1 郵便関連業務に従事する期間雇用社員について満65歳に達した日以後は有期労働契約を更新しない旨の就業規則の定めは,次の⑴,⑵など判示の事情の下においては,労働契約法7条にいう合理的な労働条件を定めるものである。 ⑴ 上記期間雇用社員の従事する業務は屋外業務,立った状態での作業,機動車の乗務,機械操作等であるところ,当該就業規則の定めは,高齢の期間雇用社員について,これらの業務に対する適性が加齢により逓減し得ることを前提に,その雇用管理の方法を定めたものである。 ⑵ 当該就業規則の定めの内容は,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律に抵触するものではない。 2 日本郵政公社の非常勤職員であった者が郵政民営化法に基づき設立されて同公社の業務等を承継した株式会社と有期労働契約を締結して期間雇用社員として勤務している場合において,当該株式会社は,当該株式会社が同公社とは法的性格を異にしていること,当該者が同公社の解散する前に同公社を退職していることなど判示の事情の下においては,期間雇用社員について満65歳に達した日以後は有期労働契約を更新しない旨をその設立時の就業規則に定めたことにより,同公社当時の労働条件を変更したものということはできない。 3 期間雇用社員に係る有期労働契約は,満65歳に達した日以後は有期労働契約を更新しない旨の就業規則の定めが当該労働契約の内容になっていること,期間雇用社員が雇止めの時点で満65歳に達していたことなど判示の事情の下においては,当該時点において,実質的に期間の定めのない労働契約と同視し得る状態にあったということはできない。
1 郵便関連業務に従事する期間雇用社員について満65歳に達した日以後は有期労働契約を更新しない旨の就業規則の定めが労働契約法7条にいう合理的な労働条件を定めるものであるとされた事例 2 郵政民営化法に基づき設立されて日本郵政公社の業務等を承継した株式会社がその設立時に定めた就業規則により同公社当時の労働条件を変更したものとはいえないとされた事例 3 期間雇用社員に係る有期労働契約が雇止めの時点において実質的に期間の定めのない労働契約と同視し得る状態にあったということはできないとされた事例
(1につき)労働契約法7条,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律8条,高年齢者等の雇用の安定等に関する法律9条1項 (2につき)労働契約法10条,郵政民営化法167条 (3につき)労働契約法19条1号
判旨
有期雇用契約において、一定の年齢に達した際に更新しない旨を定める就業規則の条項(年齢上限条項)は、業務上の合理性があり労働者に周知されている限り、労働契約の内容となり、その適用による雇止めは原則として有効である。
問題の所在(論点)
就業規則に定められた「年齢上限条項」が労働契約法7条の「合理的な労働条件」として労働契約の内容となるか。また、同条項に基づく雇止めが労働契約法19条各号の要件(実質無期性・合理的期待)を欠き、有効といえるか。
規範
1. 労働契約法7条に基づき、合理的な労働条件を定めた就業規則が周知されている場合、その内容は労働契約の内容となる。 2. 有期労働契約の雇止めにつき、労働契約法19条(旧解雇権濫用法理の類推適用)の成否を判断するにあたっては、契約の更新状況、業務内容、雇用の継続を期待させる言動等の諸事情を考慮し、労働契約が実質的に無期契約と等しい状態か、又は継続への合理的期待があるかを判断する。 3. 年齢上限条項がある場合、それが周知され合理的なものである限り、契約は期間満了により終了することが予定されたものとなり、原則として更新の合理的期待は認められない。
重要事実
日本郵政公社の民営化に伴い、被上告人(日本郵便)に雇用された期間雇用社員らが、満65歳に達した後の最初の契約満了をもって更新しない旨を定めた就業規則の「本件上限条項」に基づき雇止めを受けた。上告人らは、旧公社時代には年齢制限がなく更新が繰り返されていたこと、契約更新手続が形骸化していたことから、雇止めは無効であると主張した。本件上限条項は民営化時に制定され、周知措置がとられていたほか、適用開始まで約3年6か月の猶予期間が設けられていた。
あてはめ
1. 本件上限条項の合理性について、屋外業務等における加齢による事故懸念への対応や雇用管理の明確化という目的には相応の合理性がある。また、65歳までの雇用確保という法令にも抵触せず、猶予期間を設けるなどの配慮もなされており、労働契約法7条の合理性を満たす。 2. 周知性について、就業規則が事業場に備え置かれ自由に閲覧可能であったことから、周知されていたといえる。 3. 更新の期待について、上限条項が有効に契約内容となっている以上、契約は満了時に終了することが予定されていたといえる。更新回数が重なっていても、上限条項の存在や具体的な説明により、満65歳を超えて雇用が継続されるという合理的期待は否定される。
結論
本件各雇止めは適法であり、有期労働契約は期間満了によって終了した。上告人らの請求は棄却される。
実務上の射程
本判決は、有期雇用における定年制(年齢上限)を就業規則で新設・適用する場合の判断枠組みを示した。民営化という特殊事情はあるが、公務員から民間への切り替え時に「従前の条件を引き継ぐ権利」を否定した点、及び不利益変更の法理ではなく契約法7条の「新規契約時の合理性」で判断した点が実務上重要である。答案では、19条の合理的期待を判断する先行事実として、上限条項の有効性(7条)を検討する流れで活用する。
事件番号: 平成30(受)755 / 裁判年月日: 令和元年11月7日 / 結論: その他
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