文書提出命令の申立てについての決定に対しては、文書の提出を命じられた所持者及び申立てを却下された申立人以外の者は抗告の利益を有しない。
文書提出命令の申立てについての決定に対して抗告の利益を有する者の範囲
民訴法223条4項
判旨
文書提出命令の申立てに関する決定に対し、即時抗告をすることができるのは、文書の提出を命じられた所持者及び申立てを却下された申立人に限られる。本案事件の当事者であっても、これら以外の者は抗告の利益を有せず、即時抗告をすることはできない。
問題の所在(論点)
文書提出命令の申立てについての決定に対し、文書の所持者でも申立人でもない「本案事件の当事者」が、即時抗告をする適格(不服の利益)を有するか。
規範
民訴法223条4項に基づく即時抗告の適格は、文書提出義務の存否を争う実質的な利害関係を有する者に限定される。具体的には、文書提出を命じられた所持者(義務を課される者)及び申立てを却下された申立人(証拠収集の機会を否定された者)のみが抗告の利益を有する。本案事件の当事者であるという地位のみでは、証拠調べの必要性等を理由に抗告することは許されない。
重要事実
信用金庫の会員(相手方)が、元理事(抗告人)に対し、損害賠償を求める会員代表訴訟(本案事件)を提起した。相手方は、抗告人の義務違反を証明するため、同信用金庫が所持する文書の提出命令を申し立てた。原々審は申立てを却下したが、原審はこれを取消し差し戻す決定をした。これに対し、本案事件の被告である抗告人が即時抗告を申し立てた。
事件番号: 平成11(許)35 / 裁判年月日: 平成12年12月14日 / 結論: 破棄自判
信用金庫の会員が代表訴訟において信用金庫の貸出稟議書につき文書提出命令の申立てをしたことは、当該貸出稟議書が民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない特段の事情とはいえない。 (反対意見がある。)
あてはめ
文書提出命令は、所持者に提出義務を課すとともに証拠決定の性質を併せ持つ。民訴法223条4項が即時抗告を認めた趣旨は、所持者と申立人の間で義務の存否を争う機会を与える点にある。本件の抗告人は、文書の所持者(D信用金庫)ではなく、本案事件の被告という地位にあるにすぎない。また、最高裁先例により証拠調べの必要性がないことを理由とする抗告は許されない。したがって、抗告人は本決定により直接的に権利を侵害される立場になく、抗告の利益は認められない。
結論
本案事件の当事者であっても、文書の所持者でも申立人でもない者は不服の利益を有しないため、本件抗告は不適法として却下される。
実務上の射程
文書提出命令に関する争訟において、抗告権者の範囲を限定した重要判例である。答案上は、本案当事者が文書の開示を阻止したい動機があっても、実体法上の権利義務に直接影響しない限り、手続き上の不服申立ては認められないという論証に用いる。
事件番号: 平成13(許)2 / 裁判年月日: 平成13年4月26日 / 結論: 棄却
文書提出命令の申立てを却下する決定に対し口頭弁論終結後にされた即時抗告は,不適法である。
事件番号: 平成15(許)40 / 裁判年月日: 平成16年5月25日 / 結論: 破棄自判
1 刑訴法47条所定の「訴訟に関する書類」に該当する文書について文書提出命令の申立てがされた場合であっても,当該文書が民訴法220条3号所定のいわゆる法律関係文書に該当し,かつ,当該文書の保管者によるその提出の拒否が,民事訴訟における当該文書を取り調べる必要性の有無,程度,当該文書が開示されることによる被告人,被疑者等…
事件番号: 平成19(許)23 / 裁判年月日: 平成19年12月11日 / 結論: 破棄自判
1 金融機関が民事訴訟において訴訟外の第三者として開示を求められた顧客情報について,当該顧客自身が当該民事訴訟の当事者として開示義務を負う場合には,同情報は,金融機関がこれにつき職業の秘密として保護に値する独自の利益を有するときは別として,民訴法197条1項3号にいう職業の秘密として保護されない。 2 A,Bを当事者と…
事件番号: 平成16(許)14 / 裁判年月日: 平成16年11月26日 / 結論: 棄却
1 破たんした保険会社につき選任された保険管理人が,金融監督庁長官から,保険業法(平成11年法律第160号による改正前のもの)313条1項,242条3項に基づき,当該保険会社の破たんについての旧役員等の経営責任を明らかにするために弁護士,公認会計士等の第三者を委員とする調査委員会を設置して調査を行うことを命じられたため…