1 金融機関が民事訴訟において訴訟外の第三者として開示を求められた顧客情報について,当該顧客自身が当該民事訴訟の当事者として開示義務を負う場合には,同情報は,金融機関がこれにつき職業の秘密として保護に値する独自の利益を有するときは別として,民訴法197条1項3号にいう職業の秘密として保護されない。 2 A,Bを当事者とする民事訴訟の手続の中で,Aが金融機関Cを相手方としてBとCとの間の取引履歴が記載された明細表を対象文書とする文書提出命令を申し立てた場合において,Bが上記明細表を所持しているとすれば民訴法220条4号所定の事由のいずれにも該当せず提出義務が認められること,Cがその取引履歴を秘匿する独自の利益を有するものとはいえないことなど判示の事情の下では,上記明細表は,同法197条1項3号にいう職業の秘密として保護されるべき情報が記載された文書とはいえず,同法220条4号ハ所定の文書に該当しない。 (1,2につき補足意見がある。)
1 金融機関が民事訴訟において訴訟外の第三者として開示を求められた顧客情報について,当該顧客自身が当該民事訴訟の当事者として開示義務を負う場合に,同情報は,民訴法197条1項3号にいう職業の秘密として保護されるか 2 金融機関と顧客との取引履歴が記載された明細表が,民訴法197条1項3号にいう職業の秘密として保護されるべき情報が記載された文書とはいえないとして,同法220条4号ハ所定の文書に該当しないとされた事例
(1,2につき)民訴法197条1項3号 (2につき)民訴法220条4号ハ
判旨
金融機関が訴訟外の第三者として顧客情報の開示を求められた場合、当該顧客自身が当事者として開示義務を負うときは、金融機関は守秘義務を理由に開示を拒否できず、原則として「職業の秘密」による保護も受けない。
問題の所在(論点)
金融機関が第三者として保持する顧客の取引履歴が、民訴法197条1項3号の「職業の秘密」に該当し、文書提出命令を拒絶できるか。
規範
金融機関の守秘義務は個々の顧客との関係で認められるにすぎない。そのため、顧客自身が民事訴訟の当事者として開示義務を負う場合には、当該顧客は守秘義務により保護されるべき正当な利益を有さず、金融機関も開示によって守秘義務に違反しない。したがって、金融機関がこれにつき職業の秘密として保護に値する独自の利益(業務遂行への重大な支障等)を有しない限り、当該情報は民訴法197条1項3号の「職業の秘密」として保護されない。
事件番号: 平成20(許)18 / 裁判年月日: 平成20年11月25日 / 結論: 棄却
1 金融機関を当事者とする民事訴訟の手続の中で,当該金融機関が顧客から守秘義務を負うことを前提に提供された非公開の当該顧客の財務情報が記載された文書につき,文書提出命令が申し立てられた場合において,次の(1),(2)の事情の下では,上記文書は,当該金融機関の職業の秘密が記載された文書とはいえず,民訴法220条4号ハ所定…
重要事実
相続人間で遺留分減殺請求等が争われている本案訴訟において、被告(B)が被相続人の預貯金を不当に取得したか否かが争点となった。原告らは、Bが金融機関(相手方)の口座に払戻金を入金した事実を立証するため、相手方に対しBの取引明細表の提出命令を申し立てた。相手方は、取引明細は「職業の秘密」(民訴法220条4号ハ、197条1項3号)に該当し、顧客に対する守秘義務があるとして提出を拒んだ。
あてはめ
本件明細表は相手方と顧客Bとの取引履歴であり、相手方はこれを秘匿する独自の利益を有さず、Bに対する守秘義務を負うにすぎない。本案当事者であるBが当該明細表を所持していれば、民訴法220条4号のいずれの除外事由にも該当せず提出義務を負うものである。そうである以上、Bは相手方の守秘義務によって保護されるべき正当な利益を有しておらず、相手方が提出しても守秘義務違反にはならない。ゆえに、本件明細表は「職業の秘密」として保護されるべき情報には当たらない。
結論
金融機関は、本案当事者である顧客が提出義務を負う範囲の情報(取引明細等)については、守秘義務や職業の秘密を理由に文書提出命令を拒むことはできない。
実務上の射程
金融機関が保持する情報の証拠調べに関する重要判例。銀行等の第三者に対する文書提出命令において、顧客(本案当事者)に220条4号の拒絶事由がない限り、銀行側からの「職業の秘密」の主張は排斥される。ただし、銀行独自の信用評価資料や、高度な秘匿性を要する技術情報等については、銀行「独自」の利益として別途保護される余地がある点に注意を要する。
事件番号: 平成11(許)36 / 裁判年月日: 平成12年12月14日 / 結論: 却下
文書提出命令の申立てについての決定に対しては、文書の提出を命じられた所持者及び申立てを却下された申立人以外の者は抗告の利益を有しない。
事件番号: 平成11(許)35 / 裁判年月日: 平成12年12月14日 / 結論: 破棄自判
信用金庫の会員が代表訴訟において信用金庫の貸出稟議書につき文書提出命令の申立てをしたことは、当該貸出稟議書が民訴法二二〇条四号ハ所定の「専ら文書の所持者の利用に供するための文書」に当たらない特段の事情とはいえない。 (反対意見がある。)
事件番号: 平成17(許)39 / 裁判年月日: 平成18年2月17日 / 結論: 棄却
銀行の営業関連部,個人金融部等の本部の担当部署から各営業店長等にあてて発出されたいわゆる社内通達文書につき,その内容は,変額一時払終身保険に対する融資案件を推進するとの一般的な業務遂行上の指針を示し,あるいは,客観的な業務結果報告を記載したものであり,取引先の顧客の信用情報や銀行の高度なノウハウに関する記載は含まれてお…
事件番号: 平成16(許)14 / 裁判年月日: 平成16年11月26日 / 結論: 棄却
1 破たんした保険会社につき選任された保険管理人が,金融監督庁長官から,保険業法(平成11年法律第160号による改正前のもの)313条1項,242条3項に基づき,当該保険会社の破たんについての旧役員等の経営責任を明らかにするために弁護士,公認会計士等の第三者を委員とする調査委員会を設置して調査を行うことを命じられたため…