1 検察官が被疑者の勾留請求に当たって刑訴規則148条1項3号所定の資料として裁判官に提供した告訴状及び被害者の供述調書は,いずれも,上記各文書を所持する国と上記請求により勾留された者との間において,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当する。 2 強姦の被疑事実に基づき勾留された被疑者が,勾留請求の違法を主張して国家賠償を求める本案訴訟において,検察官が刑訴規則148条1項3号所定の資料として裁判官に提供した告訴状及び被害者の供述調書について,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当することを理由として文書提出命令を申し立てた場合,刑訴法47条に基づきその提出を拒否した上記各文書の所持者である国の判断は,次の(1)〜(3)などの判示の事情の下では,裁量権の範囲を逸脱し,又はこれを濫用したものというべきである。 (1) 勾留の裁判が準抗告審において取り消されており,検察官が被疑者には罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があると判断するに際し最も基本的な資料となった上記各文書には,取調べの必要性がある。 (2) 被害者は,被疑事実が不法行為を構成するとして,被疑者に対する損害賠償請求訴訟を提起しており,その審理に必要な範囲でプライバシーが明らかにされることを容認していたということができ,また,国は,本案訴訟において,被害者の供述内容として被害の態様が極めて詳細かつ具体的に記載された検察官の陳述書を既に書証として提出しており,上記各文書が開示されることによって,被害者の名誉,プライバシーの侵害の弊害が生ずるおそれがあるとは認められない。 (3) 被疑事件については不起訴処分がされており,また,上記陳述書の内容はほぼ上記供述調書の記載に従ったもののようにうかがわれ,上記各文書が開示されることによって,捜査や公判に不当な影響が及ぶおそれがあるとは認められない。 (2につき補足意見がある。)
1 被疑者の勾留請求の資料とされた告訴状及び被害者の供述調書が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当するとされた事例 2 被疑者の勾留請求の資料とされた告訴状及び被害者の供述調書が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当するとして文書提出命令が申し立てられた場合に,刑訴法47条に基づきその提出を拒否した上記各文書の所持者である国の判断が,裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものとされた事例
(1,2につき)民訴法220条3号,4号ホ,刑訴法60条,刑訴法205条,刑訴法207条,刑訴規則148条1項3号 (2につき)刑訴法47条
判旨
公務員が職務上作成した文書が、民事訴訟法220条4号所定の「専ら提出者の利用に供するための文書(自己使用文書)」に当たるか否かは、作成目的、記載内容、閲覧範囲等を総合的に考慮して判断すべきであり、刑事事件の捜査令状請求の基礎となった陳述書等は、特段の事情がない限り、これに該当しない。
問題の所在(論点)
捜査機関が令状請求等のために作成した陳述書等の文書が、民事訴訟法220条4号ハ所定の「専ら提出者の利用に供するための文書」として、文書提出義務を免れるか。
事件番号: 平成19(許)5 / 裁判年月日: 平成19年11月30日 / 結論: 破棄差戻
銀行が,法令により義務付けられた資産査定の前提として,監督官庁の通達において立入検査の手引書とされている「金融検査マニュアル」に沿って債務者区分を行うために作成し,保存している資料は,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない。
規範
ある文書が民事訴訟法220条4号所定の「専ら提出者の利用に供するための文書」に該当するか否かは、当該文書の作成目的、記載内容、作成の経緯、これに接することが予定されている者の範囲等の諸事項を総合的に考慮して判断すべきである。特に、開示によって提出者の名誉やプライバシー、公正な事務遂行等が著しく損なわれるおそれがある場合には、同号に該当すると解される。
重要事実
相手方(国)の職員が、抗告人に対する刑事事件の捜査に関連し、逮捕状請求等の基礎資料とするために作成した陳述書(本件文書)について、抗告人が国家賠償請求訴訟の証拠として文書提出命令を申し立てた。本件文書は、警察官が職務上作成し、検察官等に送致・送付されたものであり、捜査という公的職務の遂行を目的としていた。原審は、本件文書には第三者の名誉・プライバシーが含まれ、開示により将来の捜査に支障を来すおそれがあるとして、提出義務を否定した。
あてはめ
本件文書は、刑事事件の捜査という公的職務の遂行を目的として作成されたものであり、組織内で内部的に利用されるにとどまる性質の文書ではない。また、内容として第三者の名誉やプライバシーに触れる部分があるとしても、抗告人は既に当該刑事事件の被疑者等として事情を知り得る立場にあり、開示によって直ちに重大な支障が生じるとまでは認められない。さらに、本件文書は既に裁判所に提出され、令状発付の基礎となったものであり、専ら作成者の利用に供するために保管されているものとはいえない。
結論
本件文書は「専ら提出者の利用に供するための文書」には当たらず、相手方はその提出を拒むことはできない。
実務上の射程
行政文書や公務員作成文書の提出義務が争点となる事案で、「自己使用文書」の該当性を否定し、文書提出を広く認めるための論拠として活用できる。特に捜査資料であっても、既に令状審査に供されるなど外部に示された実態がある場合には、提出義務を肯定する方向で働く。
事件番号: 平成20(許)18 / 裁判年月日: 平成20年11月25日 / 結論: 棄却
1 金融機関を当事者とする民事訴訟の手続の中で,当該金融機関が顧客から守秘義務を負うことを前提に提供された非公開の当該顧客の財務情報が記載された文書につき,文書提出命令が申し立てられた場合において,次の(1),(2)の事情の下では,上記文書は,当該金融機関の職業の秘密が記載された文書とはいえず,民訴法220条4号ハ所定…
事件番号: 平成19(許)18 / 裁判年月日: 平成19年8月23日 / 結論: 破棄自判
介護サービス事業者が特定の1か月間に提供した介護サービスについて,利用者名,要介護状態区分又は要支援状態区分,サービス内容及びその回数,各利用者ごとの当該月分の介護保険請求額,利用者請求額等を一覧表の形式にまとめて記載した文書は,上記事業者が介護給付費等を審査支払機関に請求するために必要な情報をコンピューターに入力する…
事件番号: 平成17(許)4 / 裁判年月日: 平成17年7月22日 / 結論: その他
1 警察官が文書提出命令の申立人の住居等において行った捜索差押えに係る捜索差押許可状及び捜索差押令状請求書は,いずれも,当該警察官が所属し,上記各文書を所持する地方公共団体と文書提出命令申立人との間において,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当する。 2 民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当…
事件番号: 平成17(許)39 / 裁判年月日: 平成18年2月17日 / 結論: 棄却
銀行の営業関連部,個人金融部等の本部の担当部署から各営業店長等にあてて発出されたいわゆる社内通達文書につき,その内容は,変額一時払終身保険に対する融資案件を推進するとの一般的な業務遂行上の指針を示し,あるいは,客観的な業務結果報告を記載したものであり,取引先の顧客の信用情報や銀行の高度なノウハウに関する記載は含まれてお…