14日 / 結論: 破棄自判
信用金庫の会員が代表訴訟において信用金庫の貸出稟議書につき文書提出命令の申立てをしたことは、当該貸出稟議書が民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない特段の事情とはいえない。 (反対意見がある。)
事件番号: 平成17(許)39 / 裁判年月日: 平成18年2月17日 / 結論: 棄却
銀行の営業関連部,個人金融部等の本部の担当部署から各営業店長等にあてて発出されたいわゆる社内通達文書につき,その内容は,変額一時払終身保険に対する融資案件を推進するとの一般的な業務遂行上の指針を示し,あるいは,客観的な業務結果報告を記載したものであり,取引先の顧客の信用情報や銀行の高度なノウハウに関する記載は含まれてお…
事件番号: 平成23(行ト)42 / 裁判年月日: 平成23年10月11日 / 結論: 棄却
弁護士会の綱紀委員会の議事録のうち「重要な発言の要旨」に当たる部分は,次の(1)及び(2)の事情の下では,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当する。 (1) 当該弁護士会の会則等の内部規則において,綱紀委員会の議事及び議事録は非公開とされており,綱紀委員会の議決に基づき懲戒委員会…