介護サービス事業者が特定の1か月間に提供した介護サービスについて,利用者名,要介護状態区分又は要支援状態区分,サービス内容及びその回数,各利用者ごとの当該月分の介護保険請求額,利用者請求額等を一覧表の形式にまとめて記載した文書は,上記事業者が介護給付費等を審査支払機関に請求するために必要な情報をコンピューターに入力することに伴って自動的に作成されるものであり,その内容も,介護給付費等の請求のために審査支払機関に伝送される情報から利用者の生年月日等の個人情報を除いたものにすぎず,別の情報が付加されているものではないなど判示の事実関係の下においては,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない。
介護サービス事業者が介護給付費等の請求のために審査支払機関に伝送する情報を利用者の個人情報を除いて一覧表にまとめた文書が,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらないとされた事例
民訴法220条4号ニ,介護給付費及び公費負担医療等に関する費用の請求に関する省令2条1項
判旨
介護給付費請求の控えとして自動作成された「サービス種類別利用チェックリスト」は、第三者への開示が予定されていた情報の写しにすぎないため、民訴法220条4号ニの「自己使用文書」に当たらない。
問題の所在(論点)
介護サービス事業者が審査支払機関への請求事務に伴い作成した「サービス種類別利用チェックリスト」が、民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」として提出義務を免れるか。
規範
民訴法220条4号ニの「専ら文書の所持者の利用に供するための文書(自己使用文書)」とは、文書の作成目的、記載内容、作成経緯等を総合し、専ら内部利用目的で作成され外部開示が予定されていない文書であって、開示により所持者側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあるものをいう。ただし、開示が予定されていた情報の控えにすぎない文書は、特段の事情がない限りこれに当たらない。
事件番号: 平成19(許)5 / 裁判年月日: 平成19年11月30日 / 結論: 破棄差戻
銀行が,法令により義務付けられた資産査定の前提として,監督官庁の通達において立入検査の手引書とされている「金融検査マニュアル」に沿って債務者区分を行うために作成し,保存している資料は,民訴法220条4号ニ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない。
重要事実
抗告人(元勤務先)が、相手方の代表者(元取締役)に対し、不当な引き抜きや顧客奪取を理由として損害賠償を請求した。抗告人は損害立証のため、相手方が所持する「サービス種類別利用チェックリスト」の文書提出命令を申し立てた。当該文書は、介護給付費を審査支払機関に請求する際にコンピューターで自動作成される一覧表であり、その内容は請求用伝送情報から一部の個人情報を除いた「控え」としての性質を有するものであった。
あてはめ
本件リストは、審査支払機関に伝送される情報に基づき自動生成されるものであり、伝送情報とは別の新たな情報が付加されているわけではない。すなわち、第三者への開示(伝送)が予定されていた情報の請求者側の控えにすぎない。したがって、内部利用のみを目的として外部開示を予定しない文書とはいえず、自己使用文書には該当しない。また、記載された顧客は抗告人も認識済みの者であり、提出による業務への影響も限定的であるため、同号ハ(職業の秘密)にも当たらない。
結論
本件リストは民訴法220条4号ニの自己使用文書には該当せず、相手方はその提出義務を負う。原決定を破棄し、文書提出を命じた原々決定を維持する。
実務上の射程
「開示予定情報の控え」については、形式的に内部用として管理されていても自己使用文書性を否定する指針を示した。実務上、レセプトの控えや行政への提出書類の写しなどは、特段の事情がない限り本号による拒絶は困難となる。
事件番号: 平成19(許)22 / 裁判年月日: 平成19年12月12日 / 結論: その他
1 検察官が被疑者の勾留請求に当たって刑訴規則148条1項3号所定の資料として裁判官に提供した告訴状及び被害者の供述調書は,いずれも,上記各文書を所持する国と上記請求により勾留された者との間において,民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当する。 2 強姦の被疑事実に基づき勾留された被疑者が,勾留請求の違法を…
事件番号: 平成17(許)39 / 裁判年月日: 平成18年2月17日 / 結論: 棄却
銀行の営業関連部,個人金融部等の本部の担当部署から各営業店長等にあてて発出されたいわゆる社内通達文書につき,その内容は,変額一時払終身保険に対する融資案件を推進するとの一般的な業務遂行上の指針を示し,あるいは,客観的な業務結果報告を記載したものであり,取引先の顧客の信用情報や銀行の高度なノウハウに関する記載は含まれてお…
事件番号: 平成20(許)18 / 裁判年月日: 平成20年11月25日 / 結論: 棄却
1 金融機関を当事者とする民事訴訟の手続の中で,当該金融機関が顧客から守秘義務を負うことを前提に提供された非公開の当該顧客の財務情報が記載された文書につき,文書提出命令が申し立てられた場合において,次の(1),(2)の事情の下では,上記文書は,当該金融機関の職業の秘密が記載された文書とはいえず,民訴法220条4号ハ所定…
事件番号: 平成11(許)2 / 裁判年月日: 平成11年11月12日 / 結論: 破棄自判
一 ある文書が、その作成目的、記載内容、これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯、その他の事情から判断して、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど、開示によって所…