有期労働契約を締結していた労働者が解雇の無効を主張して労働契約上の地位の確認及び解雇の日以降の賃金の支払を求める訴訟において,当該解雇が無効であると判断するのみで,当該契約の契約期間が満了した事実をしんしゃくせず,当該契約期間の満了により当該契約の終了の効果が発生するか否かを判断することなく,当該契約期間の満了後である原審口頭弁論終結時における労働者の労働契約上の地位の確認請求及び当該契約期間の満了後の賃金の支払請求を認容した原審の判断には,判断遺脱の違法がある。
有期労働契約を締結していた労働者が労働契約上の地位の確認等を求める訴訟において,契約期間の満了により当該契約の終了の効果が発生するか否かを判断せずに請求を認容した原審の判断に違法があるとされた事例
民訴法246条,労働契約法17条1項
判旨
有期労働契約の期間中の解雇が無効であっても、口頭弁論終結時までに契約期間が満了している事実が明らかな場合、裁判所はその事実をしんしゃくして、契約の終了や更新の有無を判断しなければならない。
問題の所在(論点)
有期労働契約の解雇無効を争う訴訟において、口頭弁論終結時までに契約期間が満了していることが明らかな場合、裁判所は「期間満了による終了」の事実をしんしゃくして地位確認等の成否を判断すべきか。また、その主張を却下した場合に判断を回避できるか。
規範
有期労働契約において、解雇が無効と判断される場合であっても、労働契約上の地位の確認および期間満了後の賃金請求の成否を判断するにあたっては、契約期間の満了という客観的事実をしんしゃくしなければならない。被告(使用者)による期間満了の主張が時機に後れた攻撃防御方法として却下された場合であっても、裁判所は、当事者が主張した事実等により期間満了が明らかなときは、これによる契約終了の効果が発生するか否か(労働契約法19条による更新の成否を含む)を判断すべきである。
重要事実
1. 被上告人(労働者)は、上告人(使用者)との間で、期間を1年とする有期労働契約を締結し、4回更新された(最終期間:平成26年4月1日〜27年3月31日)。 2. 上告人は平成26年6月9日付で被上告人を解雇(本件解雇)した。 3. 被上告人は、解雇無効を理由に労働契約上の地位確認および賃金支払を求めて提訴した。 4. 第1審は、平成29年1月26日に口頭弁論を終結し、解雇に労働契約法17条1項の「やむを得ない事由」がなく無効であるとして、請求を全部認容した。 5. 原審(第2審)は、上告人が提出した「期間満了により契約は終了した」との抗弁を時機に後れたものとして却下し、期間満了の影響を判断せずに第1審判決を維持した。
あてはめ
1. 被上告人自身が、訴状において本件労働契約の期間が平成27年3月31日までであることを主張しており、第1審の口頭弁論終結時(平成29年1月26日)において契約期間が満了していたことは明らかである。 2. 裁判所は、被上告人の請求の当否を判断するに際し、この客観的な期間満了の事実をしんしゃくする必要があったといえる。 3. 上告人が控訴審で期間満了を指摘したことは、第1審が当然にしんしゃくすべき事実を指摘したものにすぎず、時機に後れた攻撃防御方法には当たらない。 4. 仮に主張が却下されたとしても、裁判所が期間満了の事実を無視して地位確認や満了後の賃金請求を認容することは、判断遺脱に該当すると解される。
結論
原判決中、期間満了後(平成27年4月1日以降)の地位確認および賃金請求を認容した部分は破棄を免れない。契約更新の有無を審理させるため、同部分を差し戻す。
実務上の射程
訴状や提出証拠から、有期労働契約の期間満了が判決時までに到来していることが明らかな場合、裁判所は職権探知でなくとも、当事者が主張した事実関係の範囲内でその法的効果(契約の終了)を検討しなければならない。実務上、解雇無効を主張する側は、あわせて労働契約法19条に基づく更新の合理的期待についても十分に主張立証しておく必要がある。
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