私立大学の教員に係る期間1年の有期労働契約は,①当該労働契約において,3年の更新限度期間の満了時に労働契約を期間の定めのないものとすることができるのは,これを希望する教員の勤務成績を考慮して当該大学を運営する学校法人が必要であると認めた場合である旨が明確に定められており,当該教員もこのことを十分に認識した上で当該労働契約を締結したものとみることができること,②大学の教員の雇用については一般に流動性のあることが想定されていること,③当該学校法人が運営する三つの大学において,3年の更新限度期間の満了後に労働契約が期間の定めのないものとならなかった教員も複数に上っていたことなど判示の事情の下においては,当該労働契約に係る上記3年の更新限度期間の満了後に期間の定めのないものとなったとはいえない。 (補足意見がある。)
私立大学の教員に係る期間1年の有期労働契約が3年の更新限度期間の満了後に期間の定めのないものとなったとはいえないとされた事例
労働契約法6条,労働契約法18条
判旨
有期労働契約の更新限度満了時に無期労働契約へ当然に移行するか否かは、契約の定めや職種の実態に照らして判断されるべきであり、使用者が必要性を認めない限り転換は認められない。大学教員の流動性や規定の明示性を踏まえれば、更新限度後の無期転換に対する客観的合理的な期待は否定される。
問題の所在(論点)
更新限度のある有期労働契約において、期間満了時に当然に無期労働契約へ移行したと解することができるか。また、無期移行への期待に客観的合理性が認められるか。
規範
有期労働契約から無期労働契約への転換(労働契約法18条等の法定転換を除く)が認められるためには、契約内容や更新の実態等に照らし、期間満了時に当然に無期契約へ移行することを内容とする合意があるか、または無期移行への期待に客観的合理性が認められる必要がある。特に試用期間的性格を有する有期契約であっても、無期転換は正社員採用の側面を持つため、特段の事情がない限り、使用者の任用判断(裁量)が尊重される。
重要事実
大学教員である被上告人は、契約期間1年、更新限度3年、勤務成績に基づき大学が必要と認めた場合に無期職種へ異動できる旨の規程(本件規程)の下で有期契約を締結した。上告人(大学側)は更新限度の3年満了をもって雇止めを通知した。原審は、当初の3年は試用期間であり、無期移行への期待に客観的合理性があるとして無期契約への移行を認めたため、上告人が上告した。
あてはめ
まず、本件規程では無期転換には「大学が必要と認めた場合」との要件が明記されており、被上告人もこれを認識していた。次に、大学教員は一般に流動性が想定される職種である。さらに、実態としても更新限度後に無期移行しなかった例が複数存在する。これらを踏まえると、本件契約は無期移行を当然の内容とするものではなく、上告人が必要性を認めていない以上、合意は認められない。また、雇止め法理(労契法19条)の類推適用を検討しても、更新への期待と無期転換への期待は同列に論じられず、本件では無期移行への期待に客観的合理性があるとはいえない。
結論
本件労働契約は期間満了により終了しており、無期労働契約に移行したとはいえない。雇止めは有効である。
実務上の射程
有期契約の「更新」への期待と「無期転換」への期待を区別した点に重要な射程がある。不更新条項や更新限度が明記され、かつ実態として無期転換が選別的に行われている場合、無期転換への期待の客観的合理性は厳格に否定される傾向にある。答案上は、労契法18条の法定転換要件を満たさない事案における、公序良俗や信義則、あるいは労契法19条類推による無期転換主張を排斥する際の論拠として活用できる。
事件番号: 平成23(受)1107 / 裁判年月日: 平成24年11月29日 / 結論: 棄却
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