郵政事務官として採用された者が,禁錮以上の刑に処せられたという失職事由が発生した後も約26年11か月にわたり勤務を継続した場合に,国(旧日本郵政公社,郵便事業株式会社が逐次その地位を承継)において上記の者が国家公務員法76条,38条2号に基づき失職した旨を主張することは,上記の者が上記失職事由の発生を隠して事実上勤務を継続し給与の支給を受け続けていたにすぎないという事情の下では,信義則に反し権利の濫用に当たるということはできない。 (反対意見がある。)
郵政事務官として採用された者が,禁錮以上の刑に処せられたという失職事由が発生した後も約26年11か月にわたり事実上勤務を継続した場合に,国(旧日本郵政公社,郵便事業株式会社が逐次その地位を承継)において上記の者が国家公務員法76条,38条2号に基づき失職した旨を主張することが,信義則に反し権利の濫用に当たるということはできないとされた事例
国家公務員法38条2号,国家公務員法76条,民訴法2条,民法1条2項,民法1条3項
判旨
国家公務員が禁錮以上の刑に処せられたことによる当然失職を、長期間の勤務継続後に主張することは、信義則ないし権利濫用には当たらない。失職事由を隠して事実上勤務していたに過ぎない者の定年までの期待は、法的保護に値しないからである。
問題の所在(論点)
禁錮以上の刑に処せられた者が、その事実を秘匿して長期間(約27年間)勤務を継続した場合に、任命権者が当然失職を主張することが信義則違反または権利の濫用に当たるか、また新たな雇用関係が形成されたといえるか。
規範
国家公務員法38条2号の欠格事由及び同法76条の失職規定は、公務に対する国民の信頼を確保するための強行規定である。失職事由を看過した任用は法律上当然に無効であり、当事者が事実を秘匿して勤務を継続した場合、定年まで勤務できるとの期待は法的保護に値しない。したがって、特段の事情がない限り、国側が後日失職を主張することは、信義則に反せず、権利の濫用にも当たらない。
事件番号: 昭和62(行ツ)119 / 裁判年月日: 平成元年1月17日 / 結論: 棄却
地方公務員法二八条四項、一六条二号は、憲法一三条、一四条一項に違反しない。
重要事実
郵政事務官として採用された上告人は、採用前の公務執行妨害罪により、採用後に懲役4月執行猶予2年の有罪判決を受けた。上告人はこの事実を任命権者に秘匿したまま、約27年間にわたり郵便集配業務に従事し給与を得ていた。その後、当局が匿名の通報等により判決の事実を把握し、上告人に対し、判決確定の日(昭和48年)に遡って失職した旨の通知を行った。
あてはめ
上告人が長年勤務を継続できたのは、自ら失職事由を明らかにせず、任命権者がその事実を知り得なかったからに過ぎない。上告人の抱いた期待は、自らの秘匿行為に起因するものであり法的保護に値しない。また、欠格事由規定は公務の信頼確保という公益的要請に基づく強行規定であり、これを適用することの公益性は高い。さらに、失職後に新たな競争試験や選考を経ていない以上、事実上の勤務継続のみで新たな任用関係が形成されたとみることもできない。
結論
上告人は判決確定時に当然失職しており、被上告人が失職を主張することは信義則に反せず権利の濫用にも当たらない。雇用契約上の地位確認請求等は棄却される。
実務上の射程
行政上の「当然失職」の効力を強く認める判例である。公務員側の帰責性(事実の秘匿)が重視されており、長期間の経過や執行猶予期間の満了があっても、当然に信義則が適用されるわけではない。司法試験では、行政行為の無効と信義則の局面や、公務員法上の地位の特殊性を論じる際の素材として活用できる。
事件番号: 昭和63(行ツ)131 / 裁判年月日: 平成元年4月27日 / 結論: 棄却
懲戒免職処分を受けた国家公務員が当該処分係争中に公職の候補者として立候補の届出をした場合においても、同人の国家公務員たる地位は、右立候補届出の時点で確定的に消滅する。