仙台市議会の会派に対する政務調査費の交付を定める仙台市政務調査費の交付に関する条例(平成13年仙台市条例第33号)の委任に基づいて議長が定めた要綱に,議員が所属会派に交付された政務調査費によって費用を支弁して調査研究を行った場合には当該会派の代表者に対し調査研究報告書により調査研究の内容及び経費の内訳を報告すべき旨の定めがあるが,同条例,同要綱等に市長及び議長が同報告書の提出を求めることができる旨の定めはなく,同報告書は専ら会派の内部にとどめて利用すべき文書とされていること,これが開示されると会派及び議員の調査研究が執行機関,他の会派等の干渉によって阻害されるおそれがあることなど判示の事情の下では,議員が同要綱の定めに従って所属会派に提出した調査研究報告書及びその添付書類は,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる。 (反対意見がある。)
仙台市議会の議員が所属会派に交付された政務調査費によって費用を支弁して行った調査研究の内容及び経費の内訳を記載して当該会派に提出した調査研究報告書及びその添付書類が民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たるとされた事例
民訴法220条4号ニ,地方自治法100条13項,仙台市政務調査費の交付に関する条例(平成13年仙台市条例第33号)1条,仙台市政務調査費の交付に関する条例(平成13年仙台市条例第33号)2条,仙台市政務調査費の交付に関する条例(平成13年仙台市条例第33号)3条,仙台市政務調査費の交付に関する条例(平成13年仙台市条例第33号)12条
判旨
政務調査費の調査研究報告書は、条例等の定めにより会派内部の自律的活用と執行機関からの干渉防止が予定されており、専ら所持者の利用に供するための文書(自己利用文書)に当たると判断された。
問題の所在(論点)
民訴法220条4号ニにいう「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」(自己利用文書)の判断基準、および地方議会の会派が所持する政務調査費の調査研究報告書がこれに該当するか。
規範
ある文書が、その作成目的、記載内容、所持に至る経緯等の事情から、専ら内部者の利用に供する目的で作成され、外部への開示が予定されていない文書であって、開示によりプライバシー侵害や自由な意思形成の阻害など、所持者の側に「看過し難い不利益」が生ずるおそれがある場合には、特段の事情がない限り、民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる。
事件番号: 平成21(行フ)3 / 裁判年月日: 平成22年4月12日 / 結論: 破棄自判
名古屋市議会の会派が市から交付された政務調査費を所属議員に支出する際に各議員から諸経費と使途基準中の経費の項目等との対応関係を示す文書として提出を受けた報告書及びこれに添付された領収書は,次の(1),(2)など判示の事情の下では,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たる。 (1) …
重要事実
仙台市議会の会派(相手方)の所属議員が、政務調査費を用いて行った調査内容や経費内訳を記載した「調査研究報告書」及び添付書類(本件各文書)につき、市民団体(抗告人)が不当利得返還請求訴訟の本案のために文書提出命令を申し立てた。本件条例及び要綱では、収支状況報告書の議長提出は義務付けられていたが、調査研究報告書については議員から会派への提出に留まり、議長や市長への提出は予定されていなかった。
あてはめ
本件各文書は、会派の自主的活動と自律を促し、執行機関からの干渉を防止する目的で作成され、各会派の内部利用に留めるべきものである。他方、透明性確保のための検査対象は収支状況報告書であり、調査研究報告書は性質が異なる。また、開示により議員の調査活動が他会派等の干渉で阻害されるおそれがあり、協力した第三者の氏名等が漏えいしてプライバシー侵害や今後の調査への支障が生ずるという「看過し難い不利益」が認められる。
結論
本件各文書は自己利用文書に該当し、文書提出義務を負わない。したがって、本件申立てを却下した原決定は妥当である。
実務上の射程
自己利用文書の該当性は、作成目的・外部開示の予定・開示による不利益の3要素から判断される。本判決は政務調査費の透明性よりも議員活動の自由とプライバシー保護を重視しており、行政文書の開示基準とは異なる民事訴訟法上の独自の判断枠組みを示すものとして実務上重要である。
事件番号: 平成23(行ト)42 / 裁判年月日: 平成23年10月11日 / 結論: 棄却
弁護士会の綱紀委員会の議事録のうち「重要な発言の要旨」に当たる部分は,次の(1)及び(2)の事情の下では,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に該当する。 (1) 当該弁護士会の会則等の内部規則において,綱紀委員会の議事及び議事録は非公開とされており,綱紀委員会の議決に基づき懲戒委員会…
事件番号: 平成17(許)39 / 裁判年月日: 平成18年2月17日 / 結論: 棄却
銀行の営業関連部,個人金融部等の本部の担当部署から各営業店長等にあてて発出されたいわゆる社内通達文書につき,その内容は,変額一時払終身保険に対する融資案件を推進するとの一般的な業務遂行上の指針を示し,あるいは,客観的な業務結果報告を記載したものであり,取引先の顧客の信用情報や銀行の高度なノウハウに関する記載は含まれてお…
事件番号: 平成26(行フ)3 / 裁判年月日: 平成26年10月29日 / 結論: 破棄自判
岡山県議会の議員が県から交付された政務調査費の支出に係る1万円以下の支出に係る領収書その他の証拠書類等及び会計帳簿は,次の(1)~(3)など判示の事情の下では,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない。 (1) 岡山県議会の政務調査費の交付に関する条例(平成13年岡山県条例第4…
事件番号: 平成11(許)35 / 裁判年月日: 平成12年12月14日 / 結論: 破棄自判
信用金庫の会員が代表訴訟において信用金庫の貸出稟議書につき文書提出命令の申立てをしたことは、当該貸出稟議書が民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない特段の事情とはいえない。 (反対意見がある。)